AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と終息報告
いずれは空中から魔物が飛来する、なんてエリアボスもありそうなので特に後悔も反省もしないんだけどな。
俺がやったのは、あくまで俺がやりたかったというのもあるし……。
クラーレの罪悪感もおそらくは、必死に陸で活動する者たちに対するものだろう。
時間が経てば、今の浮島に似たギルドハウスが生まれる……そうなれば解消されるのかもしれない。
「──はてさて、どうすることやら」
「どうかしたのかな?」
「いえ、お気になさらず。それよりもあれからどうなったかの情報をお願いします」
「ああ、そのために君を呼んだのだから」
渡しておいた連絡用の魔道具を介してサルワスの領主が俺を呼んできた。
用件はあの事件の終息についての報告。
せっかく町に居たので聞きに行ってみた。
「『天粉』と呼ばれた麻薬はすべてこちらで処分させてもらった。君の寄越された魔道具のお蔭で安全にできたよ」
「いえいえ、あれぐらいの物であればいくつか在庫がありましたので。ただ浄化してから燃やすのも水に流すのも大変だったでしょうし。これからも必要に応じてご使用していただければ幸いです」
「そうか……では、そのいうことにしておこうか」
箱の中に麻薬を入れると異空間でそれらを煙ごと燃やす、という魔道具を渡しておいたのだ。
外に麻薬の成分が漏れることはなく、入れたら最期何一つ残さない……証拠隠滅用の魔道具であった。
──精製の際に生じた有害ガスを、どうにかしようと考えた結果生まれた物だぞ。
「『青』のリーダーはどうですか?」
「特にこれまでと変わらない、そう笑いながら教えてくれたさ。町の治安は良くなり、無法者たちも一つに纏まりつつある。問題はまだいくつかあるが……それでも、これからの課題として一つ一つ成し得ていくつもりだ」
「そうですか、応援しています」
「さて、そこでだが……メルス君、いっそのこと君が領主を継いで──」
「お戯れを。というより、兼任はさすがに辛いですので。これでも本音を言えばあまり大きな活動はできない身でして……ひっそりと目立たないように動きたいのですよ」
あれから神殿には一度も向かっていない。
神殿に置かれた神像は、運営神たちの監視カメラの一つ──それに映ってしまえば、メルの身だろうとたぶんバレるだろう(リーンとルーンは除くものとする)。
領主を継ぐためには、神殿関係のお仕事も継がなければいけないということもなる……さすがにそれは御免被るからな。
「それよりも、祈念者に対する例のプランはどうなっていますか?」
「船、だったか……造船に関する知識を祈念者に教えること自体は、造船場の方と約束を取り付けた。ただ、条件として一定レベルの加工スキルがないと受け入れない、とも言われてしまったがな」
「祈念者は一人でも知れば全員に智を広める術がありますし……まあ、やってみてもらいましょうか」
「! そんなことが……ああ、すでに数人が向かったとされている。それがたしかなら、情報が広がり始めたという証拠になるか」
「木材の調達、頑張ってくださいね」
船ができるようになるのなら、プレイヤーは皆挙って木工スキルの上昇を図るだろう。
だがそんなことをすれば、木材が一気に減るわけで価格も高騰する……さぁ、商売の時がきたというわけだ。
「では次の話題を──例の物、用意の方はどうなっていますか?」
「それだったら……これだな」
「さすがですね。裏とも繋がりのある領主ともあれば、こうも容易く手に入れることができましたか」
「さすがに少し手を回したんだ……これがあれば、文句が出ることもないだろう」
「助かります。実際に使うのは私ではなく他の者になっていたでしょうし、揉め事を起こされるのも困るところでしたよ」
それぞれ用意した少し悪っぽいセリフを述べてから、一枚の札を受け渡す。
特に変な点もない名刺のような物だが、実は魔道具で魔力を籠めた時にホログラムが投影される仕組みなのだ。
俺はこれをある者に配り、この町で使用させる気でいた。
そうすることで手に入れられる、ある益が欲しかったからな。
「しかし……本当にこの程度の物でよかったのか? もう少し時間がくれたなら、丸ごと一つ用意することも可能だったんだが?」
「そこまで大きなことがしたいわけではありませんので。あくまで経験を積み、成長を促すためです。なんでもワンマンで行っていると下が育たないので……。私はできるだけ裏方に徹して、可能な限り委ねてみたいのですよ。金で経験は買えません、自ら動くことでそれを知ってもらいたいのです」
眷属にすべてを任せている今はワンマンではないんだが、眷属の自我に気づけなかった頃はよく独りでやることが多かったんだよ。
あの頃の反省を生かし、できるだけ任せることにした……パワハラと言われないように気をつけないと。
「なるほど、君の気持ちはよく分かった。彼の元へ次は回るのだろう?」
「ええ、そうですね」
「なら──これを持っていってはくれないだろうか? 君に先ほど口頭で伝えた物が記された書状だ。少し伝えたいこともあったんだが、連絡員がなかなか来なくてね」
「分かりました、お任せください」
それから『青』の船に向かい、書状を渡してから夢現空間へ戻る。
さて、アレはリョクにでも渡しておくか。
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