AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と白の魔本



 召喚属性。
 時属性と空間属性、その二つが合わさった時空属性が変質した生まれた特殊属性。

 それらを扱うことができる『召喚士』と呼ばれる者たちの中でも、魔法として力を昇華させる者がいる。
 彼らが使うその魔法こそ──召喚魔法だ。

 自分とは異なる存在と契約し、その力を借り受けて戦うことが主な使用法である。
 ただ異なる場所から対象を呼びだすものもあるが──AFOにおいて主な召喚魔法は契約を交わすものなので、この場では説明を控えておこう。


 召喚士と契約したものは、広義的に召喚獣と呼ばれる。
 召喚士の魔力を魂に刻み、召喚士の呼びかけに応じていつでも馳せ参ずる使い魔。

 魔物も精霊も天使も……人も神も、力ある召喚士であるならば契約が可能である。
 ただし、自身の器に合わない質や数の召喚獣との契約はできない。 

 それは召喚獣だけに頼らず、己の器を育てなければ不可能だ。
 ……さらに捕捉すれば外部装置で契約することも可能だが、その場合は召喚獣が成長しないのでまた割愛する。


 召喚獣は普通に成長することもできるが、召喚士の獲得した経験値でも成長する。
 それは、魔力を介して繋がっているため、召喚士の吸収した経験値が一部送られるからである。


 召喚獣は戦闘に出し、戦うこともできる。
 途中で死んだ場合も、時間が経つと再び召喚できるようになる。

 召喚獣となった時点で体の一部が変質し、召喚士の魔力があれば蘇る存在になっているからだ。
 そうした生死の法則を書き換える才能的な面でも、召喚士は特別な職業なのである。

『召喚士と召喚魔法──その特殊性より見出される可能性』より抜粋


  ◆   □   ◆   □   ◆


 赤色の世界


 再び遊びに来た灼熱の炎海。
 俺はついさっきまで、召喚士と召喚獣についてクーに熱く語っていた。


「――特に意味はない。ただなんとなく、言いたかっただけだ」

《それで、召喚獣を探すの?》

「大半は召喚嫁だけどな。まあ、イアの分の魔導書もできたし、召喚士として活動するのも楽しそうだなって」


 イアには作れないと言ったが、実は魔本はもう一冊存在していた。

 前にこの場所でランダム召喚をし、アマルが出たのをきっかけに作っていた白い魔本。
 ――眷属の召喚陣だけを記した魔本『イステクリスィ』があるのだ(これも造語だ)。

 これは作り方が全く異なる、完全に俺仕様の魔本だったので説明しなかった。
 眷属に機能をしっかりと確認してもらいながら作成したので、まさに眷属公認のハーレムリストとも言える(一部除く)。

 言った通り、魔導書は完成している。
 というか、その日の内に求められる品質を超えた魔導書自体は作れた。
 ただ、機能性を求めていたら少々時間をかけてしまったけど。


《ふーん、それでどういう風に活動する予定なの?》

「放置していたヤツと契約して、またアッチの世界で召喚獣を探してみるさ」

《……ああ、あれね。前に来たときまったく絡まなかったのって、メルスが忘れてたからじゃないんだ》

「…………よし、それじゃあ行こうか」


 居場所は分からんが、それを見つけるのも旅の一環だろう。
 適当な冒険が、再び幕を開けた。



 まあ、当然見つからないが。
 探す方法もあるにはあるが、それをしたらなんか負けな気がするので使わない。

 そうなると、結局暇になる。
 なので一度国へ向かい、情報収集を行うことにした。


「やあ、今日も建国してますか?」

「おや? 誰かと思えば放蕩王ではないか。今さら何をしに来た」

「……厳しいですね。こちらもこちらで、やることがたくさんあるのですよ」


 アポを重ね、辿り着いた『姫将軍』の所でこんなやり取りがあった。
 俺自身がこの場所に来るのは久しぶりなので、彼女の言い分も分からなくはない。

 ──だがしかし、なぜに放蕩王なんだ。

 自分で言うのは良いが、他者に言われると心が痛いな。


「命令ならしたじゃないですか。『私がいなくとも私の願いを叶えてくれ』と」

「すでに私たちは貴公の奴隷でない。ならばその命令を聞き入れる必要も、無くなったというわけだ」

「……ま、それもそうですね」


 俺が言わずとも、いつかは建国してくれたと思うしな。
 彼女は亡国の姫、元配下の者も一緒に落札していたので、そうなることは眼で視なくとも見えた未来だ。


「国の状況は後で配下の者を通じて訊くとしますが、今回私がこの場所を訪れた目的を果たすことにしましょう」

「……訊かせてもらう」」

「聖炎龍、この言葉に心当たりは?」

「あるに決まっているだろう。この世界の生命を守る聖龍だ。……そして、私たちの国を救わなかった恨むべき龍なのだろう」

「おや? その様子では恨んでいないようですね」


 本人の中で、納得し終えているのだろう。
 言い方は悪いが、表情から嫌悪などの感情は読み取れない。


「救うのは生命であって、私たちの国では無かっただけだ。大衆を救うため、個人を斬り捨てる国の有り様と同じだな」

「――そして個人を救うのが、偽善者の役目ですよ。カカ教では、他者を見捨てず人に施しを与えることが教義。本人が望んでいようと望まずとも、善行によって救いへ導く……まさに、偽善です」

「己の信ずる神であるというのに……貴公もずいぶんな物言いだな」

「カカ様は、心が広いお方ですから」


 そう言って、笑う『姫将軍』に微笑む。
 この後聖炎龍の居場所を確認し、ため息を吐いてからこの国を去る。

 まあ、ある意味当然だったな。



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