AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と青の組織
「──これで、何度目だろうか」
それは分かっている。
四度目の尋問を終え、ようやく黒幕っぽい組織の在り処を突き止めることに成功した。
町中を駆け巡り、元『暗殺者』兼『義賊』としての活動をエンジョイした。
「(リー、そっちに異常は?)」
《ありません。あ、ユラルの方から連絡がありまして──》
《騙された人は、全部捕まえたよー》
「(簡単なお仕事だな。そろそろ片が付くだろうし、縛って衛兵所の前にでも置いておいてくれると助かる)」
《承りー!》
町のどこかで、なんだか男の悲鳴が聞こえてくる……ユラル、いったい何をした。
そこに構うのももう飽きたので、一番最後に突き止めた組織の根城に向かう。
これまでの組織はだいたい倉庫を借りているのが定番だったが、ようやくそれ以外の建物になった。
「船なら……まあ、移動するからな」
それってもう、海賊じゃね? とも思ったが、別に海賊を名乗ったわけでも『ヤ』の付くご職業と言われてわけでもないと気づいたのでとりあえずスルーだ。
二本のマストにそれぞれ一枚の帆が張られている仕様だが、さすがにそこにも旗にも髑髏は描かれていない。
描けば自分たちがそういうことをしています、と周りに表明するようなもんだしな。
だが、小さく暗号のようなサインが書かれているので、分かる人には分かる船になっているようだ。
「船梯子はかかってないし、乗り込むのも一苦労しそうだな。はてさて、どうやって行くことにしますか」
遠くから『眼』を行使して、何も考えることもなく俺は消えた。
◆ □ ◆ □ ◆
「何者だ!」
「ただの偽善者ですよ」
──そして、転移眼の力で移動する。
挨拶が雑になっているのは、このパターンが五度目だからである……いや、入り口と中で別々にやっているので、九度目か。
リープに【怠惰】を任せていようと、さすがにこれには飽きが感じられるよ。
せっかくのリーとのデートが、まさかこんな形でおっさんたちとの戦争になるとは。
「『海激団』、『嵐の海蛇』、『蒼雷組』、『海魔の巣窟』……これに聞き覚えは?」
「…………知らねぇな」
「嘘を吐くな、『青』。無駄に凝った名前を付けておいて、一番最後がシンプルすぎるってどういう領分だ」
「それこそ知らねぇよ!」
いやいや、自分たちの所属している組だろうに……。
実際、鑑定眼で視てみれば『所属:青』の奴だって分かるし。
そうやって甲板に居た男と揉めていると、当然仲間が集まってくる。
そして、お目当ての人物が──
「何事ですか、騒がしい」
「あっ、ボス!」
「やれやれ、こんな場所にまでネズミが入り込んでいるとは。早く追いだしなさ──」
「ああ、もうそういう臭い芝居もしなくていいから。早く本物を出してくれ」
『っ……!』
来なかった。
一瞬来たかと思ったんだが、視てみれば影武者だという落ち。
ここまで用意周到にしていると、なかなか豆な奴だと感心したくなる。
「お前らの船長は、この下の牢屋の中で被害者面をしている奴なんだろ? 囚われていれば、誰もソイツが悪とも思えない」
「な、なぜそれを……」
「すべて、『眼』が語っていたのさ」
はい、鑑定眼のお蔭です。
倉庫を覗いた要領で透視を行い、船の中に居るヤツは全て鑑定してある。
なので、『青頭領』といういかにもな肩書きの持ち主がそこにいるのも、予め収集済みの情報だったのだ。
「もう一度言うぞ、ボスを出せ」
「……分かった」
先ほどボスを演じていた男──副船長がそう言って檻のある場所へ向かう。
何かいいアイデアでも持っているのか?
待つこと数分、男がボスだと視ている男を連れてきた。
服装は偽装のためにボロボロだが、瞳だけは真っ直ぐな意志を感じさせる光を放つ。
理知的なその男は、俺の挙動の一つ一つを観察するように捉えながら、軽く頷いて話を始める。
「初めまして……偽善者さん。私が青のリーダーである男です」
「こちらこそ、初めまして。──単刀直入に言いますが、私は別にこれまでに探って来た場所すべてにおいて、一人たりとも殺していません」
「なるほど、そうですか……もともとは、か弱い女性のために動いた正義漢を謳っていたそうですが……存外、食えないお方なようですね」
「いえいえ。赤い海で泳ぐよりも、金色の海で泳ぎたい……ただそれだけのことです」
少し目がピクッとする青のリーダー。
どっちの色に反応したかは分からないが、できれば後者であってほしいな。
「私もできれば、黄金色の海を自由に航海してみたいものですが……祈念者たちの来訪によって、時代は大きく変化しましてね」
「なるほど。『天粉』は、以降に売り出した物なのですか?」
「お恥ずかしいですが。祈念者の方に頂いた物を、私たちで売っております。早く断ち切ろうとは思っていても、なかなか海が満ちることがなくて……」
「それはお厳しい。よければ、私にご協力願えませんか?」
「……どういった意味で?」
なんてことはない、原因さえ分かれば特定もすぐに済む。
俺は町の清掃をすぐに始め、粉で汚れたモノを綺麗にしていく。
途中で粉の原料を見つけたので、業者に依頼して回収してもらった。
これで、町の平穏もしばらくすれば元に戻るだろう。
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