AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と星の海 その17
≪規定値を超える魔力量を検知。運用エネルギーへの変換……成功しました≫
≪変換量が方舟計画起動可能値、及び本体の再起動可能値を超えました≫
≪『宙艦』ミラ・ケートス──再起動≫
≪再起動開始──第一シークエンス終了まで残り十日≫
突如、迷宮内に響き渡ったアナウンス。
そして、知らされる驚愕の事実──この迷宮の本体である『超越種』が、エネルギー不足だったということを知った。
「……再起動? えっ、まだ不完全な状態で動いてたのか?」
「主様よ。おそらくじゃが、ここに来た者に力を注いでもらうことによってこのクジラは活動を維持しておったのじゃろう。じゃが、この場所まで辿り着く者などごくわずか。故に燃費を抑え、待っていたのじゃな」
「迷宮だし、ここに来なくとも入ればエネルギーは回収できるか。それでも、一人も来ないなら詰むか……コイツを創った神も、今は活動していないだろうし」
「なるほどのう。そして、今回主様の活躍によって最大限にエネルギーが満ちた。故に一度停止したうえで、改めて稼働。それによって問題点を修正するのか」
どういう理屈でそうなるか分からないが、わざわざそうするならソウが言っていることで合っているのだろう。
まあ、たしかにわざわざ宇宙まで来そうな迷宮好きも居るにはいるが、すぐに来れるわけでもないし、一人で供給できる量など……普通はたかが知れているし。
「ソウ、とりあえず扉の奥まで行ってみるつもりだが……どうする? 正直、もう帰っても良い気がしてきた」
「主様は十日、愛の巣を築くのも良いかもしれぬ……ま、待ってくれ主様。今の主様は尋常ではない魔力を持っておるのじゃぞ」
「おっと、それもそうか。それも悪くはないと思うが……全部解除だな」
解除を意識すれば、大量に重なっていたスキルが一気に解除される。
異端種となった姿もただのモブとなり、その身に纏う魔力も減少した。
そして、対価を支払う時が訪れる。
一気に脱力する体が地面に崩れ落ちる……その寸前で、とあるスキルを起動した。
「──“内外掌握”」
「むっ。どうしたのかのう、主様?」
「いや、思いのほか体がボロボロだった。けど、直すより超回復的なものを信じたいからとりあえずそのままにしておく」
「むぅ……ならば、儂にその身を委ねてくれればよいのに」
それは前にやったので、今回は無しだ。
ご褒美と言われようが、二度も同じことを繰り返す気はない。
「扉は……これ、開くのか? ソウ、力を入れるのは無理だからやってくれるか?」
「うむ、それぐらいであれば容易いこと。任せておけ」
人の姿の状態であろうと、ソウはそれなりに膂力を秘めている。
気と魔力で強化をしない素の状態で、ソウは扉をグッと押し……少しずつ動かす。
光を放っていた扉の先は、同様に灯りが燈された大きな部屋だ。
そしてその中央には、今まで観たことのないほどに巨大な珠が鎮座していた
「あれが……迷宮核かのう」
「いや、もうあれはただの迷宮核じゃないみたいだ。鑑定眼を最大にして視てみれば……うん、『迷宮神珠』らしい。それそのものが神気を放っているから、まさかとは思っていたけどな」
なんてことをソウと話していると、ポウッと光を放ちだす迷宮神珠。
何事かと戦闘態勢を取る俺たちだったが、それを行うことは無かった。
≪魔力を注いだのはどちらだろうか≫
「……あっ、俺です」
≪まずは感謝を。あれだけの量を注ぎ、当機の再起動を可能にしてくれたことに≫
「いやまあ、魔力は嵩増しすればどうにかなるものだったから。それに、注いだのは俺が望んだことだ……あっ、だからですし」
いちおうの敬語を使っていると、隣でニマニマとするドM銀龍。
少しイラッとしたので悪戯してやろう……と思ったが、再び声が聞こえたので止める。
≪敬語は不要だ。それより、そこまでした恩人に何もしないというのは、当機の創造者たちに申し訳ない──『環境変遷』≫
迷宮神珠以外、何も無かった空間に揺らぎが生じ変化が起き始めた。
淡い光が迷宮神珠から放たれると、辺りから回復属性の波動を感じる。
「これは……フィールド環境の変更か?」
≪迷宮を所有しているのであれば、理解しているだろう。当機は例の手順すべてを省略することができる≫
「そりゃあ凄いな……って、どうして迷宮を持っているって分かった?」
≪ここまでのログを確認させてもらった。あの手際、迷宮を真の意味で理解している者にしかできないものだった≫
俺も昔は【迷宮主】だったので、その間に迷宮をできる限り知り尽くそうと学んだ。
だからだろうか、迷宮核の踏破も瞬時に行えるようになった。
普通だと、勝手に踏破してしまったりする機能がある──正しく扱えば、未踏破状態で持ち帰りができたり……とかな。
「たしかに、昔はそうだったからな。今は無くしたから、代理人に任せているよ」
≪理解している。その身に宿す軛は、簒奪者たちの邪縛であろう。当機にそれを外す術は無いが……応援はしよう≫
「ありがとう……でいいのかな? えっと、ミラ・ケートスさん」
≪好きに呼んでくれた構わない。それより、当機から報酬を授けなければならない≫
ようやく来たその時間。
すべてを注ぎ切った者には、はたしてどんな報酬が与えられるんだか。
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