AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と眷属化面接 中篇



「面接……ですか?」

「面接だ。お前たちが望む眷属には、面接を経ないとなることができない」

「……ユウたちはやってませんよ」

「ああ、言ってなかったな。それはコレに関わることで少しな」


 適当に空間から取りだした結晶。
 七色に輝くソレをチラつかせ、説明する。


「ユウとアルカの場合、<大罪>の一つである【傲慢】と【憤怒】を与えた。だが、やっぱりリスクが有ってな……二人には、それぞれに合った固有スキルを贈ろうと思う」

「普通、あげられませんよ」

「俺にとって遺憾ではあるが、お前たちとしては俺が理不尽な方がそれっぽいだろ? かなり前に伝えた侵蝕現象もゼロだから、安心してもらって構わない」


 分かりやすく言えば、運営製絡みの固有スキルだと侵蝕現象が起きる。

 しかし、自前でスキルを発現させれば何も起きない──それは、己にとって適性がある固有スキルを得たからだ。


「面接を通して、俺の眼が未来を視る。集めた情報を基に視るってタイプだ。お前たち二人にとって、どの固有スキルがもっとも最適なのかをな」

「その結果が<大罪>である可能性は?」

「そういうことをいちいち確認できるような人間性があれば、間違いなく無いだろう。逆に<美徳>スキルなんかは出るかもしれない。そこら辺はアンケートによるな」

「美徳……」


 職業が【聖女】のセイラにとっては、気になる所であろうか。

 侵蝕されても聖人のような献身的なことしかできず、しかも祈念者プレイヤーなので命すらも捧げられるという……ほぼ困らない【聖女】。

 相談を受けたことは有ったが、そもそも今のこの世界だと【聖女】の役割ってあんまりないんだよな……神のアンテナ役って感じだし、回復魔法も後天的に入手し放題な祈念者が大量に居るし。

 蘇生系や状態異常完全回復、特殊結界生成魔法は貴重だろうが……最後の奴以外は、どうにか祈念者たちが生産技術を伸ばしていけば、可能となってしまう。


「前に言っていた、自分だけのナニカ。今回それが見つかるといいな。ちなみにさっきから挙げている<美徳>と<大罪>、適正が無いとリスクが本当に半端ないから気を付けろよ」

「どんなリスクなんですか? あと、そのことをユウとアルカに言ったんですか?」

「リスクは侵蝕同様、自身の在り方が少しだけ変わる……だがまあ、少し心がオープンになるって感じだし、ゲームだからはっちゃけてますぐらいに認識でいい。問題はそこじゃなくて──俺を意識しだすんだよな」

「「…………」」


 おっと、絶対零度の眼差しがこちらへ。
 まあ、この言葉だけ聞くとただの自意識過剰野郎でしかないからな。


「最後まで聞けって。今回もだが、渡すスキルはすべて俺が持っているモノだ。そして眷属と言うシステム上、俺との間に薄っすらと縁のような物が繋がれてしまう。意識しなければ気づけないようなものだけどな」

「……その縁とやらが、今の発言に繋がっていると?」

「そうじゃなく、リスクの話だ。侵蝕はほぼゼロだが、俺と接触する時だけ少し侵蝕されると思ってくれ。見たら分かるだろう? ユウもアルカも、なぜか俺に近づいてくる」

「「…………」」


 再び沈黙だ。
 うーん、難しかっただろうか?
 隣に座るナックルも、やれやれといった感じで肩を竦めている……えっ、なんで?


「ユウもアルカも言わずもがな、わざわざ来るだろう? 大胆に、苛烈に……どっちも侵蝕現象が原因のはずだ」

「あー、はいはい分かりました。問題なさそうなので、もしどちらかに適性があればそのままください」
「わ、私も構いません」


 まあ、彼女たちにとってどれだけ意識しようと、現実へ帰還ログアウトできる時点でここはもう一つの世界なのだ。

 俺というモブが意気がっていられるのがこちらだけということを、理解しているからこその優しさなのかもしれない。

 なのでそのことについて、音を遮断したうえでナックルへ相談してみる──


「なあ、これってどういうことだ?」

「……いや、分かんないのか?」

「さっぱり。まあ、二人が強さのためならどういう代償だろうが構わない……みたいな意気込みなのはよく分かったけどさ」

「全然わかってないな」


 そういうことなんじゃないのか?
 いつもなら冴え渡る<千思万考>も、情報不足なため似たような答えしか出せずにいる。

 いったいどういうことだ? それぐらいしか俺の低スペックな脳では出せない。


「まあ、<美徳>も<大罪>もアンケートで出す適性で出るとは思わないんだけどな。普通に無難な固有スキルが出るだろう」

「そういえば……お前、たしか別の眷属とやらがいたよな? たしか、吸血鬼ヴァンパイア妖精フェアリーの子たちだったか」

「ああ、居るな」

「その子たちはユウとアルカと違い、<美徳>のスキルを持っているんだろう? お前の言うリスクはどんな風に働いているんだ?」


 吸血鬼ティンスには【忍耐】、妖精オブリには【救恤】を与えたが……どうだったかな?
 そういうスキルの性質だったのか、これらもあんまり侵蝕されても困らないんだよな。


「脅しはしたが、<美徳>の方は侵蝕されても俺に絡む必要が無い。たとえば【純潔】なんてのがあるが……逆に絡むと思うか?」

「ああー、そういう考え方なのか」

「何か問題でもあったか?」

「いや、なんでもない。お前も大概鈍感なそういうヤツだなって思っただけだ」


 そういうヤツ? なんだか知らないが、無性に否定したくなってくるな。
 だがそこは冷静に、<千思万考>を用いて情報の整理を…………ああ、そういうことか。


「やれやれ、ナックルも奥さんと娘が居る身だ。思考が鈍っていてもおかしくはないか」

「はっ? おい、それってどういう──」

「どうせ俺が鈍感とか、そんなことを考えていたんだろう? 勘弁してくれよ、俺がモテるのは自由民の眷属だけだよ……まあ、言うのは恥ずかしいけどな」

「……いや、なんでそれだけの推理力があって、そういうことは分かんないんだか……」


 ボソリと言ったナックルの言葉は、通常状態の俺の耳には入ってこなかった。
 なので結界を解除して、さっさとアンケートを始めることにする。

 ──二人にとって最高のスキル、いったいどんなものになるんだろうか?



コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品