AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と攻城戦前篇 その17



≪──にかいめのこうじょうせんはしゅうりょうとなります。みなさん、おつかれさまでした。すでにごぞんじかもしれませんが、ゲリラてきなまもののはっせいが、せんりょうされたばしょではじっこうされます≫

≪こんかいのこうじょうせんで、さらにせんりょうされたりょういきがふえました。それぞれ、ことなるランクのまものがでてくることになります。はいぼくすれば、りょういきはふたたびむほうちたいとなります≫

≪たおせばたおすほど、つぎのなんいどがあがりますが、かわりにほうしゅうもおおくなります。リスクをとるかあんていをとるか、それらもみなさんのはんだんしだいです≫


 今さらなアナウンスを聞きながら、後片付けを始める。
 今回も大量の魔物を倒し、相応の素材を獲得することができた。

 人間大砲として突貫し、遊ぶぐらいの余裕はあった先ほどの攻城戦。
 最後には、キングとかエンペラー系の魔物とステゴロで殴り合っていたし。

 まあ、問題はアナウンスが終わったあとも普通に残っていたことだな。
 一回目は処理も楽だったが、二回目は位階ランクも高め……実に面倒臭かった。

 リラの補助もあったので、それでも増えることが無くなった魔物たちは殲滅できたが。
 制限を掛けているとはいえ、単独での殲滅ができない難易度とは……異常だ。


《ではメルス様、申し訳ありませんが……ここで失礼させていただきます》

「ああ、ギリギリまでありがとう。そっちの仕事も頑張ってくれよ」

《はい!》

 ガーは用事があるので、残念ながらここで帰還となる……だいぶ粘ってくれていたが、彼女はやるべきことを投げ出すほど、非情な天使様ではないのだ。

 そんなこんなで、ガーが居なくなって俺とリラだけになった。

 ……零時を過ぎて、今は二日目。
 呼ぶ眷属も二人ずつでいいかもしれない。


「リオンが隠してくれるから、呼ぶこと自体に問題は無いんだろうけど……それは祈念者としての規格から外れているし。まあ、無難な方法にしておこうか」


 そう言って、魔道具を取りだす。
 とてもシンプルな構造──ボタンが一つ着いただけの棒──なそれをさっそく起動。

 それだけで、目的は果たされる。
 これは対となる受信機を持った相手に、信号が送られるという、これまた単純な機構。

 ただし、その有効距離が異常なのだ。
 さすがに次元や時空を超えるようなシステムは組み込めなかったが、同一空間内であれば確実にどこであろうと届けられる。


「あとは待つだけっと」

「……何をしたの……?」

「祈念者の配下を呼んだ。情報収取を任せていたからな、少しでも知っておきたい。リラも訊きたいこととか、あるか?」

「困っている人……」


 その発言に困っている人が、ちょうど目の前に居るから助けてくれよ。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 今の時刻が、現実世界において何時なのか分からないので待つしかない。
 調べる方法もあるにはあるが、わざわざやるのは野暮ってものだろう。

 それが可能となる物──『挑む者の指輪』は、俺の指に収まっている。
 宿す権能は時を知ることだけではなく、他にも……。


【……お待たせしました……】


 現れたのは、全身黒尽くめの存在。
 陽炎のように歪んだ像を周囲に見せるそれ相手に、俺は気さくに話しかける。


「ああ、よく来てくれた。やっぱり、一番長く契約しているからな。来てくれるのも最初だと思っていたよ」

【……お褒めいただき、光栄至極……】

「そう言ってくれると、俺も嬉しい。さて、そろそろ情報交換をしようか」

【……分かりました……】


 彼(あるいは彼女)はそう言って、今回のイベント中に調べてきてくれたことを話す。
 PKをPKしている──いわゆるPKKをしながらでも、情報は集まるようだ。


「……なるほど、実際のフィールドでは存在していなかった迷宮が増えているのか。知らなかったな、そういうことは」

【……いかがなさいますか……?】

「特に、何もだな。もちろん、踏破するのも内部で暴れ回るのも自由だが。貢献してくれるなら報酬は出すし、礼は尽くす。目的はすでに果たしてくれているからな」

【……畏まりました……】


 何か特定の情報を要求したわけじゃない。
 あくまで、自分たちの行動理念に則った活動の中で知り得た情報を開示してくれ……そう伝えただけのこと。

 実際、彼は俺の知らなかった情報を集めてきてくれたわけで……わざわざ内容を絞るよりも、幅広く集めた中から自分で見つけだした方が速いというのもあるけどな。


「他の奴らは……残っている魔物も居るだろうし、突破が大変か」

【……さすがです。魔物に関しては、すべて通過させていただきました……】

「倒してくれてもよかったが、魔物は祈念者相手への妨害になるか。他の奴らにも、そう連絡しておくか? いや、倒して素材も集めたいからそれはいいか。来た奴には言うにしても……次の方がレベルは高いからな」


 こっちも苦戦した位階の高い魔物たちなんだから、祈念者もある程度ここに侵入することを拒むだろう。

 わざわざ難易度の高い場所に来るよりも、もっと簡単な場所に向かうのが普通だ。
 仮に来るとしても、それは最終日かその直前ぐらいになると思われる。


「報告ありがとう、これからどうする?」

【……再び情報収集へ向かおうかと……】

「そうか。なら、頼もうか。ついでに……これを、『ユニーク』のナックルに届けてもらえると助かるが」

【……書状、でしょうか……?】


 わざわざ紙で伝えずとも、[ウィスパー]や[メール]を使えば連絡はできるだろう。
 それでもこういう手段を取るのには、相応の理由が存在する。

 ──絶対に知られてはいけない、たとえ上で見守る存在にも……とかな。



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