AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と自己紹介 その25



 夢現空間 居間


 先日、魔道具の製作を試してみた。
 少し仕様に問題があったものの、映像越しに使用者に使い心地を確認しながらやった結果──とりあえずのプロトタイプを生みだすことに成功する。

 ちなみにそのときに分かったのだが、彼女のスキルが発動しない場合を確認できた。
 映像越し……の中でも機械のみで作った映像中継装置であれば、彼女のスキルが発動しなかったのだ。

 そこから察するに、彼女のスキルは魔力を通すことで発動するものなのだろう。
 魔道具版の映像中継を試したら、そっちはバッチリ発動して怖がらせてしまった。

 とりあえず機械仕掛けのアイテムで誤魔化し、その具合で完全版を作成する予定だ。
 その際に交渉もしたが、アイテムが完成したなら仕事をしてくれると約束してくれた。


「──とまあ、そんな感じだ。もう少しメンタルケアをしてからだが、悪意から国を守ってくれるようになるだろう」

「メルスなら、コピーしたスキルを適性のある人に配ることもできるんでしょ? それに魔道具も……その娘にそういう仕事をやらせる必要があるの?」

「出来る仕事をやる、そうやって何かをしないと人は堕落する……俺の世界だと、それができない奴が多かったからな」


 しいて言うなら、一定の領域を守護する警備員になっていたけどな。
 こっちの世界の者にとって、日本は楽園のような場所だ……平民として扱われる者であれば、こっちでの貴族と同等に振る舞えるのだから。


「ところで、まだ怖いか?」

「メルスの国は大丈夫。けど、外は……」

「大陸は違うし、今は多種多様な種族が居るからな。祈念者とでも偽装しておけば、気にされないと思うぞ」

「……うん」


 少々暗くしてしまったか。
 言葉を交わせる生物恐怖症でもある彼女にとって、外は自分を傷つける世界だ。
 眷属といっしょに行動すれば、いちおうの振る舞いはできるようだが……。


「ここはあれか? 治ったらデートをしようとか言うのがハーレムっぽいかもな」

「メルス、それ言ったら台無し」

「まあ、台無しでもなんでも、安心してほしいんだよ。それに、連れていくだけなら俺でもできるだろ」


 幸いにして、暇人なうえに分裂までできるような肉体の持ち主だ。
 どうでもいいことはそちらに任せ、本体が眷属との退廃した生活を送ることもできる。

 ──ただ、それなら分体の数を増やさないといけないな。


「さぁ、それじゃあ始めましょうか! 第二十五回質問タイムのお時間です! 今回のゲストはこちらのお方、勇者であり魔王であるミシェルさんでございます!」

「よろしく」

「はい、シンプルなお返事ありがとうございます! そういった感じで、スラスラと質問にもご解答してもらいたですね」

「頑張る」


 心を開いた相手には、ミシェルはそこまで物怖じしないのだ。
 少なくとも、そういった対象に世界の者たちはなってくれた……それを聞いた時は嬉しかったよ。


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「問01:あなたの名前は?」

「ミシェル=レーヴェ。けど、知らなかったときはマリーって呼ばれてた」

「そういえば、なんでだ?」

「孤児院の人が、そう呼んだから」


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

「性別は女、出身は人族の国? 生年月日は分からない」


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

「ポニーテール? に纏めた朱色? の髪と青い瞳。あとは……額の巻角」

「可愛いと思うんだがな」

「……けど、そう言ってくれる人は誰もいなかったから」


「問04:あなたの職業は?」

「【光迅魔王】。勇者の力が使える魔王? みたいな職業だった」

「<勇魔王者>の効果だっけ?」

「うん。すべての勇者と魔王になれる。強くなるために、まずはそれに就いてみた」


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

「……生物不信?」

「少しずつ治ってるんだから、百歩譲って人見知りとかにしておけよ」


「問06:あなたの趣味、特技は?」

「特技……人の悪意が見抜ける?」

「そう、だな。それが必要とされない国をいつか造りたいものだ」


「問07:座右の銘は?」

「人を呪わば穴二つ? 私が悪いと言う人族も魔族も、纏めて呪われればいい」

「……まあ、偽善者の仕事が増えるから別に構わないが」


「問08:自分の長所・短所は?」

「さっきの、悪意が分かること。逃げられるようになったけど、信じられなくなった」


「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」

「好きなのも嫌いなのも人。友達は……みんな、好きになれたと思う……」


「問10:ストレスの解消法は?」

「ストレス……感じすぎて、もう分かんなくなった」

「ああ、うん。落ち着く時はどんな時だ?」

「なら……誰かと話している時」


「問11:尊敬している人は?」

「メルスもだけど、ティルもかな? 人の悪意が最初から分かっていたのに、それでも私みたいにならなかったから」


「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

「ない、かな? こだわりを持っていたら、生きてられなかったし」


「問13:この世で一番大切なものは?」

「友達や家族」


「問14:あなたの信念は?」

「私を信じてくれたみんなを、私と同じような目には合わせない」


「問15:癖があったら教えてください」

「……食べ物に毒が無いか、時々気になる」


「問16:ボケですか? ツッコミですか?」

「ツッコミ、だと思う」


「問17:一番嬉しかったことは?」

「救われた時……は何があったか正直分からなかったし、眷属のみんなと仲良く話せたときかも」


「問18:一番困ったことは?」

「初めて友達を作ろうとしたとき……」


「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

「……飲ませてくれない」

「お酒はもっと大きくなったらな」


「問20:自分を動物に例えると?」

「ウォンバット、だっけ? それ」

「説明しよう、臆病な動物である」

「誰に向けての説明?」

「そりゃあ、見ている視聴者だな」


「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

「接したいと思わない相手には、マリーのまま通している」


「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

「ない。私は、悪くない」

「そう……だな」


「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」

「自分の父親と母親を探す。居たなら一発ぐらい殴る、そうじゃないなら……まだ決めてないけど何かする」


「問24:自分の人生、どう思いますか?」

「……分からない、まだ何も」

「人生は長いし、ゆっくりと探せばいいさ」


「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

「どうなんだろう? 隠れて過ごしたかったわけでもないし、これも人生をどうしたいか分からないから不明」


「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

「友達や家族と過ごす」


「問27:何か悩み事はありますか?」

「どうやったら友達ももっと仲良くなれるのか、それが分からない」

「……こればっかりは、どうしようもな。いろんな奴に訊いてみな」


「問28:死にたいと思ったことはありますか?」

「ある、たくさん」


「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

「普通? 普通ってなんだろう? でも、それだとみんなに会えなかったし……」


「問30:理想の死に方があればどうぞ」

「誰かが見ていてほしい。私には、いっしょに居てくれた誰かがいたって……そんな思い出が欲しい」


「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

「父親、母親のバカ野郎。理由があるのは未だとなんとなく分かるけど、もっといい思い出とか残してよ!」


「問32:最後に何か一言」

「……いつか見つけるんだから。家族や友達のこと、メルスのこともいっぱいいっぱい伝えるんだから」


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「はい、カット! ……見つかるといいな」

「……うん」


 最悪、魂魄さえ無事なら対話はできる。
 そうでなくとも、過去に居た場所さえ分かれば何があったか判明するだろう。

 ──殴れるかどうか、そこは微妙だがな。



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