AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と三回戦第二試合 その05
≪フェニックスが雪って、全然似合わねぇよな。見ろよ、フェニの周りだけすぐに雪が融けてんじゃねぇか≫
≪燃え盛る炎と荒れ狂う吹雪……なんだかメルスさんの混沌魔剣のようですね≫
実況席に居るコアは、特設空間の環境を見てそう呟いた。
三つの焔と三つの冬が存在する分、ある意味ではこの環境の方が優っているのだが。
≪マスター、ラグナロクについて少し知りたいのですが……『チュウニ病』とやらだったマスターであればご存知ですよね?≫
≪ちゅ、厨二病じゃねぇし! 少し神話の勉強がしたかっただけだからな! ラグナロクは、ある地域で伝えられた神話で語られた世界の終わりなんだよ≫
カナタはラグナロクについて語りだす。
メルスとは異なる地球から転移したカナタではあるが、すでにそういった情報に関しては摺り合わせを済ませてあった。
≪あの雪はその最初、ラグナロクが始まる前に吹くヤツだ。風の冬、剣の冬、狼の冬と呼ばれている──別名は『大いなる冬』だ。あれが三年間ぐらいずっと続いて、生物は全部死ぬ≫
≪きゅ、急に絶滅するんですね。メルス様の世界は厳しそうです≫
≪あくまで神話は架空の話、今を生きる俺たちには本当にあったかどうかは分かんねぇんだよ。こっちの世界は神様が加護をくれるから居るって分かるけど、目に見える形で俺たちの世界の神様はなんにもしてくれねぇ≫
吐き捨てるように、カナタはそう語る。
少しだけ暗くなった雰囲気を感じ、すぐさま笑顔で説明を再開した。
≪まっ、まあ続きを言うぞ! そのあと太陽と月が二匹の神狼の子供たちに喰われて、天変地異が起きる。そのあと、あらゆる封印が融けて化け物たちが騒ぎ出す……このときの一つがあの炎だ。スルトって巨人の炎なんだが、世界を焼き尽くすって定められてるぞ≫
九つの世界を海中に沈めた終焉の炎。
それはラグナロクにおいて、崩壊現象の一つでしかない。
≪他にもいろいろとあるんだが、あくまであのレーヴァティンに関する情報だけに絞ればいいよな? フレイっていう神様の剣だったり、さっき言ったスルトって巨人の持つ剣にされてたりとレーヴァティンも諸説が多いんだが……『破滅の杖』だって捉え方が、特に多かった気がするな≫
≪杖、ですか……フェニ選手が一度だけ、杖に形を変えていましたね≫
≪そこはメルスも形を変えるってことで誤魔化したんだろうな。剣がポピュラーな形で知られてるけど、実際はどうなんだかまったく分かってないぞ。訳は杖なんだけどな≫
剣というのは比喩でしかない、という考え方をする者もいた。
それでも地球における剣の有名度が事実を塗り替え、現代においてレーヴァティンが剣であるという情報を根強く残している。
≪マスター、だいぶ逸れています。結論だけ言ってください≫
≪……いいけどよぉ。ラグナロクを引き起こすのがあの武器だって言うなら、その幅は半端なく広い。しかもその一つ一つが、世界の終わりに関するものだ。それなりの条件があると思うぞ≫
「お主のそれ、いったいどれだけの対価を支払っているのかのう?」
「特に、何も」
「…………?」
カナタの話を聞いていたかのように、二人はレーヴァティンが引き起こす事象について話し合っていた。
剣の冬と呼ばれる現象が、ソウに向けて至る所から剣を飛ばすが気にもしない。
そのすべてを威圧だけで捻じ伏せているソウは、フェニの返答に頭を悩ました。
「先ほども言ったが、これの製作者はあのご主人だ。眷属がひどく苦しむ対価など用意しないし、あったとしても自分で肩代わりするような仕組みを整えているだろう」
「それはそれで、主様が何をしたかが気になるのう」
「素材を良いものにした、としか教えてもらえなかった。我もそれ以上のことは知らないのだ。だが、そうして改造を施された後は、魔力の通りも良いし威力も上がった。こんなこともできる」
フェニがステッキのように槍を振るうと、雪が狼を象って牙を剥く。
剣と違い、意思を持っているかのように威圧に耐えてソウの元へ向かう。
その姿にふむ、と呟いたソウは──棒を振るって狼を破壊していく。
「あまり強くはないようじゃ。やはりお主に雪は似合わぬ。乱れて暴れる炎を落ち着かせるのも、そろそろよいのでは?」
「…………」
「沈黙は何よりも事実を物語る。儂を超えようとするのは構わないが、あまり無茶はしない方がよいぞ。身の丈に合わぬ力は、自壊を引き起こす。主様がどれだけ、儂らに挑むために身を滅ぼしたか……終焉の島に居た儂らよりも、お主の方が知っているであろう」
ついでとばかりに、翼を一度だけ強くはためかせるソウ。
風の冬と呼ばれる吹雪以上の風が吹き荒れると、剣や狼を吹き飛ばす。
「じゃが、こうして説得しても誰一人として諦めないのが主様の眷属じゃ。儂自ら引導を渡し、楽にしてやろう」
「…………“天体墜落”」
「まだあるのか……主様、世界でも滅ぼす気なのかのう?」
槍が突いた場所に、空間の亀裂が奔る。
そこからナニカが現れる──
「“海蛇水進”、“死爪巨舟”、“炎魔灰燼”、“神巨戦没”、“旧世崩海”……」
「厄介な。防御をすり抜ける今は、どうにかせねば不味いのう」
次々と生まれる空間の歪み。
