AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とムルゥの森 中篇
「戦闘はまだまだ続いています。二段進化の魔物たちを倒した彼女たちは三段進化──つまり、オーガキングなどの魔物たちと戦闘を行っています」
ここら辺になってくると、数が減ってくる代わりに質が異常に高くなるので苦戦する。
やはり知性があったのか、九体の三段進化後の魔物たちは、観察した彼女たちの動きですでに戦い方を決めているようだ。
「九体の魔物、そのほとんどが配下を召喚するスキルを有しています。自分たちは配下を召喚して隙を作り、比較的に弱く見える者から狙っているようです」
俺もまた、逃げだした配下を殺していくという仕事が頭の中で追加注文される。
本当に敵意がなく、王の命令にも従わない魔物ではあるが──その異端の魔物が逃げ出した後で何をするのか……その責任が取れないので殺す。
そうした禍根を削ぐのもまた、偽善の一種だと踏ん切りをつけた。
「狙われているのはクラーレ。そもそも魔法による補助は彼女がやっていますし、隠蔽スキルも相当なものになっているので気づけていないのでしょう」
攻撃の集中度が、盾役であるディオンが最も高いと一見見えるようにして、実際にはクラーレが襲われることがよくよく見れば多いという状況に陥っている。
ほとんどの場合はディオンのスキルに引きつけられるのだが、時折それに惑わされず一目散にクラーレを狙う個体がいる。
まあ、それも結局はシガンやコパンによって倒されるわけなんだが。
「九体の魔物の内、二段進化の魔物を召喚できるのは二体。彼女たちは、その魔物を率先して倒そうとしますが……その目論見は当然相手にも悟られ、事態は膠着状態に陥っております」
一瞬でも隙が生まれれば、どちらかが大きく動き、戦いに変動が起きる──そう思えるほどに進んでいないのだ。
相手が配下を召喚し、一掃される。
彼女たちが攻撃し、防がれる。
アイテムで魔力などを回復し、再び召喚が行われる。
ずっと繰り返される無限のサイクル、そろそろ変化が欲しいのは俺も──向こうのボスも同じみたいだ。
「ますたーたちー、ファイトー!」
「奴らを──いや、早くあの小娘を殺せ!」
やけに饒舌な命令で告げたのは、クラーレではなく俺の殺害。
まあ、ボス直々に召喚した暗殺系の魔物を殺し続ければそうなるか。
いちおう彼女たちのほとんどが分からないように魔物の言語で告げていたが、残念なことに:言の葉:を持つ俺に聞き取れない言語など存在しないのだ。
一瞬助けを求めようとも思ったが、まあ誰も気づいてないし大丈夫か。
九体の魔物も彼女たちとの戦闘で手一杯の状態で、わざわざこっちに来て俺と戦う余裕もない。
配下を召喚して、こっちに少し送ってくるぐらいのことしかできていないしな。
「ここで、相手の種族についてご説明を。現在残っている十体の魔物、その内三体ずつがゴブリン・コボルト・オークの系統に連なる魔物となっています。残りの一体がボスなんですが、どうやら魔人族の者のようですね」
ゴブリン系はオーガチャンピオン、オーガハイソーサラー、オーガシーフマスター。
コボルト系はルーガルーウィザード、ルーガルーアルケミスト、ルーガルーハイプリースト。
オーク系はグレートオークジェネラル、グレートオークソードマスター、グレートオークテイマー。
最初の方にいたこの三種以外の魔物は、まあオークテイマー使役して無理矢理連れてきたんだろうな。
「おっと、状況が大きく変化しました。どうやらシガンの未来先撃の効果が、オーガシーフマスターとオークテイマーを倒しました。これにより、状況はクラーレたちに有利なものになっていきます」
魔人さんもビックリ、なんせ見えない斬撃が突然二体を両断したんだからな。
感知能力に長けたオーガシーフマスターすらも騙す隠蔽力、シガンはいったい特訓の間に何を会得したんだか。
「着々と魔物の数は減り、現在オーガチャンピオンとグレートオークソードマスターが討伐されました。逃げ出そうとアイテムを探したルーガルーアルケミストもまた、クラーレが伸ばした棒に心臓を貫かれて死にました」
まだ第二進化済みの魔物を召喚する魔物は討伐されていないが、それでも数が減るごとに召喚される配下の最大するも減少するため有利に事が運ぶ。
魔物の統率はグレートオークジェネラルが行っているので、それを倒せればもっと有利になるんだが……さすがにそこが分水嶺だと理解しているのか、違和感のないように周りに防壁を築き始める。
「詠唱を行っていたオーガハイソーサラーとルーガルーウィザード、双方が力を合わせて発動した合体詠唱。発動する魔法が何倍にも強化される詠唱法ですが……せっかくの一撃も、魔壊士であるコパンによって、全て粉々に破壊されました。愕然とする二体の隙を突くように、ノエルが暗殺を行って倒します」
残った強い魔物は、グレートオークジェネラルと魔人のみである。
片や次は自分かと怯え、片や情けない配下に身を震わせていた。
──そして、ついに魔人が動き出す。
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