AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と戦力集め その10
大量の魔本を購入させてもらった。
古本屋よりも数が揃っており、多様なスキルや魔法を得られたことになる。
問題は、言語理解スキルが無いと読めない魔本などが入っていることだ。
無くても使えるが、『開読』と『解読』は内容を理解していないと使えない。
ちなみに、読めなくても使えるのは鑑定スキルがあるからだ。
本のタイトルだけは表示されるので、使えるという……裏技だな。
祈念者の大半が鑑定スキルを常用するからこそ、その方法でも充分になっている。
そして、その情報を秘匿するため誰も真面目に読もうとしないわけだ。
「──お買い上げ、ありがとうございます。お客様にはこちらを」
「……会員証?」
「一定額分ご購入なされたお方には全員、こちらの会員証をプレゼントさせていただいてます。さまざまなサービスを受けられますので、よければぜひご利用ください」
「あっ、はい。ありがとうございます」
渡された会員証とやらには、『Z商会 会員証 No.666』と書かれていた。
ずいぶんと不吉な数字なのはともかく、約六百人が多いのか少ないのか分からない。
「そういえば、このお店って帝国以外にはどこにあるんですか?」
「そうですね……大国には店舗を置かせていただいてますが、そう遠くない内に祈念者の方々が現れるとされる『始まりの町』……いえ、街にも支店が立つと思われます。ただ、一つだけ問題が」
「問題……ですか?」
「それは……いえ、これはお客様に伝えるべきことではありませんね。申し訳ありませんが、ご内密に」
まあ、おそらく筋を通すという意味でボス関係の話し合いだろう。
なので、菓子折りを持っていった方がいいとだけ伝えておいた。
とても驚いた様子だったが、それでも最後は笑顔を浮かべて送り出してくれる。
……いい店だな、ぜひとも参考にさせてもらおうか。
◆ □ ◆ □ ◆
「うーん……どれからやってみようかな?」
ペラペラと捲るのは、『誰でもできる簡単スキル習得本』の完全版だ。
辞書レベルの分厚さを誇るそれには、タイトル通り効率のいい習得法が書かれている。
これをニィナが読めば、尋常ではない速度でスキルを習得すること間違いない。
それも全部……うん、そうなる未来がなんとなく浮かび上がる。
「そうだそうだ、まずはこの機能を使ってみるべきか──『検索:習得可能』!」
なんとこの本、読んでいる人が習得できるスキルのページだけを抽出できるのだ。
まあ、絶対ではなく、あくまで熟練度が1以上のスキルを特定しているらしいんだが。
「うーん……魔法はあるね。武術も、少しだけ載ってる。技能は……生産系のスキルだけ凄く多いね」
あとは身体系のスキルだ。
前者は魂魄が覚えていた生産の経験が、後者はこの縛りを始めてからの行動経験によって熟練度を得ていたのだろう。
条件を絞っても載っている以上、それらのスキルは必ず得ることができる。
ただし、掛かる時間は分からないので、それなりの努力が必要となるはず。
「でも、必ず報われるんだから幸せなんだろうなぁ……うん、頑張ってみよう」
一度習得していたスキルであれば、新規で得ようとするスキルよりも、僅かながらに習得までの必要時間が短いだろう。
ニィナはすぐに強くなる。
それは分かりきっていることなので、俺にできるのはニィナよりも何千何万倍も努力することだけ。
一を知って十も百も学ぶのであれば、俺は千や万を知って百を学べばいい……うん、考えを纏めていると、どれだけ自分のスペックが劣っているかが身に染みる。
「レベリングをする場所か……とりあえず、ここでやってみよう」
高レベルの祈念者が集うヴァナキシュ帝国ではあるが、それは近辺にある『死者の都』ことアニワス戦場跡があるからだ。
あそこには高レベルのアンデッドの皆さんが居るので、たとえ種族レベルが限界である250に達していても、まだまだがっぽり経験値を手に入れられる。
種族の限界を打ち破るのもよし、戦闘系の職業をリセットしてレベリングするもよし。
さまざまな用途であそこを使うため、祈念者たちはあそこに向かうことが多い。
……ちなみに、俺が居るのはそんな跡地がある北ではなく西の森である。
木の上に登って安全を確保し、そこでゆっくりと本を読んでいた。
魔術とスキルで姿を隠しているので、今のところ誰にも見つかっていない。
「登攀スキルの効率がいい習得法か……関連するスキルには、掴みと握力強化と木登りスキルねぇ。最後のはともかく、二つは投擲にも使えそうなスキルだったっけ?」
木登りに少々苦労し、魔術による補助をしたため、対応しそうなスキルを思い出して調べてみたら……使えそうなスキルがあった。
載っている以上、先に挙げたスキルはすべて習得できる可能性がある。
やってみて損があるわけでもないし、本に載っていた方法が通用するか試してみよう。
「えっと、習得したいスキルをタップする。同時に取りたいスキルも選んでおけば、それも加味した方法が提示されると……便利すぎじゃないかな?」
会頭さんとやらには、頭が上がらなくなるかもしれない。
たしかに高い買い物ではあったが、こんなに便利な本を売ってくれるとは。
──というわけで、再びスキル習得に勤しむことになりました。
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