そこから現れるのは世界を終わりに導く、崩壊現象の数々。
だがソウに、緊張した様子はない。
棒を構え、歪みに向け──再び龍迅砲を解き放つ。
≪燃え盛る炎と荒れ狂う吹雪……なんだかメルスさんの混沌魔剣のようですね≫
実況席に居るコアは、特設空間の環境を見てそう呟いた。
三つの焔と三つの冬が存在する分、ある意味ではこの環境の方が優っているのだが。
≪マスター、ラグナロクについて少し知りたいのですが……『チュウニ病』とやらだったマスターであればご存知ですよね?≫
≪ちゅ、厨二病じゃねぇし! 少し神話の勉強がしたかっただけだからな! ラグナロクは、ある地域で伝えられた神話で語られた世界の終わりなんだよ≫
カナタはラグナロクについて語りだす。
メルスとは異なる地球から転移したカナタではあるが、すでにそういった情報に関しては摺り合わせを済ませてあった。
≪あの雪はその最初、ラグナロクが始まる前に吹くヤツだ。風の冬、剣の冬、狼の冬と呼ばれている──別名は『大いなる冬』だ。あれが三年間ぐらいずっと続いて、生物は全部死ぬ≫
≪きゅ、急に絶滅するんですね。メルス様の世界は厳しそうです≫
≪あくまで神話は架空の話、今を生きる俺たちには本当にあったかどうかは分かんねぇんだよ。こっちの世界は神様が加護をくれるから居るって分かるけど、目に見える形で俺たちの世界の神様はなんにもしてくれねぇ≫
吐き捨てるように、カナタはそう語る。
少しだけ暗くなった雰囲気を感じ、すぐさま笑顔で説明を再開した。
≪まっ、まあ続きを言うぞ! そのあと太陽と月が二匹の神狼の子供たちに喰われて、天変地異が起きる。そのあと、あらゆる封印が融けて化け物たちが騒ぎ出す……このときの一つがあの炎だ。スルトって巨人の炎なんだが、世界を焼き尽くすって定められてるぞ≫
九つの世界を海中に沈めた終焉の炎。
それはラグナロクにおいて、崩壊現象の一つでしかない。
≪他にもいろいろとあるんだが、あくまであのレーヴァティンに関する情報だけに絞ればいいよな? フレイっていう神様の剣だったり、さっき言ったスルトって巨人の持つ剣にされてたりとレーヴァティンも諸説が多いんだが……『破滅の杖』だって捉え方が、特に多かった気がするな≫
≪杖、ですか……フェニ選手が一度だけ、杖に形を変えていましたね≫
≪そこはメルスも形を変えるってことで誤魔化したんだろうな。剣がポピュラーな形で知られてるけど、実際はどうなんだかまったく分かってないぞ。訳は杖なんだけどな≫
剣というのは比喩でしかない、という考え方をする者もいた。
それでも地球における剣の有名度が事実を塗り替え、現代においてレーヴァティンが剣であるという情報を根強く残している。
≪マスター、だいぶ逸れています。結論だけ言ってください≫
≪……いいけどよぉ。ラグナロクを引き起こすのがあの武器だって言うなら、その幅は半端なく広い。しかもその一つ一つが、世界の終わりに関するものだ。それなりの条件があると思うぞ≫
「お主のそれ、いったいどれだけの対価を支払っているのかのう?」
「特に、何も」
「…………?」
カナタの話を聞いていたかのように、二人はレーヴァティンが引き起こす事象について話し合っていた。
剣の冬と呼ばれる現象が、ソウに向けて至る所から剣を飛ばすが気にもしない。
そのすべてを威圧だけで捻じ伏せているソウは、フェニの返答に頭を悩ました。
「先ほども言ったが、これの製作者はあのご主人だ。眷属がひどく苦しむ対価など用意しないし、あったとしても自分で肩代わりするような仕組みを整えているだろう」
「それはそれで、主様が何をしたかが気になるのう」
「素材を良いものにした、としか教えてもらえなかった。我もそれ以上のことは知らないのだ。だが、そうして改造を施された後は、魔力の通りも良いし威力も上がった。こんなこともできる」
フェニがステッキのように槍を振るうと、雪が狼を象って牙を剥く。
剣と違い、意思を持っているかのように威圧に耐えてソウの元へ向かう。
その姿にふむ、と呟いたソウは──棒を振るって狼を破壊していく。
「あまり強くはないようじゃ。やはりお主に雪は似合わぬ。乱れて暴れる炎を落ち着かせるのも、そろそろよいのでは?」
「…………」
「沈黙は何よりも事実を物語る。儂を超えようとするのは構わないが、あまり無茶はしない方がよいぞ。身の丈に合わぬ力は、自壊を引き起こす。主様がどれだけ、儂らに挑むために身を滅ぼしたか……終焉の島に居た儂らよりも、お主の方が知っているであろう」
ついでとばかりに、翼を一度だけ強くはためかせるソウ。
風の冬と呼ばれる吹雪以上の風が吹き荒れると、剣や狼を吹き飛ばす。
「じゃが、こうして説得しても誰一人として諦めないのが主様の眷属じゃ。儂自ら引導を渡し、楽にしてやろう」
「…………“天体墜落”」
「まだあるのか……主様、世界でも滅ぼす気なのかのう?」
槍が突いた場所に、空間の亀裂が奔る。
そこからナニカが現れる──
「“海蛇水進”、“死爪巨舟”、“炎魔灰燼”、“神巨戦没”、“旧世崩海”……」
「厄介な。防御をすり抜ける今は、どうにかせねば不味いのう」
次々と生まれる空間の歪み。
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