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山田 武

偽善者と精霊術 後篇



「──というわけで、俺でもできる効率的な精霊術の特訓方法を考えてほしい」

「なかなかに無茶なことを言うね。うん、けど構わないよ。僕たちの存在理由は、君を支えることなんだからね」

「助かるよ、グー」


 解析班にお邪魔した俺とユラルは、さっそく現状では使い難い精霊術に関する相談をしてみることに。

 リュシルはイベントエリアの魔王城で見つけてきた本の解析で忙しく、アンは付き添いの時間が長かった結果溜まった仕事の処理に忙しいためダメ。

 残ったグーだけが、そこまで急用でもない俺たちの相談を受けてくれた。
 まあ、当人は別の作業も並行しながら、精霊術について考えてくれるらしい。


「ユラル、いくつか訊いてもいいかな?」

「うん、小難しいことじゃないなら。私の知識って、生まれつき持っていたものと、練習していた時に理解したことだけだよ?」

「構わないよ。あくまでも、参考として知っておきたいだけだからね。マスターはさっき言っていた方法と、普通の状態で精霊術を試してくれるかな?」

「おう、やってみる」


 さっきの、つまり精霊術の効果と類似するスキルを使うことで、精霊術の補佐を行わせるという方法だ。

 俺が現状いちおう使えている二つの精霊術に、スキルを絡めることでほんの少しではあるが、性能が向上することが確認された。

 先ほど試したときのように──『土堅』という魄を堅くする精霊術に加え、身体強化スキルを重ねて頑健さを高める。

 この際、精気力を使うことを忘れない。
 スキルの効果は基本的に一定なのだが、精気力でその方向性を指定することで精霊術の強化を図る。

 グーはそれを観察し、考察し、解析することで情報を纏めていく。
 俺たちでは分からなかったことも、彼女ならば識ることができる。


「──結論から言ってしまえば、マスターのやっていることはたしかに効果はある。けどそれは微々たるもので、むしろ精霊術が完成した後の補助に使うことが好ましいね」

「ほうほう、それじゃあどうすれば精霊術が使えるようになるんだ?」

「少年漫画の主人公みたいな方法と、ただ目的を果たす方法とどっちが好みかな?」

「うーん……両方聞いてからでいいか? 俺が仮に後者にしても、ユラルが前者を試してくれればいいし」


 俺は後者に惹かれているが、知っておいて損はないので聞いておきたい。
 そもそも、グーの見つけてくれた方法なので、間違いなく結果は出るだろう。


「前者はひたすら反復して覚えるんだよ。ただ、そこにマスターの[神才愚者]を交える必要がある。アレなら理解力も上がるからね」

「……アレか。自分が自分じゃないって思えるぐらいに、何でもかんでも理解するから使いづらいんだよな」


 スキルを整頓している内に、創り上げられた最上級のスキル。
 あらゆる行動の成功率が上がる代わりに、効率が非常に悪くなるという効果だ。

 たしかにそれを使えば、時間は掛かるが確実に精霊術を理解できるだろう。
 だがスキルの効果もあって、それをやり続けないといけないのだ。


「現状、マスターは正しい方法というものを理解していない。ユラルが言うには、精霊術のイメージは人それぞれらしいから、誰かがヒントを出しても、最終的にどういった形にするかはマスターが考えないとならない」

「だからそれを掴んで、延々とやらないと覚えられないってことか? 理に叶ってはいるし、[世界書館]を使えば可能だな」


 基となったスキルの中に<千思万考>があるので、発動すれば加速した思考と共に精霊術の学習が可能だ。

 イメージを見つけるのが目的なので、直接体を動かさずとも行えるこの方法は、遅延した効率を上げるのにちょうどいいだろう。


「その[世界書館]を使った方法が、二つ目の方法だよ。ギーを使って他者の魔導が使えるみたいに、実行していることすべてを模倣することで精霊術を覚えるんだ」

「……それ、大丈夫なのか?」

「あくまでも技術、スキルみたいに覚えるために条件が必要なわけじゃない。僕たちが全力でサポートしている以上、何か問題が起きるなんてことはありえないよ。──さて、マスターはどっちを選ぶのかな?」

「…………前者で」


 せっかく精霊術を真面目に覚える方法も教えてもらったのだから、わざわざインストール形式じゃなくてもいいんじゃないか?

 何だろう、最初は後者の方がいいと思っていたのだが……さすがにと遠慮してしまう。
 それに、どうせなら自分だけのイメージが欲しいと考えている。

 それに、俺の考えた稚拙な策でも、結局同じスキルを使っているのだ。
 あとはグーに任せるが、旨く擦り合わせた方法があるに違いない。


「うん、両方という考えもあるよ? そっちの方がお好みかな?」

「ああ、それで頼む。しばらくはその方法を試して、ユラルに経過を見てもらおう」

「それがいいと思うよ。ユラル、やってもらえるかな?」

「うん、グーンがそう言うなら」


 ユラルが武具っ娘を呼ぶと、なんだか微妙な響きになるよな……。
 そんなことを最後に思い、俺はさっそく修行を始めるのだった。



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