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山田 武

偽善者とレイドラリー中篇 その03



 俺と違って、魔力を無尽蔵に作れるらしいスキル:擬似永久回路:を持つ偽者。

 膨大な魔力を練り上げると、想像したくはなかった……だが、それ故に予想していたアレを放ってくる。


「魔導解放──“黄金輝く日輪の生誕”」


 凄まじい熱量が俺を襲う。
 かつて闘技大会に現れた二人目の『俺』が使っていた、太陽を生みだす魔導である。

 ネタはすでに割れているし、対象法も理解している──しかし、消費魔力が半端ない。


「なら別の方法で──“光化フォトン”!」


 ユウの持つ陽光魔法。
 その名の通り太陽の光を操る魔法により、己の体を光と同等のモノへ作り変える。

 物理法則を超越した肉体は、熱程度ではビクともせず平常を維持できるように。
 それでも魔導を解除しないので、有効的に活用させていただく。


「──“陽光の祝福サンライズブレス”」


 陽に近ければ近いほど、対象の能力値を高めるこの魔法。
 魔導は現実を書き換える力──目の前で輝く太陽は、偽物であり本物である。


「つまりは効果対象ってわけだ──ハッ!」

「:武芸之s──」

「遅い(──“重壊撃ヘビークラッシュ”)!」


 太陽の内側を通過し、戦槌を振るう。
 形を変えた『模宝玉』なので、超高温の火の玉を通過しようと融けることなくその熱量だけを取り込んで偽者に命中した。

 ──何かで防御したようだが、無意味。

 身体強化が極まっていた一撃は、こっそり発動した武技の効果もあり──ゴルフのような華麗なスイングで、偽者を地平線の彼方まで吹き飛ばす。


「あれ、なんかデジャビュ? ……ああ、そういえばペルソナがピンチだったときか」


 あのときは普通に殴り飛ばしたが、さすがにあの状況でわざわざ拳に切り替える必要は無かったからな。

 燃える拳でナッコー! とか言うのもアリな気がするが……うん、別の機会にしよう。
 そして、この後の展開はたしか──


「──致死攻撃を確認。
 ──エマージェンシーモードへと移行。
 ──全スキルの解放を実行。
 ──:擬似永久回路:を起動……超速回復を実行」


 かつてこれはペルソナが神髄にダメージを与えていたことにより、不発に終わった。

 故に強引な自爆を行うとしたところを、簡単に倒せたのだが……今回のそれは前回とは違い、完全版だ。

 あらゆるスキルを駆使することで、俺を倒そうとするだろう。


「──プレイヤーの戦闘力及び、特異存在の出現を確認。
 ──現在想定外の威力を検出、侵蝕の影響下に無い者と思われます」

「ああ、こんな感じだったらしいな……ってあれ? なんか変だな」

「──異常事態発生。運営神による呪縛の痕跡、及び称号『異端認定者』を確認。
 ──特定個体『メルス』であることを緊急連絡……接続不可。
 ──対『メルス』プログラムを:戦闘再現:より起動」

「接続不可? だがまあ、二人目が俺をしっかり再現していたのも、こっちで組み込んだスキルとかをそのまま使っていたからか」


 最悪の展開はどうにか防げたようだ。
 しかし、その次ぐらいに面倒な展開……相手の超強化が行われてしまう。


「──:神託之天啓:を起動……接続不可、通常能力を起動。
 ──:万物之宿敵:及び:咎人之枷:を起動。
 ──:限界超越:を起動……通常戦闘モードより、対異端者モードへ移項します」

「……うわー、能力値が跳ね上がってるー」


 ボスということで、身力値と耐久値だけが高かったステータス。
 しかし、今はすべてが万単位で倍加されており、面倒さが増している。


「:無限精製:、:能工巧匠:──起動」


 限界を超えた魔力量を以って生みだされた数千、数万の武具の数々。
 魔導でも無いのに、それはかつて俺も使った魔導“封じられし神宝器廠”のようだ。

 仕方ない、と振り絞る<久遠回路>。
 幸いにして、偽者が使った魔力が散布されているのでそれを変換して取り込んでいく。


「魔導解放──“万物呑み込む大黒点”」


 先ほどの魔導が太陽を生むのであれば、俺が生みだしたのはブラックホール。
 放たれた武具をすべてその中へ取り込み、永劫の闇へ進ませた。


「:博学多才:──起動。対処法を考察……プランを:戦闘再現:へ組み込みます」

「面倒臭い! ああもう、{感情}すべてが使えるなら楽勝なのに!」

「魔導解放──“天より注げ罪過の柱”」

「ヤバッ……!?」


 上から掛かる重力が激増し、俺を地面に食い込ませる。
 ミシミシと肉体が悲鳴を上げ、ブチブチと体を繋ぐ線が千切れていく。


「“ゼログラ……ビティ”!」


 文字通り重力をゼロにする魔法だが、魔導相手では力場を元通りにするのが限界だ。
 発動時間がどれくらいのものか分からないが、それでも魔力を絞って行使を続ける。


「魔導解放──“黒き穴昏き闇”」

「チッ──『無槍』!」

「魔導解放──“白き箱清き光”」

「させるか、『殺せ』!」


 その隙を突き発動された二つの魔導。
 一つは俺の周りを闇色で包み、悍ましいほどの邪悪さを認識させた。

 もう一つは偽者の周りを白く包み込み、それこそ神聖な気配を感じさせる。
 魔力が枯渇する覚悟で召喚した『無槍』を投擲し、グングニル化させて力を発揮した。


「事象反射──起動……ッ!?」


 これまで通りの反射を行い、あっさりと心臓を貫かれ神髄を破壊される偽者。
 肉体は粒子となり、どこかへ消える……それが本来の終わり方だ。


「やっぱりか……蘇生用魔導、在ったんだ」


 偽者を包む白い箱状の結界は、空気中に溶け込むはずだった粒子をすべて取り込んでいく──そして光が一瞬強くなると、そこには偽者が立っていた。



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