AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と水着イベント後半戦 その18
「(――うん、どうでもいい。いっそのこと、偽善者を廃業して破壊神でも目指そっか)」
《えっと、どうやったらそんな考えに行き着くのか……教えてほしいかな》
目を凝らせば満天の星空、耳を澄ませば弾ける火花、鼻を利かせれば海幸山幸が焼ける匂いが吸い込まれる。
プレイヤーたちの戦いは終わり、今は各自持ち寄った素材を使って宴会を行っている。
踊りや歌、大道芸を行う者や、従魔と共に技を披露する者も。
魅せるように料理を行い、巨大な鯨を捌き切る者も。
炸裂する魔法を上空に放ち、擬似的な花火として披露する者もいた。
現実では困難なことであろうとも、こちらの世界ならば可能である。
キャンプファイヤーで騒げばとある聖職者が聖火を灯してしまい、死霊系の種族のプレイヤーが死に戻りを起こすこともあった。
特大花火を打ち上げれば火花にダメージ判定が付いてしまい、近くに居た数人が死に戻りを行うこともあった。
新鮮な料理を提供されればあまりの新鮮さ故、食中毒を起こして死に戻る者もいた。
……よく見れば死んでばっかりだったが、それでも楽しそうな光景が感じ取れたんだ。
そんな場所から少し離れた空の上、闇に紛れたまま俺は念話で語る。
「(結局さ、俺がハーレムを増やせば守る範囲は増えるんだし、偽善をやろうと思えば可能な限り目に入る奴を救う必要があるよな。
だけど、それ自体に俺が悩ませれる必要はないんだし……もう世界を破壊した方が早くないか? そうすれば暴走する運営神も裏で暗躍する奴らも全部纏めていなくなる。残るのは、俺の求めた理想郷だけだ)」
《……じょ、冗談だよね? メルメル、自分が本気でできるからって、わたしをからかってるんだよね?》
「(まずは何処から壊そうか……<次元魔法>とか<虚空魔法>を使えば、大陸ぐらい簡単に破壊できるし。俺の魔力全部を引き換えに自爆でもいいかな? あれなら多分世界の半分ぐらい死の砂漠に変えられそうだよ)」
《ちょ、メルメル!》
「(…………ん? あ、冗談冗談! 冗談に決まってるじゃないか!)」
おっと、敢えて描写しなかったリア充共の行動に、ついブラックなことを考えていたようだな。
チッ、アイツら。
宴会場から外れた砂浜でイチャイチャしやがって……。
一々自慢したいのか? そんな行為はギルドホームの中でやれよ。
《だ、だよね! うんうん、メルメルもさすがにそんなことしないよね!!》
「(ま、偽善は止められないからこれからも続けるってのが俺の答えだな。救えない奴に関しては割り切っていくことにした。今までも何人かは諦めらめたり見捨ててたりしてたんだし、なんかもう今更だったと気付いたよ)」
ちなみにぶっちゃけちゃうと、考えるのが【怠惰】になったから思考を止めた。
停滞するのはもうやめだ、とかいう必要もないし、自分の中に渦巻く{感情}のままに動くのが一番だと考えることにしたんだ。
さて、話を切り替えて未来のことを語る。
「(……そういえば、フーカたちってこっちの方には来れないのか? いつか眷属たちと顔合わせでもと思ってたんだが)」
《うん。わたしたちは、あくまでこの世界を運営していくための補助装置。それに会話機能が付いただけの存在なんだよ。だから、装置が仕事場から出るワケにもいかないし、そもそも出られないようにされてる……って、どうしたの? メルメル》
「(いや、やっぱり世界を滅ぼせばお前らも自由になるんじゃないかな~って思っただけだから。あ、少し上司が減るだけだから、特に気にしなくても良いぞ)」
《待って! 本当に待って! リベリオン様が残ってくれるから多分どうにかなるけど、それでもかなり不味くなっちゃうから!!》
……ふむ、確かに仕事の方が増えるか。
彼女たちに黒い会社で務めてほしいわけでもないし、無理矢理滅ぼす方向はキャンセルにしておこう。
「(ならせめて、裏技的な物は? 前にレイがこっちに来れたんだし、一応はあるんじゃないか?)」
《うーん……。あれは時間制限があるから、あんまり現実的な方法じゃないよ。時間を加速させても居られる時間は変わらないし、出られるイベントを創った方がまだ簡単じゃないかな?》
「(そっか、無いなら創ればいいのか……っておい、そんな簡単にイベントって創れちゃうものじゃないだろ)」
GMが干渉してくるイベントって……あんまり面白くなさそうだな。
ま、縛りぐらいしてくるんだろうが、結局プレイヤーが敵う相手じゃないだろうし。
「(……いづれ方法は考えるか。フーカ、今回のイベントで俺は一つ学んだ)」
《ん? 何を学んだの?》
「(どれだけ願おうと時間が過ぎていき、いつか俺には選ばなければいけない時が来るってことだ)」
《それって、つまり……》
「(ああ、そういうことだ)」
遠い眼をして、上を仰ぐように眺める。
そうなることもまた、必然だったのかも知れない。
これは全て、俺が選択を誤ってきたからこそであり、望むままに動いていたら変わっていたのかも知れない。
しかし、現実に反映される事実はたった一つ、『もしも』の世界も『If』も『√』もありはしない。
唯一無二の世界で生きるからには、選ばなければならないのだ。
「(俺は――もっと眷属とイチャイチャすることにした!)」
そう念話の中で叫んだ俺の足元には、眩く光る魔方陣が展開していた。
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