AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と帝国騒動 その10
アニワス戦場跡 死者の都
「かくかくしかじか……アイさん、何か知らないか?」
「私とて、すべての霊を知っているわけではありませんよ?」
「アイさん、よくさっきので分かったな」
アイこと生死の『超越種』アイドロプラズム、彼女の試練の準備はできていない。
しかし、というかだからこそこのタイミングで訪れ、彼女に例(霊)のことを尋ねた。
試練には関係ないことなので、嘘は吐いていないだろう……というか、俺もあまり期待せずにここを訪れた。
「私の方で探してほしい、というわけでもないのでしょう?」
「ああ、どちらかと言えば死んでいないって保証が欲しかったんだ。蘇生もできるにはできるけど……アイさん的にどうなんだ?」
「冒涜的な扱いをなさらないのであれば、私から何か告げることはありませんよ。人族が悪と決めつけているスキルもまた、神々が認めた立派な力なのですから」
「そういうものなのか……」
こういうときによく連想される死霊魔法は固有魔法、つまりは人々の思いが発露することで獲得できる代物だ。
実はアレって、死体操作に関する魔法を集めて強化したようなものであって、闇系統の一般魔法スキルで真似することもできる。
何が言いたいかといえば……死霊魔法を禁忌とかにしている場所とかでも、実は裏でアレコレ工作しているヤツはいるというわけ。
「まあ、蘇生するにも彼女がどうなっているか探さないといけないからな。探すのが人なのか霊なのか、それを知りたかった」
「では、お役に立てたようですね」
「感謝しているよ、アイさん。少なくとも一度は死んでしまったとなると、母子の間で何か亀裂が生まれるかもしれなかったし」
死んだってことになると、相応の理由が生まれてしまうわけで……少女の繊細な心を傷つけないためにも、できるだけ彼女には無事でいてほしかった。
──ああ、もちろんこれまで言っていたのはウェナの母親のことだぞ。
「ではメルス君、これからどうするおつもりですか? 頼まれるのであれば、私の方でも探ってみますが」
「……いや、試練の準備をしていてくれ。ミラさんみたいに、アイさんも試練を達成したら何かくれるんだろう? 俗物と笑ってくれてもいいが、俺はそれがほしい」
「いえいえ、神々が用意してくださった品ですからね。『宙艦』との接触でその魅力をお知りになったメルス君ならば……仕方有りませんよ」
……なんだろう、目がとっても温かいモノになっている。
たとえるとそう、工□本を見つけてしまった母親みたいな……そんな経験ないけど!
「ち、違うからな! 来るべき運営神との戦いのために、使えるモノは全部使いたいってだけだから!」
「……神との戦いですか。そうですね、たしかに私が私自身で知っている報酬の中には、戦いの役に立つアイテムがありますよ。頑張る理由の足しになりますか?」
「! ……ああ、そりゃあ早く試練を受けたいって気になってきたよ」
「ふふっ、そう言ってもらえて何よりです。では、少しだけ難易度を上げる代わりに作業効率を上げることにしましょう」
この後俺は必死に頼み込んで、難易度を据え置きにしてもらうのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
ヴァナキシュ帝国
「こういうとき、過去眼を使えれば簡単に終わるのにな……いやまあ、ロクでもない光景だろうからそんなに視たくはないけど」
延長戦に持ち込んだ今回の縛り、なので特別にランダムで何かを解除して続行である。
そんなこんなで抽選に見事当選したのは、調べるのに便利な索敵・感知系能力だった。
「便利っちゃあ便利だけどな……過去を探るなら時空魔法が一番だったな。けど、これしか使えないなら仕方ないか──“索敵”」
まずは俺を付け狙う敵がいないか、敵意を探るスキルで調べてみる。
昔は敵意とか気にしていなかったが、縛りが入るようになってから習得しました。
そうしてレーダーをイメージして帝国の至る所を探ってみたところ、やはり今の姿だとバレるようで……ガンガンに反応がある。
「姿を隠せる術が魔道具しかない以上、上級ぐらいまで進化させているプレイヤー相手だと分が悪いんだよな」
まだ一日しか経っていないのだが、すでに俺は指名手配をされている。
かなりの額が牢獄送りにした者に与えられるようで……皆さん、張り切っております。
予め変身した顔なので、本当の顔が割れているわけではないが……続行のため、面がそのままなのに変わりはないのだ。
「しかもさ、裏金は全部回しちゃったからもう無いわけじゃん? おいおい、ある意味詰み状態じゃね?」
最初の縛りが金銭を用いた闘いしか行えないというもので、追加された能力は調べることのみ……どうすればいいんだろうか?
ポケットマネーがあるので、“銭投げ”は普通にできるけど。
それでも、死なない奴らを相手に使う金は無駄金だということぐらい理解している。
「ウェナと似た反応を掴まなきゃならないけど、そもそも帝国に居るかどうかすら分からないんだよな……うん、金を使える間に調査しておこうか」
目を付けられている以上、派手な動きはできないんだよな……。
うん、とりあえずは路地裏に行こうか。
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