AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と一回戦休憩時間 中篇
会場となったダンジョンには、メインとなる闘技場と外部の広場が存在する。
今は休憩時間なので仕事タイム。
予め自宅から料理を持ってきた者以外は、広場に置かれたいろいろな露店で昼食を取っているだろう。
「──そして今、俺もそこに居た」
「すみません! カレーをください!」
「はいよっ! ちょっと待ってな!」
温めておいたカレーを掬い、セットしておいた米の上にかけていく。
俺の店はジャパニーズ系の品を多めに用意しているので、米は必ず付いてくるぞ。
ドロドロのカレーが米の周りを囲む。
白い島と茶色い海……ダメだ、やっぱり俺は比喩表現が下手だ。
「はいよ──お待ちっ!」
「あ、ありがとうございます」
「ああ、またのご利用を」
祭りの期間中、金銭問題は俺のポケットマネーで補って無償化している。
そのため、お金を持たずとも好きな物を食べることができる……少し、特殊な店も何店舗かあるのだが。
「ごしゅじんさまー!」
「グラか。料理巡りの方、どうなってる?」
「順調順調! 全部美味しいよ!」
食べ物大好き、【暴食】の三首犬グラ。
彼女はこの祭りの期間中、出店をすべて廻ろうと絶賛活動中なのだ。
「結構いい店が並んでるだろ? フリーパスの方は使えてるか?」
「うん! いっぱい喰べれた!」
「条件付きの店も出してくれただろ」
先に挙げた料理長も、午後の部から料理を出すことになっているが……人気も人気、超人気のため大行列ができることは最初から分かっている。
なのでそういった店は予約・抽選制となっており、事前配布の割符が無ければ初期販売の分は食べることができない。
……うちの店も、同様だぞ。
「ところでグラ、お前は何を食べる?」
「うーん……美味しいもの!」
「シンプルかつ面倒な注文だな……少し待ってろ。今、用意する」
グラからの注文となれば、本気で作らなければ対応しきれない。
出店として出せる食材の限界を用意して、“不可視の手”と共に調理を始める。
料理は(生産神の加護)もあり、俺の腕以上の品質を確約してくれる。
整えた品はまさに混沌。
俺の作れる品を詰め込めるだけ詰め込み、用意した皿の中で一番大きな物の上に並べた究極の逸品である。
「ほら、食べてくれ。見た目がアレなこと以外は完璧な、至高の料理だ──」
「いっただーきまーす!」
俺の言葉は途中で掻き消え、グラの咀嚼音だけが辺りに木霊していく。
だがそこに嫌悪感は存在せず、ただただ嬉しそうに笑顔を浮かべるグラがそこに居る。
道行く人たちは、その様子を見てぐーっとお腹を空かせていく。
……確信はないが、【暴食】は周りを空腹状態に導くのではないだろうか。
幸せそうな姿、悪魔とは違う無邪気な天使のような姿が周りの視線を奪う。
「おいしーい! ごしゅじんさま、ぼく、幸せだよ!」
「そうかそうか、俺もそういってもらえると幸せになれるよ」
グラの表情は至福のもので、それを見た俺もまたついほっこりとしてしまう。
ただ食べるという行為だけで、人はここまで幸せになれるのだろうか。
「め、メルス様! お、俺にも頂けないですか!」「どうか、私にも!」「ち、チケットは無いですけど、それでも……!」
「チケットはいいさ。ソイツらの分が用意されていれば、問題ないんだからな。食べたい物はなんだ? ほら、言ってみろ……周りと協力して大量に作ってやる」
周りから歓声が上がる。
出店の店主たちも、腕を巻くって張り切り様子が見て取れた。
本来なら客を奪っただのと他の店と揉めるだろうが……そこは、この世界の素晴らしきクオリティ。
俺の生産技術が卓越していることは国民全員の知るところで、料理人として一度はコラボすることが誉れとされているほどだ。
なので、ただでさえ経費すべてを俺が補うこの期間中は、ほぼすべての店が俺の支配下に収まっていると言っても過言ではない。
「俺の声が聞こえている範囲の店だけで構わない! いっしょに料理を作る分のスペースの確保を頼む! 俺の店だけでカバーできない分は、そちらで調理したい!」
「メルス様と料理ができるぞ!」「す、すぐに場所を開けます……おい、早く綺麗にしないか!」「あわわ、ど、どうしよう……」
反応はそれぞれだが、スキルは使っていないのでそこまで声は響いていない。
祭りの雑多に呑まれ、近くの数店が呼応するだけに終わる……はずだった。
「おい! メルス様がテメェらの調理場を借りて料理をやりたいと言ってるぞ! 早く整えて迎える準備をしやがれ!」
「え゛? ちょ、ちょっと待っ──」
「なんだと? それならそうと早く言え!」「ちょ、ちょっと店仕舞いだ……代わりにメルス様の作った料理が食べられるんだ、誰も文句はないだろう!」「みんな、すぐにこのことを伝えて! 美味しい料理が待っているのよ!」
「えー……」
なんだか話が大事になってきたな。
全出店を使っての料理なんて、俺独りでできるわけないんだが……。
いや、できないわけじゃないんだけどさ。
少しやり方を変える必要がありそうだな。
「みんな! 食べたい料理がある店で待機してくれ! それぞれの店に一度だけ行って、人数分作る! もちろん、共有は構わないが並ぶのは一度だけだぞ!」
『はーい!』
それから俺は、休憩時間が終わるまでひたすら料理を行い続けた。
……そして、午後の部開始まであと僅かまで時間は進む。
今は休憩時間なので仕事タイム。
