AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とレイドラリー後篇 その06
観客たちも盛り上がる。
完全にアレを再現した場合、自分たちが入れないことは彼らも承知の上だろう。
故にその劣化版、ただ剣が突き刺さっているだけで満足してくれている。
「縛りを用意しておいてよかったね。もしここに並んでいる剣がいろんな属性を持っていたら……すぐに死んでいたからね」
「クソがぁ!」
「正義の味方になる気は無いけど……あなたたちはますたーたちに害を加えようとした。だから、死んでもらうよ。イベント最終日にちょうどいい、まさに後夜祭の演目だね」
「なんでそんなに詳し──いびゅっ!」
おっと、従魔って設定だった。
そこら辺は学んだってことで誤魔化すことにしておくとして、三人目の心臓に突き刺した隼敏剣を引き抜いておく。
それを今度は地面に刺して、近くに並んで刺さっていた二本の剣を引き抜いた。
「特に銘もない剣だけど……あなたたちにはそれで充分かな? ごめんね、あんまり強い剣を使うとすぐに終わっちゃうみたい。これならもう少しハンデを付けた方がよかったかもしれないね」
長さやデザインはまったく違うが、やはり二刀流ということで盛り上がる観衆。
ずいぶんと注目されているな……イベントが終わって帰還するまでの待ち時間、なるほどやることが無くて暇なのか。
「やれぇ──“重力檻”!」
「──“火焔渦”!」
「──“串刺棘岩”!」
重力の檻が俺を束縛し、包み込むように炎の渦が生まれて地面が硬化して棘となり、全身に向けられた。
三人なのにできるいいコンボだ。
もしかして、殺す順番を間違えていたのだろうか?
「まっ、いずれにせよどうにかしないといけないね──“吸収剣”」
三本の剣を生みだし、それぞれ発動している魔力を吸収させていく。
重力、炎、岩属性の剣を新たに手に入れることができたわけだな。
「テメェ、卑怯だぞ!」
「あれれー、それを言うなら六対一は卑怯にならないのかなー? あっ、ごめんね、卑怯にならないから今の状況なんだった」
「~~~~~~~~ッ!」
言葉にならない怒りが滲み出ている。
観衆たちには受けがいいのだが……あまりお気に召さなかったようだ。
「まあまあ、さっきのヤツと違ってこっちは魔法が使えるわけじゃないから。あくまで同じ属性なだけだから、そこまで文句を言う必要はないと思うよ」
「……落ち着け、お前ら。もともと危険性は理解していたはずだぞ」
「へっ、へい」
「チッ、仕方な……ぐはっ!」
「話は纏まったね──“二剣入替”」
リーダー居たんだ……なんてことは今さらなので気にしない。
慈悲など無いので、サクッと殺す。
リーダーを殺すこともできたが、やはり生かしておく方が使えるので舌打ちをした方にしておいた。
「暴風剣と炎剣。二つ合わせて爆風刃!」
属性を重ねることで、暴風剣に封じられた魔法“圧縮断刃”に変化をもたらす。
炎を纏った真空の刃……現実ではありえない事象によって、さらに数が減った。
自分でも思うのだが、剣を大量に配置したうえでそこに移動できるってわりと反則だと思うんだよな。
「なあ、剣の破壊はできるのか?」
「別にできるよ、あくまで魔法で創った剣だからね。凄い堅いとかそういうこともない、ただの剣……だけど、簡単に私が破壊させると思っているのかな?」
「分かっているさ──やれ!」
「──“永劫種火”!」
これは少し驚いた。
男が使ったのは俺も持っている業炎魔法の一つ、消えることの無い炎を生みだす魔法。
彼はきっと火属性魔法を極めようとしており、そこで習得したのだろう。
普通に習得するなら、尋常じゃないほどにSPを消費しただろうに……。
「これを使えば──“火炎斬・纏”!」
何らかのスキルによって、仲間の生みだした“永劫種火”を炎の剣に纏わせてくる。
俺も持っていた魔力を纏ったりする感じのスキルだとは思うが……気になるな。
近くに在った剣に火を向けられると、ドロドロに融けていく。
百本もあるので一本ぐらい融けても問題ないが……なるほど、少々厄介だ。
「ふふーん、少し面白くなってきたね。それじゃあ、その消えない炎が残り続けている間は生かしておいてあげる。だから、ちゃんと私を楽しませてね」
「調子に乗るなよ、従魔風情が。いくらあの女たちの従魔とはいえ、いつまで持つ」
「…………」
「図星のようだな。その首を以って、あの女たちへの復讐を始めよう!」
本当に、『月の乙女』は何をしてこんなに恨まれたんだろうか?
俺が居ない時にやらかしたことなら、思い当たることがないのも仕方がない。
燃え盛る剣に、先ほどから使っていた暴風剣と炎剣を合わせた剣で対抗する。
実験に融かされた剣よりは粘ったが……数秒のしない内に融解していった。
「どうした、降参しないのか?」
「……まさか。せっかく勝てる戦いから、わざわざ逃げる必要なんてあるのかな?」
「ほう、ならばやってみろ。ただし、そんな余裕は与えないがな──“質量増大”!」
「そんなの……ッ!」
ポキッと折れ始める剣。
とっさに躱す俺だったが……炎の剣はすでに、上から振り下ろされていた。
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