AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と戦力集め その05
ヴァナキシュ帝国
自分が指名手配されている国に来る……というのも結構アレである。
しかし、この国は金さえあれば大抵のモノが手に入る場所でもあった。
「古本屋、ここにもあればいいけど……その前に、狙われるだろうなぁ」
現在進行形で、掏摸の被害にあっているからこそそう思える。
守ろうとする行動、そして魔力で収納系の魔道具を包んで対策はしていた。
これを繰り返すことで、保護スキルを手に入れることができる。
なお、必要な物は魔術で仕舞っており、デバイスぐらいしか価値のある物はない。
だからこそ真剣に守っている。
お陰様で俺にしては珍しく、順調に保護スキルを獲得することができた。
「他にもいいスキルが無いかな? たしか、防犯スキルとかがあった気もするけど……全部の犯罪行為が対象のせいで、習得難易度も高めなんだよね」
PKの攻撃なら威力を軽減させる、とかそういう効果も付くらしいし。
ニィナならまだしも、俺だとすぐには習得できなさそうなので諦める。
「うーん、そもそも死なないから問題ないかな? 奴隷にされるのは危ないけど、とっくに組織ごと壊滅させておいたし」
前に『一家』と奴隷を解放したとき、ついでと言わんばかりにやっておいた。
祈念者の未来を守るのも、俺なりの偽善として……なっ?
それでも、不安の種がまだまだあるのがこの帝国という場所。
最悪、また金を払って吸血鬼狩りに守ってもらえばいいんだが……。
「ニィナが居なくても頑張れるように。そう考えて独りで来たのに、戦力を増やす方法がお金じゃダメだよね。あっ、そういえばアレがあったっけ?」
一時的に空間魔法を解放し、“空間収納”からとあるアイテムを取り出す。
それはかつて、レイド(ラリー)イベントで最後に獲得できた──『試役の腕輪』。
効果はその名の通り、『付随枠』を無視して魔物を使役することができる。
……ちなみに『付随枠』とは、パーティーメンバーとは別に魔物を使役できる枠だ。
魔物使い──従魔師系の職業は、その大半が枠を拡張する能力を持っている。
それを補える魔道具、それこそが報酬として出たこの腕輪なのだ。
「まあ、それでも使役するための能力かスキルが無いと、全然使役できないんだけどね。そしてこの街は……ちょうど、裏で魔物を販売している場所がある」
奴隷は解放したが、魔物の販売は基本的に合法となっていた。
……なので奴隷解放をした際も、魔物などは解放していなかったりする。
金で戦力を買う、別に罪悪感が湧くわけでもないので実行しよう。
俺の目的は魔本探し、そしていちおう有名になること……それっぽいのを探さないと。
◆ □ ◆ □ ◆
まずは貴族たちが行くような表側──白栄街の方から探ってみた。
かなり広い国なので、探せばいくつか店を見つけられる。
本は国にとって都合のいいものばかり、魔本も生活魔法程度のものしかなかった。
……今の俺にはそれでも貴重なので、高い金を払ってそれでも購入したわけだが。
魔物の方は……全然ダメ。
俺というヤツは『色物』を好み、何かしらの面白みに欠ける魔物を従魔にはしたくないなぁと思っている。
仮にではあるが、一番最初に使役したのが『魔小鬼王《デミゴブリンキング》』のリョクだったからだろう。
最初で優秀過ぎる奴だったからこそ、後続にも期待してしまう……的な。
「──というわけで、結局黒没街のお世話になることが決まりました。なお、姿は魔術で隠しています」
魔本には隠蔽系のモノが無かったので、こちらとスキルで隠れている。
区画によっては容赦なく身包みを剥いでくるので、用心が必要なのだ。
「ちなみに白栄街は国の一割、それ以外は全部黒没街なのでかなり広いです。『一家』が見回りをしている場所は安全なんですが……それ以外は、あまりよろしくありません」
光あるところに影があり、影にも陰が生まれている……要するに、ブラックにも濃淡の差があるというわけだ。
俺が目指しているのは、『一家』の目が届かない場所にある施設。
彼らから話は聞いていたので、どういう店なのかは先んじて覚えている。
「あった。『Z商会 帝国支店』……なんでこんな名前なんだろう?」
理由はともかく、黒没街の中にひっそりと建つ小さなお店。
この場所こそ、俺が探していた何でも売っていそうな店である。
「というわけでさっそく……って、その前に魔術を──」
「おや、お客さんが。いらっしゃいませ」
「! ……い、いろいろと欲しいモノがあって。見せてもらっても、いいよね?」
「ええ、もちろんです。当店は、何者も拒まず受け入れておりますよ」
俺はまだ、魔術を解除していない。
だというのに、店員と思われるコイツは俺の存在に気付いた。
……性別、どっちなんだろう?
祭りに並んでいそうな不思議なお面を付けているのだが、それの影響か性別に違和感を覚えてしまう。
「あなたは……初めての方ですね。では、ご説明を──『Z商店』では、あらゆる商品を取り揃えております。また、存在しないものであっても、お客様の要望に応え、可能な限り用意させていただく所存です」
「あの、あなたはいったい……」
「申し遅れました。私、当店の支店長を任されております『Z』と申します。気安くゼット、とお呼びください」
「ゼット、さん。よろしくお願いします」
不思議な支店長に挨拶をし、俺は店の中に入るのだった。
うん、ここなら面白いものがたくさん見つかりそうだな。
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