AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と個人の部閉会式 後篇



「ご主人、我にも褒美を与えてほしい」

「ご褒美って言われても……具体的に、どんなものがいいんだ?」

「決まっている──いつものだ!」

「……アレはいろいろと外聞上不味いから、また別の機会にな」


 フェニはソウとは別の形のドMだ。
 被虐体質というわけではなく、死ぬことに悦びを感じている。
 なので、この場でご褒美を称した虐殺会を始めてしまえば……狂喜乱舞のお祭りだ。


「まあ、それは別の機会にやるとして……今簡単にできること、とかは無いか?」

「……で、では、頭を撫でてほしい」

「ん? まあ、それでいいならいいけど」


 フェニに関しては、本当の要求を殺し合うときに訊いておこうじゃないか。
 頭を撫で、嬉しそうに俯く彼女を見ながらそう思う。

 そして、どうせなのでこの時間を使って訊いておくことに──。


「なあ、フェニ。お前はランキング戦についてどう思う?」

「死んでも闘い続けられるかどうか、そこが問題だろう。ご主人、その点はどうなっているのだ?」

「いや、そこかよ……まあ、ポイント制か回数制限を掛ける。相手の人数とか強さとかで最大数が変化する、ぐらいしか今は考えていないな」


 まあ、即席で<千思万考>で思いついたアイデアなんだけどな。
 俺はただランキング戦をやりたいと思い、それを国民たちに伝えただけだ。


「詳細は解析班のお仕事ってことで。ただアイデアだけ言う、いわゆる株主ポジションを俺は貫くことにしよう」

「ご主人、ランキング戦を謳うのだから、上位の者が生まれる。それをどうするのだ?」

「うーん……ダンジョンで使うポイントに合わせた、特殊なポイントを設立しようか。前からやってる就職の制度とか、他にもアイテム購入とかをできるようにしようか。MAXまで貯めたら、俺が注文を聞いてオリジナルの神器を作るとかな」


 金で買っていた職業も、以降は何かしらのポイントに変更しようか。
 迷宮都市では職業をダンジョンポイントで買えるようになっているし、そうした法則を一つに纏めてみるのもいいかもしれない。


「ご主人が神器を……あの手この手でポイントを集めるものが現れるかもしれないな」

「まあ、神器だしな。それなら制限でも設けて、選ばれし者にだけプレゼントしよう」

「うむ、そうしたことは頭のいい者たちに任せておこうか」


 神器の材料となる物は、好きなだけ無尽蔵に創れるからな。
 うん、可能といえば可能だ。
 当然、モブに物流関係のことなんて理解できないので、投げやりに眷属へパスをして問題解決としよう。





「──主様ぶっ!」

「あ、ソウか」

「……のう、主様。どうして儂だけ具纏で拒むのじゃ?」

「んー、気のせいだろ」


 俺の前でソウがパントマイムを行う。
 一瞬で再生したものの、少しだけ鼻血を出した姿は滑稽だった。
 ……はい、ちょっと使っちゃいました。


「それに、先に言っておくが俺を拘束していたさっきのアレがお前のご褒美だ。あのとき自分で言ってたもんな、ご褒美だって」

「そ、そんなに薄遇せんでも……」

「じゃあ何か? アレは俺へのご褒美で、自分のご褒美は今からとでも言いたいのか? 俺にそんな理屈は通用しないからな、全力で拒否するからな」

「…………っ」


 小刻みに震えるソウ。
 少し内股になってモジモジとしだすので、ため息を吐いてから“清浄クリーン”を使って体を綺麗にする。


「お前、このタイミングで……」

「す、すまぬ」

「まあ、今のがご褒美ってことでいいな」

「……主様、これ以上のサービスは勘弁してほしい。儂もフェニ同様に、後日の労いを所望するぞ」


 サービスをした覚えはないんだけどな。
 本人(龍)がそう言うなら別にいいので、今は頭に手を乗せるだけで済ませておく。


「痛たたたたっ! 主様、どうしてパーじゃなくグーなんじゃ!?」

「俺が念話で助けを求めても、全然反応しなかったクセに何を今さら。いやー、こういう時って万能だなって感じるや」

「つ、痛覚を弄りおったな!」


 さすがソウ、すぐに見抜いたか。
 痛覚の倍増や無効化を無効化、強制的に痛覚を与える能力なんかを付与した拳だ。
 ただただ痛い、本来であれば声にならない悲鳴しか上がらない仕様なんだがな。


「そしてここに、痛覚を倍増させる魔法をかけると──」

「っ…………!?」

「さすがにソウも抵抗できないか。抵抗を弱める能力もあるからな」

「──────ッ」


 声にならない叫びが聞こえてくるな。
 手を乗せる前に“遮音結界”を展開してあるので、辺りへの問題はない。
 ……いずれソウが満足したら、止めてやることにしよう。





「──団体の部を、延期ですか?」


 首を傾げるアンに、俺はそのまま自身の意見を伝える。


「ああ、中止じゃない。少しばかり、時間を与えておきたい」

「……なるほど、個人の部で得た経験の反映ですか」


 そう、あれだけ無双プレイをしたんだし、それを生かした闘い方を見せてもらいたい。
 そもそも団体の部にはチームワークが必須だろうし、時間を用意することにした。


「一月、用意しよう。その間はお試しでランキング戦をやっておいて、準備ができたら団体の部をやる。せっかくなんだし、今回使わなかった特殊ルールを体験できる……なんてのもいいかな?」

「メルス様の意志を遂行するのが、わたしたちの使命です。どのようなことであれ、必ず果たしてみせましょう」

「……そんな重い話?」

「チケットはすでに完売ですので。そのまま使えば金銭的な問題はありませんが、やはり期待していた方も居たかと……」


 あちゃー、そこまで考えてなかった。
 個人の部の後は団体の部をやるって考えてただけで、詳細な日付は決めてなかったんだけどな。


「新聞で伝えてもらおうか、延期だって」

「畏まりました、連絡をしておきます」

「ああ、頼んだ」


 そんなこんなで、ドタバタの第一回武闘会個人の部は幕を閉じた。
 反省する点はいくつもある……それを、この期間中に改善しないとな。



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