AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と一回戦第五試合 前篇
(なぜだ……どうしてこうなった!)
その男──ナックルは心の中で慟哭する。
主催者であるメルスに招待され、武闘会の個人の部へ参加することになったナックル。
揃えられる中で最高級の装備を身に纏い、同じギルドのメンバーと特訓を重ねた。
さすがに優勝はできずとも、一勝ぐらいはできるのでは? ……そう驕っていた。
≪午後の部最初の第五試合! 対戦カードはナックル選手VSソウ選手! 祈念者最強ギルドの長と、元世界最強のドラゴンの闘いが観れるぞ!≫
アナウンスの声は、ナックルの耳を通り抜けてしまう。
メルスから聞いたとある闘い──まさに天変地異のような絶望が自分にも訪れるとは予想だにしていなかったからだ。
「──お主がナックルとやらか。主様に聞いてはいたが……プレイヤーとはやはり、それだけなのか?」
「それだけ……とは?」
「決まっておろう。か弱き弱者かどうか、どうかじゃ。儂本来の力を振るえば、お主らなど知覚する間もなく魂滅してしまう。……主様だけが特別なのか?」
「それは間違いない」
訊ねてくる銀髪の女性──ソウに、ナックルは即答した。
一度として、メルスが普通のプレイヤーであると思ったことなどない。
会う前から、その所業の数々が自分たちにひどい影響を及ぼしていた。
それはまさに選ばれし者の才能。
知らずして周りを巻き込み、好き勝手な方向へ導く非凡の証拠。
……ただそれは、メルスからしてみれば後天的に与えられたモノであるのだが。
「アイツは俺たちプレイヤーの中でもっとも強い。数の力がそれに優るなんて話もあるけど……アイツはそれが自分に通用しないと、劣化した模造体で証明した」
「神の贋作など、取るに足らぬわ。所詮は概念が形を成しただけ……想い程度で儂を殺せるのならば、世界最強の龍などと遠くで謳われることもなかったじゃろう」
(そんな奴と、どうして俺が闘わなきゃならないんだ! メルスめ……狙ったな!)
もちろん、そんなことはしていない。
あくまで抽選は厳選な方法で行われ、メルス自身はいっさい介入していないのだから。
「……じゃがまあ、今の儂は主様の忠実なる下僕。肉体を、精神を、魂魄を縛られ、決して逃れられぬ楔を打たれてしもうた。今もこうして本来の力を極限まで削がれ、矮小な人間と闘うことになっている」
「命令されたのか?」
「そうであったのならば、どれだけよかったのやら。主様は■■■■……おっと、どうやら主様のお怒りを買ったようじゃな」
「なんだと?」
すると、ソウとナックルの頭に直接呼びかけるように、声がどこからか聞こえてくる。
《ナックル、気にしなくていいからな。ソイツは心臓に槍をぶっ刺したら壊れた変態ドMドラゴンだ》
「くっ、さすが主様じゃ。初対面の者と会話しているというのに、ここまで儂を罵ってくれるとは……」
《……そんなわけだ。さっきのは俺が登録したNGワードを言おうとしたから、自動的に声にノイズがかかっただけ。元はたしかに最強のドラゴンだったが、今じゃ最狂の変態でしかない。どうにも扱いに困っているよ》
「~~~~!」
ソウの反応は、もう声にもならなかった。
キュッと内股となってモジモジし出すソウの姿に、ゾッとするナックル。
「ところで、念話をするならソウ……さんだけでも良かったんじゃないのか?」
《いや、ちゃんと理由があってな……お前、絶対勝てないと思ってるだろ?》
「当然だ」
いくらステータスが弱体化していると言われようと、内面から滲み出るオーラが圧倒的すぎる。
かつて誤って理解していたオーラを可視化する力──(気視眼)を以ってそれを知ってしまったナックルに、勝算などまったく見出すことができない。
「だいたい、なんだあのオーラ量は。お前は視えないから驚きもしないが、視える分アイツが怖いんだぞ」
《視えない方がよかったと思うこと……そういうのもあるだろ?》
「……お前と話していると、いつも思うことになる」
実際、メルスのオーラを視ようとすれば何かしらのダメージを負うことになる。
メルスを覗こうとする行為は、眷属たちにとって許されざる愚行とされるのだから。
《ハハハッ! モブのオーラ量なんてたかが知れてるぞ! 俺の眷属に魂の強さとやらを視れる奴がいたんだが、ソイツ曰く──俺の魂は小さすぎて眷属の過保護に包まれて視えない、なんて言われたからな。そんなに問題視することでもないさ》
そんなことは露知らず、メルスは自身の凡性を主張する。
実際のところ、量ではなく質は格段に上昇している……それ以上に、眷属たちの魂が輝くため捉えることができないのだ。
《──まっ、相手はチートドラゴン。どんな相手だろうと一瞬で細胞の残らずこの世から消滅できるような奴だ。だが、今回はセーブ機能が働いているから、全力を尽くせば倒せるだろうよ》
「……いや、それでも無理だろう」
《硬いこと言うなって。お前の対戦相手の準備はさせておく。本気で挑めよ》
そう言って少しすると、念話越しの呼び声に応えたのか、ピクリと肩を震わせるソウ。
そして何やら頷く素振りを見せ、とても嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「おい、何を言った」
《勝てばご褒美、と言っただけだ。詳細はあえて何も言わずにな》
「……鬼畜だな、お前」
《アッチがそれを求めているんだ。俺はそれに合わせて想いを伝えるしかないだろう》