予め自宅から料理を持ってきた者以外は、広場に置かれたいろいろな露店で昼食を取っているだろう。
「──そして今、俺もそこに居た」
「すみません! カレーをください!」
「はいよっ! ちょっと待ってな!」
温めておいたカレーを掬い、セットしておいた米の上にかけていく。
俺の店はジャパニーズ系の品を多めに用意しているので、米は必ず付いてくるぞ。
ドロドロのカレーが米の周りを囲む。
白い島と茶色い海……ダメだ、やっぱり俺は比喩表現が下手だ。
「はいよ──お待ちっ!」
「あ、ありがとうございます」
「ああ、またのご利用を」
祭りの期間中、金銭問題は俺のポケットマネーで補って無償化している。
そのため、お金を持たずとも好きな物を食べることができる……少し、特殊な店も何店舗かあるのだが。
「ごしゅじんさまー!」
「グラか。料理巡りの方、どうなってる?」
「順調順調! 全部美味しいよ!」
食べ物大好き、【暴食】の三首犬グラ。
彼女はこの祭りの期間中、出店をすべて廻ろうと絶賛活動中なのだ。
「結構いい店が並んでるだろ? フリーパスの方は使えてるか?」
「うん! いっぱい喰べれた!」
「条件付きの店も出してくれただろ」
先に挙げた料理長も、午後の部から料理を出すことになっているが……人気も人気、超人気のため大行列ができることは最初から分かっている。
なのでそういった店は予約・抽選制となっており、事前配布の割符が無ければ初期販売の分は食べることができない。
……うちの店も、同様だぞ。
「ところでグラ、お前は何を食べる?」
「うーん……美味しいもの!」
「シンプルかつ面倒な注文だな……少し待ってろ。今、用意する」
グラからの注文となれば、本気で作らなければ対応しきれない。
出店として出せる食材の限界を用意して、“不可視の手”と共に調理を始める。
料理は(生産神の加護)もあり、俺の腕以上の品質を確約してくれる。
整えた品はまさに混沌。
俺の作れる品を詰め込めるだけ詰め込み、用意した皿の中で一番大きな物の上に並べた究極の逸品である。
「ほら、食べてくれ。見た目がアレなこと以外は完璧な、至高の料理だ──」
「いっただーきまーす!」
俺の言葉は途中で掻き消え、グラの咀嚼音だけが辺りに木霊していく。
だがそこに嫌悪感は存在せず、ただただ嬉しそうに笑顔を浮かべるグラがそこに居る。
道行く人たちは、その様子を見てぐーっとお腹を空かせていく。
……確信はないが、【暴食】は周りを空腹状態に導くのではないだろうか。
幸せそうな姿、悪魔とは違う無邪気な天使のような姿が周りの視線を奪う。
「おいしーい! ごしゅじんさま、ぼく、幸せだよ!」
「そうかそうか、俺もそういってもらえると幸せになれるよ」
グラの表情は至福のもので、それを見た俺もまたついほっこりとしてしまう。
ただ食べるという行為だけで、人はここまで幸せになれるのだろうか。
「め、メルス様! お、俺にも頂けないですか!」「どうか、私にも!」「ち、チケットは無いですけど、それでも……!」
「チケットはいいさ。ソイツらの分が用意されていれば、問題ないんだからな。食べたい物はなんだ? ほら、言ってみろ……周りと協力して大量に作ってやる」
周りから歓声が上がる。
出店の店主たちも、腕を巻くって張り切り様子が見て取れた。
本来なら客を奪っただのと他の店と揉めるだろうが……そこは、この世界の素晴らしきクオリティ。
俺の生産技術が卓越していることは国民全員の知るところで、料理人として一度はコラボすることが誉れとされているほどだ。
なので、ただでさえ経費すべてを俺が補うこの期間中は、ほぼすべての店が俺の支配下に収まっていると言っても過言ではない。
「俺の声が聞こえている範囲の店だけで構わない! いっしょに料理を作る分のスペースの確保を頼む! 俺の店だけでカバーできない分は、そちらで調理したい!」
「メルス様と料理ができるぞ!」「す、すぐに場所を開けます……おい、早く綺麗にしないか!」「あわわ、ど、どうしよう……」
反応はそれぞれだが、スキルは使っていないのでそこまで声は響いていない。
祭りの雑多に呑まれ、近くの数店が呼応するだけに終わる……はずだった。
「おい! メルス様がテメェらの調理場を借りて料理をやりたいと言ってるぞ! 早く整えて迎える準備をしやがれ!」
「え゛? ちょ、ちょっと待っ──」
「なんだと? それならそうと早く言え!」「ちょ、ちょっと店仕舞いだ……代わりにメルス様の作った料理が食べられるんだ、誰も文句はないだろう!」「みんな、すぐにこのことを伝えて! 美味しい料理が待っているのよ!」
「えー……」
なんだか話が大事になってきたな。
全出店を使っての料理なんて、俺独りでできるわけないんだが……。
いや、できないわけじゃないんだけどさ。
少しやり方を変える必要がありそうだな。
「みんな! 食べたい料理がある店で待機してくれ! それぞれの店に一度だけ行って、人数分作る! もちろん、共有は構わないが並ぶのは一度だけだぞ!」
『はーい!』
それから俺は、休憩時間が終わるまでひたすら料理を行い続けた。
……そして、午後の部開始まであと僅かまで時間は進む。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
969
-
-
157
-
-
59
-
-
147
-
-
1168
-
-
127
-
-
17
-
-
1978
-
-
4
コメント