AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とレイドラリー前篇 その03
連続更新中です(07/12)
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──掲示板の情報が更新された。
祈念者が遺跡を綺麗にすることで、魔法陣が機能するようになる。
また、その上に乗った者が条件を満たしていると魔法陣が輝く。
再びナックルによって開示された情報により、祈念者たちは神殿の修繕を始める。
数千数万といる祈念者たちが力を合わせれば、それはすぐに終わるだろう。
そんな中、誰も向かっていない神殿が一つ在った……誰も知覚できず、行こうとしても忌避感を感じて向かうことを止める。
しかし、もっとも早く魔法陣が輝いたのはそこだった──祈念者たちがそれに気づいたのは、すべてが終わった後だった。
◆ □ ◆ □ ◆
???
「──っと。なるほど……」
先ほどまで居た神殿とは異なり、俺たちが居る場所の足元には草の絨毯が辺り一面に広げられている。
建物が覆っていた陽光も、清々しいほどに俺たちを照らしていた。
「我が主、ここは……」
「『始まりの草原』。そして、後ろにあるのは『始まりの町』だな。要するに、レイドバトルは雑魚も含めてレイドだってことか」
それを証明するように──俺の視界の端の方には見慣れない色のバーが新たに追加されており、『防衛値』と記されている。
つまりは門の耐久度であり、これが0になると敗北と見なされるのだろう。
「──“地形変革”。とりあえず、これで門の方の心配は要らない。ああ、でもいちおう運営神も関わっているんだったっけ? なら追加で──“傀児作製”」
触媒は地面の土に魔力を含ませたモノなので、あまりレベルは高くない。
しかし、それでも新人祈念者よりは強いのは保証できるので、何かあったら時間稼ぎぐらいは可能だと思う。
「リョク、それじゃあ行くぞ」
「ハッ──心得ました!」
「空間魔法で直接乗り込むのはご法度か……親切に結界まで用意しやがって。なんだ、意趣返しと嫌がらせか? けどまあ、普通のバトルイベントじゃ、たしかに全滅が解放条件に成り得ることもあるのか」
「どうされますか?」
本来のプランであれば、懐かしき当時と同じように一気に向かって終わらせようと考えていたのだが、それは難しくなった。
方法は二つ──正規に従うか、不正に殴り込むか。
「……何があるか分からないし、とりあえず倒せば出てくるんだ──リョク、すべてを薙ぎ払い力を示せ」
「すべては偉大なる我が王のために」
「……ああ、うん。頑張ってくれ」
「お任せください!」
鬼々と……いや、嬉々として背中に背負っていた大剣を引き抜くリョク。
その銘は『忠聖魔剣[屍結産牙]』──かつて呪具であった大剣が、リョクによって聖魔剣まで昇華された逸品である。
大剣を握り締め、戦場へ向かうリョク。
それを迎え撃つのは先兵である『魔子鬼』に加え、従わされている『桃兎』たちだ。
「たとえかつての同族であろうと、ワレは容赦せぬぞ!」
進化に進化を重ねた現在のリョクは、過去の自分である『魔子鬼王』をはるかに超えた存在となっている。
当時は就いていなかった職業も持っているため、その力量には圧倒的差があった。
力任せに勢いよく振るわれた大剣は、強烈な風圧を起こし魔物たちを薙ぎ払う。
リョクそのものが竜巻のように荒れ狂い、近づく者もそうでない者でも鎧袖一触を体現するかのような戦い方で倒していく。
「……いや、何この無双ゲー」
眷属が闘うと、いつも似たような感想を覚えるのはなぜだろうか。
俺があの手この手と工夫を凝らしているというのに、彼女たちは純粋な力を以ってすべてを終わらせられる……羨ましいな、それ。
「妖術──“鬼々壊々”!」
おまけに井島で使われていた妖術を使いこなし、さらに破壊力を高めている。
これまでは自身の持つ鬼気の使い方をすべて理解できていなかったリョクだが、俺のお土産は少しぐらい役に立っているようだ。
「妖術──“鬼火”!」
……こっちは持ち帰ってないけど。
青白い炎が魔物たちに命中すると、その火が引火して魔物たちから悲鳴が上がる。
俺も一度試したことがあるが、あれは熱くはないがなぜか燃えやすいのである。
リョクは一度妖術を覚えてから、凄まじい勢いで他の妖術も開発していった。
もともと眷属は魔法を共有できるため、それを妖術でも使えるように再現すればいいだけの話──鬼才のリョクには楽勝である。
「『流れゆけ』!」
また、今度は聖魔剣の力が発動した。
これまでの攻撃で死んで逝った魔物たちの肉体が粒子となり、[屍結産牙]の中へ一度吸い込まれると──巨大な牙状の刃となって再び生成される。
リョクの意思に従って動きだす鋭い牙は、これまで遠くで様子を窺っていた魔物たちの下へ向かい。容赦なく喰らい付いていく。
自分で作った死体をリソースに、貫通効果付きの牙型の刃を生みだす。
それこそが、リョクが生みだした聖魔武具である[屍結産刃]の力であった。
「──我が主! 草原に居た魔物の掃討、完了しました!」
「ああ、うん、ご苦労様。それじゃあ次は本拠地に向かうことにしよう」
「ハッ!」
再び聖魔剣を背負い、進みだした俺の三歩後ろを歩くリョク。
うん、その理由はなんとなく分かるには分かるが……違和感が半端ないな。
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──掲示板の情報が更新された。
祈念者が遺跡を綺麗にすることで、魔法陣が機能するようになる。
また、その上に乗った者が条件を満たしていると魔法陣が輝く。
再びナックルによって開示された情報により、祈念者たちは神殿の修繕を始める。
数千数万といる祈念者たちが力を合わせれば、それはすぐに終わるだろう。
そんな中、誰も向かっていない神殿が一つ在った……誰も知覚できず、行こうとしても忌避感を感じて向かうことを止める。
しかし、もっとも早く魔法陣が輝いたのはそこだった──祈念者たちがそれに気づいたのは、すべてが終わった後だった。
◆ □ ◆ □ ◆
???
