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山田 武

偽善者と星の海 その18



 巨大迷宮ダンジョンである『超越種スペリオルシリーズ』──『宙艦』ミラ・ケートスのエネルギーを供給したことで、俺は報酬を貰う権利を得た。

 しかし、それが皆目見当つかない。
 なので、内心ワクワクしながら何が貰えるかと耳を澄まし、ミラ・ケートスの意思とも呼べる声を聴き取ろうとする。


≪本来、エネルギーを最大まで供給した者には、一定期間当機の操縦権限が与えられる≫

「操縦権限? つまり、その間はミラ・ケートスさん……えっと、ミラさんで好きな星に行くことができると。それって、どういう利点があるんだ?」

≪ミラで構わない。当機は膨大な年月を用いて、この星海を泳いできた。故にそれまでに得た知識、それを航海に使うことで安全な旅が確約される≫

「そりゃあ凄い。けど、その言い方……俺には与えられないってことか」


 本来、とか言っていたのでほぼ間違いなくそうなのだろう。
 けど、マックスまで注いだのだからできるだけ良い報酬が欲しいものである。


≪次いで。一定量の魔力を供給できた者、あるいはここに気づかず体外へ出た者たちへ、当機は部品を提供している≫

「部品? いったいどんな」

≪当機と同じ機構の。つまりは、対星海用の部品を。前者には複数、後者には一つのみを与えることで差分している≫

「……けど、ここに来た時点でもう対応しているものじゃないか?」


 ロケットで大変なのは、宇宙に行った後よりも先のことなんらしい。
 だからこそ、打ち上げ失敗という言葉がよくテレビでもやっていたわけだし。

 そして、宇宙に辿り着いたからミラ・ケートス──ミラに呑み込まれた。
 ならもう、必要ないんじゃ……と思ったのだが、どうやらあるようだ。


≪星海には特有の現象が起きる。それらは、特殊な素材を使っていなければ防ぐことが難しい。故に望ましいのは、それを予め用意することだが……第二案として、当機の部品を集めてそれらを改装することを提案する≫

「なるほど……その素材とやらも、あとで見せてもらえるか?」

≪構わない。だが、今は報酬の話……供給者よ、持っているだろう。空を自在に泳ぐことができる舟を。それを今、この場へ≫

「……念のため。もう少し、ここを大きくしてくれるか?」


 再び『環境変遷』とやらが使われ、空間が拡張される。
 それから俺は黒い魔本を展開すると、目的のページにある術式から方舟を召喚した。


「──来い、ノア」


 空に描いた術式から現れたのは、一キロほどの大きさを誇る巨大な舟である。
 甲板には神殿っぽいのが載っているなど、普通の舟ではありえない存在感を放つ。

 そして、その方舟の中からぴょーんと降ってくる少女が一人。
 白いトーガを身に纏った、腰まで白い髪を伸ばしたやや背の高いオンナノコである。


「魔王君、ここはいったい……」

「『超越種』が一体、『宙艦』ミラ・ケートスの中。要するに、お前の先輩だと思う」

「! ……たしかに、そんな気がする。私の中の舟としての在り方が告げているよ、圧倒的存在感の差をね」

「そうか、そりゃあ良かったな」


 なんだかおかしなことを言いだすノアに適当な相槌を打っていると、ミラの方が再び語り掛け始めた。


≪見事。当機には劣るが、この舟であれば星海を泳ぐこともできるだろう≫

「ノア……おい、怒るなよ」

「分かっているさ。私はあの方の意思を継ぐこと、そして人々を救うことを使命としている。そして、彼の御方はおそらくそれをこの星の海で行う者……敵うはずがないさ」

「ならいいけど……さっぱり分からん」


 同じ船同士、何か感じる物があるのかもしれない……少なくとも、人である俺には皆目見当が付かないわけだが。


≪当機は供給者へ、報酬として全部品を其の舟へ送りたい。また、星海に関する情報も提供しよう≫

「……マジで? そうしてくれるなら、こっちとしてもありがたいけど」

「いいのかい? それだと、魔王君には何も与えられないわけだけど」

「はっ? いやいや、ちゃんと貰えているからな。お前の物は俺の物、古来の異人・・はそんな素晴らしい言葉を残しているんだぞ」


 そう、地球マンガにはそんな言葉がある。
 完全にタケシ・簒奪者ゴウダの言葉ではあるが、ノアも気にしていなさそうなので話を続けた。


「ただ、それだけだとなあ……ミラさん、ミラさんの中に転移門とかはあるか? できるなら、その権限が欲しいんだが」

≪それは当機の試練を達成した者すべてに与えられる権限、報酬にはできない。もっと欲しい物があれば言ってほしい、可能な限り受け入れよう≫

「……と、言われてもなあ。ソウ、ノア、何か無いか?」


 基本、強請れば眷属が大抵のモノは用意してしまうため、【強欲】ではあるが物欲というものに欠けてしまっている俺。

 なので代案を求め、この場に居る者たちに訊ねてみることに。


「私は特に無いね。よく分からない内に、この御方から何やらとんでもない物を賜ることになっているみたいだし」

「それもそっか……なら、ソウは?」

「儂も特には……今回の目的は主様との逢瀬であって、それ以上のことはもともと願っておらんかった。むしろ、主様からの褒美を期待しておる」

「…………うーん、どうしようか?」


 ソウに関しては今は、無視することにして考えてみる。
 まあ、こういうときはアレでいいかな?



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