AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と帝国散策 その13



 前回と違って眷属が居るので、ゆっくりと話をしながらオークションに参加できた。
 奴隷がプレイヤーで無ければ買い、そうであったならば有り金を叩いて買わせる。

 ただし、少しは買おうという気概を見せようと札を挙げ、ギリギリよりも少し前で降りて別の奴に落札させた。
 プレイヤーを購入する気はあるが、あまり必要としていないぐらいの認識にしておく。


「女奴隷を買うって、ハーレムを持っている奴だとどういう風に思われるんだろう?」

「後腐れない関係、とかじゃないかな? そういう点だけだと、メルスは当て嵌まってないよね。面倒見いいし」

「そうか? 俺じゃなくて、日本の在り方がよかったからだろう。スラムみたいな場所で育っていたら、俺はそんな風に考えてなかったと思うし」

「その前提から言うと、そもそもここにいないかもしれないじゃん」


 札を上げ、落札する。
 俺の方を見て、はずれか……みたいな顔をしている奴でも気にしない。
 実際、彼女が成り上がりを目指しているのならば、俺という人間ははずれなのだから。


「任せてよ、メルス。このハーレム物愛読家でもあるワタシが居れば、メルスの役に立つ奴隷かどうかぐらいバッチリ選別できるよ」

「選別って……俺の見る目が無いって、言いたいのか?」

「そういうわけじゃないけどさ。こっちの世界の人って、だいたいいい子ばっかりだし」


 言い方を変えれば、チョロインとも取られてしまう発言だな。
 アイリスの考え方は、周りを見ての評価なので完全ではない。

 ──あくまで彼女の出身国、そして今の俺たちの環境から見てそう思っているだけだ。


「いつ悪女が来るか分からないからね。そのときはズバッと言えない他の子に代わって、このワタシがガツンと言ってあげよう」

「そりゃあ頼もしいってもんだ。小姑みたいだから、割と止めてほしいけど」


 アイリスの見た目、まだJSだし。
 いくら精神(年齢の合計値)は大人な女性とはいえ、実際には十年ほどしか生きられなかった若奥さんに、そんなポジションをやらせないといけないんだか……。


「小人みたいな種族も、合法ロリみたいな種族も居るんだから関係ないでしょ」

「……あっ、顔に出てた?」

「こっちを見て、そんなことを思っている気がしたからね。けど、心配ご無用」


 俺の代わりに札を上げ、立っていた獣人の少女を落札してくれる。
 ちなみに説明だと、滅びかけている珍しい種族なんだとか。


「ワタシだって、役に立てるんだから。それぐらいのこと……させてよね?」

「ああ、うん。いいぞ」

「ねっ、ねぇ……なんか軽くない?」

「そりゃあまあ、前にもこの台詞セリフを言ったの忘れたか?」


 自分だってやれる、みたいな台詞はどの時代の創作物でも用いられる。
 頼られず、守られるだけの今を否定しようとした奴がだいたい使うよな。


「それに、札上げてるだけだし。前に言ったときは仕事とか渡したもんな」

「いや、まあそうなんだけど……やっぱり物語のヒロインみたいには、上手くいかないものなんだね」

「それなら、別のやり方をやってくれよ。悲劇のヒロインは絶対嫌だが、ギャグコメぐらいならいつでもウェルカムだしさ」

「ギャグコメか……いちおうやったこともあるから、それ自体はできるけど」


 かつてはゲームばかりやっていたアイリスなので、プレイしたことやっていたのは知っていた。
 具体的に何をするのか、それは俺にも分からないけど……まあ、何かしらのアクションがあるだろう。


『13番さん、落札です!』


 また一人、奴隷を落札する。
 普人族だが、かなり一般の中ではかなり貴重なスキルを持っているということで、高めの価格で始まっていた。


「アイリスはどう思う? あのスキル、そっちで働かせるか?」

「そうだね、機械だけだとどうにもならない部分をカバーしてもらいたいかな?」

「仕事は本人次第だけどな、重要な仕事だから報酬は弾む予定だし」

「うん、それならありがたいよ」


 先も挙げたアイリスの頼み事、それによって与えられた重要なお仕事。
 役目はシンプル、必要とされていない──安全の確保である。


「残っているのは……一人か。さっきの娘のスキルは、それだけの価値があったってことか。そのうえで、それ以上のスキルだぜ? これがプレイヤーだったら、もう残念って感想以外なんにも思えないよ」

「そうじゃないといいね」

「まあ、信頼できないことはちゃっちゃと売り捌いていたことからバレバレだしな。ほぼ確実に、こっちの人だろう」

「……そう、なのかな?」


 なんだか含みのある発言。
 ここで転移者や転生者、という可能性も無きにしも非ず。
 それならそれで、すぐに分かる気がするので大金を叩いて落札するが……この時代に異世界人の可能性は低いだろう。


「おっ、来たみたいだな」

「へー、可愛い娘だね」


 ステージの上に立たされる……というより引き摺られる少女。
 司会が彼女について説明を始める前から、会場が驚きと興奮の声を出していた。

 そして、知らない者たちにもその正体が明かされる。
 俺とアイリスは、とりあえず札の準備をするのだった。



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