AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と攻城戦前篇 その03
「──“召喚・眷属”」
「……あれ、呼ばないんじゃなかったの?」
「誰も……誰も来ないんだ」
「あー、そういうこと」
逆にどういうことだと訊ねたい心情ではあるが、そうも言ってられないので、今やっていることを続ける。
しかし、やはり寂しい物は寂しい……そんな心情で眷属は呼びだされた。
話相手としては問題ないが、今回のイベントで頼もしいかと訊かれると……微妙だ。
ストロベリーブロンドの髪を伸ばした、トランプ柄のワンピースに身を包む少女。
その青色の瞳をパチパチとさせると、俺の方をジト目で見てくる。
「……あれ? なんだかアリィ、バカにされた気がするんだけど」
「いや、集団戦には向いてないなって」
「ふっふーん、いつまでも弱点を残しておくほどアリィはマヌケじゃないんだよ。ちゃんと特訓はしているんだから……ふぅ、すぐに習得しちゃう辺り、やっぱりアリィは天才かもしれないね!」
「まあ、敵が来たらな。とりあえず今は、俺の暇潰しに付きあってくれ」
俺は今、都市の中でもっとも広い領主の屋敷を陣取っていた。
趣味なのかなんなのか、はたまた芸術都市だからか……そこはなぜか美術館なのだが。
「防衛にはここの作品が使えるみたいだ。ただ、そこまで強くないみたいでな……先に強化しておくか、これを使ってもっと強い奴を用意しておく必要があるんだ。アリィ、何か面白いスキルとかないか?」
「急に言われると困るんだけど……うん、できるよ──“形無き兵軍”!」
札を使うゲームを概念化し、強者であろうとルールに従わせる……それが彼女の固有スキル【加留多札】の能力。
そして今回、より成長した彼女はそれを発展させているようだ。
四十枚の札が彼女の手から飛ばされ、それらが人間サイズまで大きくなっていく。
そこに手や足が生え、武器が握られ……童話で見たことがあるような兵士だった。
そういえば、とある姉弟の迷宮で使ってたいたっけ?
あのときは突っ込めなかったけど──
「なあ、これって……」
「うん、メルスの本を参考にしました」
「まあ、いっか。誰も困らないし、便利なのはたしかだ。ちなみにどれくらい強い?」
「この中だとエースが一番強くて、あとは無難に数字がデカいほど強いよ。本当は大富豪と同じにして、革命したら引っくり返る……なんて風にしたかったんだけど、さすがに限界があったみたいで」
限界……まあ、詰め込みすぎだからな。
後天的に生みだされる能力とは、それを運用するために使うスキルが、可能とするキャパ内で収める必要がある。
例えるなら──高性能なソフトを入れようとしても、スペックが足りないCPUでは使えない……みたいな感じだな。
「うーん……じゃあ、とりあえず都市の至る所に撒いておいてくれ。ここだけに集中させていたら、怪しいのがバレバレだ。俺も偽物のクリスタルをそれっぽい場所に置いてくるから、そこにも配置を頼む」
「はーい、じゃあ行ってきてー」
兵士たちはサッとポーズを取り、美術館から退出していく。
俺とアリィはそれを見送り、さらに作業を続けていく。
「ねぇねぇ、ちょっとゲームしない?」
「さっきのアレをやっても、できるのか?」
「そりゃあもちろん! メルスのくれた……こ、この指輪があれば、どんなゲームでもできるって言ってたじゃん」
「あっ、使っててくれたのか」
眷属全員へ、それぞれに合った指輪を渡している……というか要求された俺。
アリィに渡したのは、どこでもゲームができるという『遊戯の指輪』。
彼女の【加留多札】の補助具として働き、できることを増やせる仕様となっている。
……その機能はほとんど使われず、ただのゲーム機代わりになっているんだけどな。
「そりゃあ便利だしね──“遊戯構築”!」
「これは……スロット台?」
「さぁ、当ててみて……って、あれぇ!?」
「今の俺は身体スキルだけは完全使用が可能だからな。動体視力も反射速度もバッチリ」
用意されたスロット台に座り、レバーを引いてボタンを押していく。
ズルではないがそこで視力と指の力を強化し、大当たりの数字だけを出してみた。
三連でその絵柄が続くと、ファンファーレがスロット台から鳴り響く。
すると、スロット台は消滅して再び辺りに静寂が戻る。
「……さて、作業に戻るか」
「ズルじゃん、チートじゃん! ズルい、セコいぞメルス!」
「真面目にやってたら、終わらないからな。自分にできることをやって、作業に戻っておきたかったんだよ」
「ぶー、つまんなーい……だから、面白いものを見せてあげる──“一人の二人”!」
先ほどのトランプ兵を出す能力同様、聞いたことのない能力だったが……起きた現象に関しては、とても見覚えのあるものだった。
生みだされたのは、アリィと寸分狂わず同じ姿をした少女。
ただし、その目だけはアリィよりも知性を宿している。
「アリィ、自分でできるようになったのか」
「そりゃあね。前にメルスがやったときに、完全にコツを掴んだんだ。使えなくなるカードができちゃうけど、それでもこうしてアリスといっしょに居られる!」
「そうねぇ……アリスも嬉しいわ」
俺が居なくとも、二人が同じ時間を共有できるようになったか。
少しずつ成長していく眷属に、いずれ俺は追いつかなくなるのかもな……。
そうならないためにも、俺は俺にできることをとことん追求していかなければ。
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