世界最強のドラゴンが勝利に向けて闘志を燃やす中──第五試合の幕が開く。
その男──ナックルは心の中で慟哭する。
主催者であるメルスに招待され、武闘会の個人の部へ参加することになったナックル。
揃えられる中で最高級の装備を身に纏い、同じギルドのメンバーと特訓を重ねた。
さすがに優勝はできずとも、一勝ぐらいはできるのでは? ……そう驕っていた。
≪午後の部最初の第五試合! 対戦カードはナックル選手VSソウ選手! 祈念者最強ギルドの長と、元世界最強のドラゴンの闘いが観れるぞ!≫
アナウンスの声は、ナックルの耳を通り抜けてしまう。
メルスから聞いたとある闘い──まさに天変地異のような絶望が自分にも訪れるとは予想だにしていなかったからだ。
「──お主がナックルとやらか。主様に聞いてはいたが……プレイヤーとはやはり、それだけなのか?」
「それだけ……とは?」
「決まっておろう。か弱き弱者かどうか、どうかじゃ。儂本来の力を振るえば、お主らなど知覚する間もなく魂滅してしまう。……主様だけが特別なのか?」
「それは間違いない」
訊ねてくる銀髪の女性──ソウに、ナックルは即答した。
一度として、メルスが普通のプレイヤーであると思ったことなどない。
会う前から、その所業の数々が自分たちにひどい影響を及ぼしていた。
それはまさに選ばれし者の才能。
知らずして周りを巻き込み、好き勝手な方向へ導く非凡の証拠。
……ただそれは、メルスからしてみれば後天的に与えられたモノであるのだが。
「アイツは俺たちプレイヤーの中でもっとも強い。数の力がそれに優るなんて話もあるけど……アイツはそれが自分に通用しないと、劣化した模造体で証明した」
「神の贋作など、取るに足らぬわ。所詮は概念が形を成しただけ……想い程度で儂を殺せるのならば、世界最強の龍などと遠くで謳われることもなかったじゃろう」
(そんな奴と、どうして俺が闘わなきゃならないんだ! メルスめ……狙ったな!)
もちろん、そんなことはしていない。
あくまで抽選は厳選な方法で行われ、メルス自身はいっさい介入していないのだから。
「……じゃがまあ、今の儂は主様の忠実なる下僕。肉体を、精神を、魂魄を縛られ、決して逃れられぬ楔を打たれてしもうた。今もこうして本来の力を極限まで削がれ、矮小な人間と闘うことになっている」
「命令されたのか?」
「そうであったのならば、どれだけよかったのやら。主様は■■■■……おっと、どうやら主様のお怒りを買ったようじゃな」
「なんだと?」
すると、ソウとナックルの頭に直接呼びかけるように、声がどこからか聞こえてくる。
《ナックル、気にしなくていいからな。ソイツは心臓に槍をぶっ刺したら壊れた変態ドMドラゴンだ》
「くっ、さすが主様じゃ。初対面の者と会話しているというのに、ここまで儂を罵ってくれるとは……」
《……そんなわけだ。さっきのは俺が登録したNGワードを言おうとしたから、自動的に声にノイズがかかっただけ。元はたしかに最強のドラゴンだったが、今じゃ最狂の変態でしかない。どうにも扱いに困っているよ》
「~~~~!」
ソウの反応は、もう声にもならなかった。
キュッと内股となってモジモジし出すソウの姿に、ゾッとするナックル。
「ところで、念話をするならソウ……さんだけでも良かったんじゃないのか?」
《いや、ちゃんと理由があってな……お前、絶対勝てないと思ってるだろ?》
「当然だ」
いくらステータスが弱体化していると言われようと、内面から滲み出るオーラが圧倒的すぎる。
かつて誤って理解していたオーラを可視化する力──(気視眼)を以ってそれを知ってしまったナックルに、勝算などまったく見出すことができない。
「だいたい、なんだあのオーラ量は。お前は視えないから驚きもしないが、視える分アイツが怖いんだぞ」
《視えない方がよかったと思うこと……そういうのもあるだろ?》
「……お前と話していると、いつも思うことになる」
実際、メルスのオーラを視ようとすれば何かしらのダメージを負うことになる。
メルスを覗こうとする行為は、眷属たちにとって許されざる愚行とされるのだから。
《ハハハッ! モブのオーラ量なんてたかが知れてるぞ! 俺の眷属に魂の強さとやらを視れる奴がいたんだが、ソイツ曰く──俺の魂は小さすぎて眷属の過保護に包まれて視えない、なんて言われたからな。そんなに問題視することでもないさ》
そんなことは露知らず、メルスは自身の凡性を主張する。
実際のところ、量ではなく質は格段に上昇している……それ以上に、眷属たちの魂が輝くため捉えることができないのだ。
《──まっ、相手はチートドラゴン。どんな相手だろうと一瞬で細胞の残らずこの世から消滅できるような奴だ。だが、今回はセーブ機能が働いているから、全力を尽くせば倒せるだろうよ》
「……いや、それでも無理だろう」
《硬いこと言うなって。お前の対戦相手の準備はさせておく。本気で挑めよ》
そう言って少しすると、念話越しの呼び声に応えたのか、ピクリと肩を震わせるソウ。
そして何やら頷く素振りを見せ、とても嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「おい、何を言った」
《勝てばご褒美、と言っただけだ。詳細はあえて何も言わずにな》
「……鬼畜だな、お前」
《アッチがそれを求めているんだ。俺はそれに合わせて想いを伝えるしかないだろう》
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