AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と四色の使徒 前篇


連続更新中です(02/12)
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 白、金、赤、青、緑……。
 俺の視界が認識する色は、それだけだ。
 どこまでも続く真っ白な世界、そこに存在する四人の美(少)女たち。

 ──そして、邪魔な凡愚モブ

 なんだかとても懐かしい邂逅に、思わず胸がときめいた……強すぎる感情故かすぐに冷静になって状況を把握する。

 そう、一抜けと言わんばかりに駆け寄ってくる緑の少女を視界に収め──受け止めた。


「メルメル、久しぶりー!」

「……フーカ。ああ、久しぶりだな」

「もしかしてだけど。メルメル、わたしのこと少し忘れてなかった? ちょっと間が空いてたでしょ」

「そうじゃなくてな。なんだか会うのが久しぶりで、改めてフーカたちの可愛さを認識して目を奪われたんだよ」


 腕の中に収まっていたフーカだが、なぜかその言葉でバッと抜け出して後退する。

 照れてくれているのか、少々顔を赤らめている……と、残った三色の美少女たちもこちらへ合流した。


「お久しぶりです、メルスさん」

「久しぶり、レイさん」

「申し訳ございません。新人祈念者プレイヤーやリソース管理、イベントやクエストの設定などに時間を費やしておりまして……あと、さん付けは不要ですよ」

「……そうだったな、レイ。逢えて本当に嬉しいよ」


 フーカの居なくなった俺の下へ、金髪の女神──レイが飛び込んでくる。
 これ以上の言葉など不要、互いの……というかレイの立場で行える限りの歓迎を以って彼女を迎え入れた。

 ──具体的には、後ろで見ている赤と青の少女たちの顔も真っ赤になることである。


「それにメルスさん、GM02が大変なご迷惑を掛けてしまったようで……」

「02? えっと、たしか育成イベントを担当していたGMだっけ? それがどうしたんだ……別に、面倒事に巻き込まれたって意識はこれっぽっちも無かったんだけど……」

「それは──」

「ここからは──ッ!」
「──ワタクシたちが説明したしますわ!」


 視界いっぱいだった金色が引き剥がされ、どーんと赤色と青色が割り込んできた。

 いきなりだったので少し驚いたが、何かを期待するような視線に負け……彼女たちにもも先ほどの二人同様のハグを提供する。


「久しぶりだな──シンク、アオイ。さっそくだが、迷惑ってなんだったんだ?」

「ゼ、02お姉さまがあのデッカイ方舟を送り込んだことよ」

「ノアを……って、アレ人為的なのかよ」

「はい。その、02お姉様はかなりワタクシたちに優しく……俗に言う、『シスコン』ですのよ」


 ああ、うん……だいたい事情を察した。
 つまりだ、姉や妹たちにちょっかいを出す悪い虫に罰を与えようとしたわけだ。
 一個人にやっていいことか? とも思うがこの世界は平等なゲームではない。

 それに、俺も眷属の誰かが男か真正の女好きな女に迫られていれば、男女平等に全能を振るい【憤怒いきどおり】をぶつけるだろう。

 俺から……【傲慢】で【強欲】な俺から眷属を奪うとは、それに値する行為なんだし。


「そういえば、その02さんにはまだ会っていなかったな。あのときはナースの育成を全力でやっていたし、何より縛りプレイの最中だったから例の場所に気づけなかった。そもそもアレ、今回在ったのか?」

「いいえ、フーカのときのアレは本人がメルスに会いたいと思って用意したものよ」
「ワタクシもイベント中に設置していたわけではありませんわ……そもそも、あのイベントでは置いても来れませんしね」

「そういえば迷宮の作製と攻略ダンジョンイベントだったか? そりゃあ無理だろうな」


 なんて会話をしていると、再び赤色と青色が視界から消え失せ──今度は緑色と金色が同時に収まった。


「こ、コホン。メルスさん、今回お呼び立てしたのは他でもありません……そんな02の行いを姉として代わりに謝るためです」
「──という口実を使って、どうにか空けた自由時間に押しかけに来たんだよ」

「なるほど……」

「ち、違います! え、えっと、02の行いは本来使徒にあるまじき行い。個人に執着するなどもってのほかです!」
「──まあ、わたしたちもメルメルに別の意味で執着しているから、話にならないけど」

「そうなのか……そういう意味なら、いつでも執着してくれていいんだけどな」


 四人とも、道行く祈念者よりは俺へ対する好感を持ってくれていると思う。

 というか、そうでもないのにここまでしてくれるというのならば、『女』という存在に対する不信感を抱いてしまうかもしれない。


「レイ、お詫びは不要だ。自分の姉妹に邪魔な男が話しかけてくるのが嫌だという気持ちもなんとなく分かるし、そもそも謝られるようなことでもない。02さんのお蔭でノアとも出会えた……むしろ感謝したいぐらいだ」

「今の言葉、02姉ぇが聞いたら顔を真っ赤にして怒ったかもね」

「そうなのか? ともかく、レイが02さんの代わりに謝るというのもおかしい。そもそも悪い事なんてしていないんだから、気にしなくていい。そうだな……いずれ、会う機会でも設けてくれればいいさ」

「……分かりました。メルスさんの言う通りに、今回は致しましょう」


 しかしまあ、強制的な召喚とか扉の前に強い門番などを用意されても困る。

 なので普通に会いたいという旨をしっかりと伝えて……とりあえず、02に関する話は幕を閉じるのだった。



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