AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と特訓放置



 第四世界 闘王技場

 次の日もまだまだ特訓は続く。
 だが、今回は俺がメインではなかった。


「さぁ、早く教えてください」

「へいへい、分かりましたよお嬢様」


 闘技場には六人の少女、地形設定を変更して密林に集まっている。今回は『月の乙女』へスキルの効率的な成長方法を教えることになったのだ。


「早い話、隠れればいいんんだよ。隠れる相手が強ければ強い程、成長度は高い。――それじゃあ、さっそく始めようか」


 各々が自分の考えたベストな隠れ場所に潜み始める。(隠蔽)や(潜伏)、(同化)や(偽装)などのスキルを持つ者は少しは上手く隠れられているのだが、それを習得していない少女たちはすぐに見つけられてしまう。


「それじゃあ、弱めの威圧を放つけど怯えずに耐えてくれよー。必死に隠れようとすればスキルは成長するし発現しやすくなるから」


 体に何重もの制限をかけ、彼女たちがギリギリ耐えられる程度のステータスに調整してから――複数の威圧能力を放つ。


(――“不明アンノウンの威圧《プレッシャー》”)


 瞬間、少女たちがビクッと肩を震わせるのが感じ取れる。俺のスキルって、だいたい強すぎるせいか付加効果が異常なヤツが多いからな。
 その分耐えられれば普通にこの方法でかくれんぼでもやるより成長が見込めるんだが。



 しばらく威圧を放ち続けると、ダンジョンの外から物凄い勢いで移動してくる気配を感じ取った。


「……ん? この反応h――」

「師匠! 何をしてるの!?」

「ユウか。隠蔽系スキルのレベリングをやっていたところだ。……って、どうした急に」


 現れたのはポジティブ少女、ユウである。
 最初はニコニコとしていたのだが、やっていることを説明すると顔をモチのように膨らませていった……いや、三にそんな顔されてもな。補正があるから可愛いとは思うが。


「……誰と?」

「誰って…………俺のご主人様?」

「ご、ご主人様だって!?」

「いろいろあってな……もう、自由じゃいられないんだよ」


 ユウもイアから説明されていると思うし、ここはこういう風に言っておこう。あの後追加の霊呪(デザイン変更版)を渡してあるのでクラーレがマスターであることは事実だし。


「い、いったい誰が師匠をそんなことに……今、この場所にいるんだよね?」

「そりゃあいるけど……なんで剣を抜く?」

「当然、師匠のご主人様に値するか、弟子である僕が調べてあげようと思って」

「…………よし、じゃあ任せた。今は俺が威圧で押さえているけど、この後いなくなったら効果を消す。そしたらユウ、お前が代わりに威圧を放ってくれ。耐えられたらユウの負け、耐えられなかったらユウの勝ちだ」


 俺がやる場合、半ば気づいてしまっているので効果が薄いかもしれない。
 それならば、本気で相手を見つけ出そうとする者に探させた方がどっちにとっても益が出るだろう。
 と、いうことでユウに任せて俺は眷属としばらくイチャイチャすることにした。
 ……メンドウジャナインダヨ。


「師匠! リミッターの解放は?」

「駄目駄目。眷属じゃなくて主人様なんだ、強化してないの。今のままで、探すのも修業だと思ってやりな」

「わっかりました!」


 そして、本当にユウとクラーレたちを残してこの場から去る。たぶんすぐに見つかると思うが、その間にかなりレベルは上がるだろうし……ま、あとは任せておこう。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 夢現空間 図書館

「……それで、結局サボったんですか。メルスさん、人が教えを乞うているのにその態度は失礼だと思いますよ」

「サボったとは失礼な。適切な人材を、適切な場所に送り込んだと言ってくれ」

「それを人に押しつけると言うのです」


 図書館で本を読み漁って時間を潰そうとしていたら、ちょうどリュシルを見つけた。
 何をしているかと聞かれたのでこれまでのことを説明して――今に至ると。


創造者クリエイター、スキルの成長など一度共有させれば簡単なのでは?』

「いや、それでもできるけどさ。眷属じゃない奴には俺を介させるか装備を渡さないと駄目だし……どちらにせよメリットが無い。俺が本当に大切にしてるのは眷属だけだし」


 [眷軍強化]を使うのも、(超級隠蔽)の効果付きの装備を渡すのも構わない。
 だが、それをして成長を見込めるのか?
 眷属化なら……まあ成長するだろうが。

 だが、プレイヤーを眷属にするのは不味いとGMたちに言われてしまっている。俺の支配下に入ってしまい下手をすればバレて世界から追放――まあ、ゲーム風に言えば垢バンされてしまう。
 今までのプレイヤー眷属はリオンが隠してくれているのでバレていない。だが、人数を増やせばそれだけリオンに負担がかかってしまう……うん、無しだな。

 まあ、リオン曰く休眠中の神に力を貸してもらえば、もう少し人数を足せると言っていたけどな。AFOの世界で不活性化している神を見つけたことは一度も無いんだが……そういえば、どこにいるんだろう。


「……ん、どうしたんだ二人共?」


 最初から顔は赤かったのだが、そこはそのままスルーしていた。だが指摘しないのもそろそろ悪い気がしてきたので、確認する。


「えっと、その……メルスさん。少し、お願いがあるんですけど……」
「開発者共々、ご相談が……」

「……ん? どうした? 俺にできることなら、R18なこと以外なんでもするぞ」

「ししし、しませんよあんなこと! そそ、それよりちゃんと話があるんです!」


 リュシルの顔の色が真っ赤になったが……うん、女性にそういう話は駄目だったな。
 後ろでヤレヤレ、といわんばかりに肩を竦めているマシューには気付いていないさ。

 ちなみに、リュシルの話は本当に真面目なものであったと記しておこう。それが本当にこの場で最初から言いたかったことか……そこは定かではない。



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