AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と東の西京 その18
連続更新中です(04/12)
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「さて、どうするであるか……」
問題が解決したため、再びロール口調で呟き悩む俺。
体を真っ二つにした人形──『穢れ』は活動を止め、虚空を澱んだ瞳が見つめるだけ。
屍鬼たちの反応も止まったので、活動用のエネルギー供給も終わったのだろう。
これに関しては、聖杯に穢れを集めた時点で起きていたことだけれど。
「まずは直すところからであろうが、この状態で戻しても同じことの繰り返しであろう。故に……こうすればよいのである」
一枚の符を取りだし、人形に貼り付ける。
すると刻まれた術式が発動し、人形を中身ごと勝手に取り込んでいく。
しばらくすればこの場に人形は無くなり、代わりにどす黒く染まった符だけが残る。
それを注意深く掴んで持ち上げ、解析眼を起動して状態を調べていく。
「まずは採取した穢れを調査、それをどうにかできないか試してみるのである。そして、符そのものにその結果を施す……これに失敗するのであれば、多少強引にやるであるな」
聖杯で吸い上げた結果なのか、すでにこの場は完全に浄化されている。
間もなく概念の核が失われたここは、崩壊してしまうだろう。
「まずは脱出するであるか──“異削風”」
天に向けて放った斬撃は、見えない壁のようなモノを破壊して脱出経路を生みだす。
あとはそこに向けて空歩スキルでひたすら駆け、渦の外へ向かうだけだ。
「……渦? あっ、霊化状態のままであったな。戻ったら解除せねばな」
なんてこと締まらないことを思いつつ、少し下を見てから脱出する。
予想通り地面だった場所に亀裂が走り、ナニカに呑まれている異様な光景だったよ。
◆ □ ◆ □ ◆
界廊(自由世界──妖界)
妖怪たちの界廊侵入には間に合ったみたいで、辺りに妖怪の姿は無い。
先ほども挙げたように屍鬼も居なくなったので、安全な旅路が確保できた。
「ここなら安全であるか──アン、繋がっているであるか?」
《はい、何か問題でも? 先ほどより、視界中継が途切れておりましたが……やはりあの渦の中は神域となっていましたか?》
「伝わっていなかったであるか……実はあそこで禍々しいモノを得たのである。聖杯に収めてある故、スーに頼み隔絶したうえで調査してほしい」
《禍々しいモノ……ですか。分かりました、すぐに解析を行います》
共有の収納スペースに仕舞ってあるので、そこから取りだせばすぐに調べられる。
解析眼で調べた情報も送ったため、精神耐性をバッチリにしてから解析を行うだろう。
「では、そろそろ元の世界に戻るであるか。というより、早く帰らねば妖怪たちと出くわしてしまうのである」
少々走って道を進んでいく。
さすがに瞬脚を使うのは大人げないし、転移眼を使うのも以っての外。
縛り状態でも、身体強化を使えばアスリート以上の速度で走れるし。
そこに属性なんかを纏えば、さらに速度を増して駆け抜けられる。
「……ッ! もう来たのであるか!」
間もなく脱出、といったところで妖怪たちの反応が反対側の門から知覚できた。
大天狗の反応だけでなく、それと同等かそれ以上の反応まで……。
さすがに縛った状態でその相手を務めるのは苦労しそうなので、そのまま加速して門を通過して逃げる。
──ついでに透明にでもなろうかな?
◆ □ ◆ □ ◆
修羅山
世界側の前に立つ見張りにも気づかれず、無事脱出することに成功した。
今は身体強化も解除して、まったりと山を下りているところだ。
「しかし……荒魂の調査依頼であったが、あれは屍鬼と捉えてもよいのであろうか?」
屍鬼と荒魂、荒魂を視たことがないので分からないが、たぶん屍鬼の禍々しさまで似ているとは思えないのである。
ならば、門を通ったことで荒魂になったのか……そう考えるが、すでに『輪魂穢廻』が無くなった以上、再現することはできない。
完全な問題解決には至っていないので、報告はまた今度にしよう。
担保にしたアイテムも別に要らないし、受付嬢もサクッと売っているだろうな。
「──公方殿の言っていたお方にも会わずに帰るのは残念ではあるが、あちらは知覚能力が某以上であるとのこと。今の状態で会うのは危険であるな」
式神を使うこと、そしてその数が膨大と言うことは分かっているが……他は不明だ。
あとは女であることぐらいだが、それは関係ない…………うん、関係ないからな。
「いちおうの目的であった式神の確保もできた。妖界という未知の場所にまで足を踏み入れることができた……さて、次は陰陽師プレイでもしてみるであるか?」
組合で符を買うのは忘れたし、先も挙げた報告をいずれしなければならない。
そのときの行う演技が変わるので、不審がられるかもしれないが……演技性皆無だし、普通にバレるから問題なかろう。
「その前に……うむ、さまざまな約束を果たさねばならぬが」
しばらくはそれを行うことで手いっぱいなので、井島に来ることすら難しいが。
それでもやるという予定を覚えておいて、行きたくなったら気分転換に来よう。
「式神がそれまでに、正常な形で仕えるようにしてからであるがな……」
今のままじゃ、使った途端街を一つ滅ぼしそうだからな。
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