「──っと。なるほど……」
先ほどまで居た神殿とは異なり、俺たちが居る場所の足元には草の絨毯が辺り一面に広げられている。
建物が覆っていた陽光も、清々しいほどに俺たちを照らしていた。
「我が主、ここは……」
「『始まりの草原』。そして、後ろにあるのは『始まりの町』だな。要するに、レイドバトルは雑魚も含めてレイドだってことか」
それを証明するように──俺の視界の端の方には見慣れない色のバーが新たに追加されており、『防衛値』と記されている。
つまりは門の耐久度であり、これが0になると敗北と見なされるのだろう。
「──“地形変革”。とりあえず、これで門の方の心配は要らない。ああ、でもいちおう運営神も関わっているんだったっけ? なら追加で──“傀児作製”」
触媒は地面の土に魔力を含ませたモノなので、あまりレベルは高くない。
しかし、それでも新人祈念者よりは強いのは保証できるので、何かあったら時間稼ぎぐらいは可能だと思う。
「リョク、それじゃあ行くぞ」
「ハッ──心得ました!」
「空間魔法で直接乗り込むのはご法度か……親切に結界まで用意しやがって。なんだ、意趣返しと嫌がらせか? けどまあ、普通のバトルイベントじゃ、たしかに全滅が解放条件に成り得ることもあるのか」
「どうされますか?」
本来のプランであれば、懐かしき当時と同じように一気に向かって終わらせようと考えていたのだが、それは難しくなった。
方法は二つ──正規に従うか、不正に殴り込むか。
「……何があるか分からないし、とりあえず倒せば出てくるんだ──リョク、すべてを薙ぎ払い力を示せ」
「すべては偉大なる我が王のために」
「……ああ、うん。頑張ってくれ」
「お任せください!」
鬼々と……いや、嬉々として背中に背負っていた大剣を引き抜くリョク。
その銘は『忠聖魔剣[屍結産牙]』──かつて呪具であった大剣が、リョクによって聖魔剣まで昇華された逸品である。
大剣を握り締め、戦場へ向かうリョク。
それを迎え撃つのは先兵である『魔子鬼』に加え、従わされている『桃兎』たちだ。
「たとえかつての同族であろうと、ワレは容赦せぬぞ!」
進化に進化を重ねた現在のリョクは、過去の自分である『魔子鬼王』をはるかに超えた存在となっている。
当時は就いていなかった職業も持っているため、その力量には圧倒的差があった。
力任せに勢いよく振るわれた大剣は、強烈な風圧を起こし魔物たちを薙ぎ払う。
リョクそのものが竜巻のように荒れ狂い、近づく者もそうでない者でも鎧袖一触を体現するかのような戦い方で倒していく。
「……いや、何この無双ゲー」
眷属が闘うと、いつも似たような感想を覚えるのはなぜだろうか。
俺があの手この手と工夫を凝らしているというのに、彼女たちは純粋な力を以ってすべてを終わらせられる……羨ましいな、それ。
「妖術──“鬼々壊々”!」
おまけに井島で使われていた妖術を使いこなし、さらに破壊力を高めている。
これまでは自身の持つ鬼気の使い方をすべて理解できていなかったリョクだが、俺のお土産は少しぐらい役に立っているようだ。
「妖術──“鬼火”!」
……こっちは持ち帰ってないけど。
青白い炎が魔物たちに命中すると、その火が引火して魔物たちから悲鳴が上がる。
俺も一度試したことがあるが、あれは熱くはないがなぜか燃えやすいのである。
リョクは一度妖術を覚えてから、凄まじい勢いで他の妖術も開発していった。
もともと眷属は魔法を共有できるため、それを妖術でも使えるように再現すればいいだけの話──鬼才のリョクには楽勝である。
「『流れゆけ』!」
また、今度は聖魔剣の力が発動した。
これまでの攻撃で死んで逝った魔物たちの肉体が粒子となり、[屍結産牙]の中へ一度吸い込まれると──巨大な牙状の刃となって再び生成される。
リョクの意思に従って動きだす鋭い牙は、これまで遠くで様子を窺っていた魔物たちの下へ向かい。容赦なく喰らい付いていく。
自分で作った死体をリソースに、貫通効果付きの牙型の刃を生みだす。
それこそが、リョクが生みだした聖魔武具である[屍結産刃]の力であった。
「──我が主! 草原に居た魔物の掃討、完了しました!」
「ああ、うん、ご苦労様。それじゃあ次は本拠地に向かうことにしよう」
「ハッ!」
再び聖魔剣を背負い、進みだした俺の三歩後ろを歩くリョク。
うん、その理由はなんとなく分かるには分かるが……違和感が半端ないな。
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