AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と橙色の世界 その13
養分が失われ、花は咲かなくなった。
だが……それでもいつか、また花開く時が訪れる。
魔法を使える者たちが、ごくわずかではあるがいるのに殲滅できていない理由。
それは花が咲く本当の理由……地脈や龍脈と呼ばれる場所との接続を、彼らでは断てていなかったからだ。
「要するに──電化製品の電源を落とされようと、電気さえ通っていればまた付け直すことができるってことだな」
それよりも実際は面倒なことになっているのだが、分かりやすく自分自身が理解するためにはこれぐらいの例がちょうどいい。
先ほどまでの戦闘では、とりあえず邪魔が入らないように掃除をしていただけだ。
休憩もしたので、やるべきことはちゃんと理解している。
「問題はこれからだ──“地脈回廊”」
ナースの持つスキルだが、これは名前の通りその地脈と繋ぐことができる代物だ。
一時的に共有し、俺自身が見つけておいた地脈のエネルギーの噴出点と接続する。
「あと……“聖霊化”と“魔力化・大地”」
体をエネルギーの流れに乗れるよう、一度還元しておく。
聖霊とは自然の概念、個を保てるのであれば地脈の流れに侵入することも可能だ。
「できるなら、カカ的な存在までアクセスできればいいんだが……さて、親玉はどこに居るのかな?」
主人公たちのように、わざわざ手順を踏んでボスの所へ向かう必要などない。
これから行うのは、そういった過程をすべて省いた【傲慢】な選択だ。
「精神は{感情}が保ってくれるだろうし……どうにかなるか。それじゃあ、メルス逝っきまーす!」
やはり言うならこの台詞。
少々テンションが上がったことを感じながら、エネルギーの奔流へ飛び込むのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
なんてことはない、地脈が花に乗っ取られている以上侵入者に容赦がないというだけ。
拒絶の意思が体に突き刺さる感覚を覚えつつ、それを気にも留めず前へ進んでいく。
本来なら意思に呑まれ、そのまま精神崩壊することもある……が、{感情}が俺の精神を一定に保つ以上、害はそれほどない。
『しかしまあ、植物にも意思があるって話はやっぱり本当なんだなぁ……』
ユラルはなんとなく読み取れるらしいが、俺にそんな謎能力は備わっていない。
だが今は明確に伝わってくるので、それを理解できる……何度も言うが、拒絶だけど。
人には人の事情があるように、花にもまた何かの事情があるわけだ。
だが分かり合えない以上、人と花は相いれない関係として争いを続ける。
『けど……ならなんで魔粉たちは上で飛んでいる花を目指す? なんで人にも同じ花、種思だの装華が与えられている?』
やはりまだ、謎が多い。
赤色の世界も邪神云々で面倒臭かったが、この世界もこの世界で新システムが多いから面倒すぎる。
『……けど、この先に答えがあるのかな?』
花たちが必死に守る、球状の結界のようなものが俺の進む先にはあった。
これまで以上に強い拒絶の意思を感じたものの、やはり{感情}には通用しない。
まあ、何かしらのヒントぐらいは得られるのかもしれないな。
そんなことを思いつつ、花たちに向けて魔力を籠めて……。
『魔導解放──“眠れ永久を安らかに”』
概念による死。
花々は力を失い、抵抗の意思が消える。
この場所では魔術も魔法も機能しない、エネルギーそのものだからだ。
しかし魔導だけは通用する……使えないという理ごと、書き換えているので。
『道は開かれた、いざ殿中でござる』
久しぶりの語尾を付けて、俺は花々を退けながら中へ潜り……球体に触れた。
◆ □ ◆ □ ◆
???
物凄く見覚えのある場所だった。
その違いは、中に溢れるのが炎か花々かという点のみ。
そこに居るのは髪が橙色の少女。
衣服や装飾品がすべて花で作られている辺りを視ると……彼女がこの世界の神だろう。
──しかし、一つだけ問題が。
「……えっと、寝ているのか?」
『ZZZ……』
「おーい、起きてくれよー」
『ZZZ……ZZZ……』
揺さぶっても反応しないほど、深い眠りについているようなのだ。
これも主人公とかだったら、イベントとか進めるんだろけど……面倒だからパス。
「魔導解放──“嗚呼儚き人の夢”」
『Z……ぎょべっ!?』
「俺が起きろって言ったら、起きてくれよ。あとあと面倒なことになるのは分かってるんだよ、ほらごめんなさいって言えよ!」
『えっ? えぇ……ご、ごめんなさい?』
起きたときの奇声で、もう俺の中で番付は決まった。
カカに対するような敬いなどは消え、おざなりでもいいかという考えに定まる。
「俺はメルス、赤色の世界……じゃなかったな、正式名は……『グレッド』から来──」
『えっ、なんであっちの世界のことを知っているの? もしかして、カカの知り合いなのかな? うわー、凄い久しぶりの名前ー。けど、どうしてここに居るのかな? 私って、だいぶ前に自分の──』
「話を聞け」
『……はい』
こいつ、本当に神様なんだろうか?
ただまあ、カカのことを知っていたのでそうなんだろう……とりあえず。
事情……本当に訊けるのか?
そんなことを思いつつも、こちら側の話を進めてみるのだった。
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