AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と大会予選 その01



 当然だが、運営に身バレすることを避けるために、俺(……と言うよりメルス)は限り無く隠密行動をするように心掛けている。
 なのに、『模倣者』が参加表明? するわけねぇだろうが!
 どこのどいつだ、そんなことをする奴は。

 これが運営の用意した、コピー版の俺ならまだ良かった。
 実力試し用ぐらいであれば、まぁ今のプレイヤーでも倒せるだろうし。

 しかし、これがプレイヤーの仕業となると話が変わる。
 『模倣者』を名乗ると言うことはつまり、(少なくとも外面は)コピーに近しい能力を有しているということだ。
 俺は{感情}があるから、【固有】を増やしても精神にあまり変化は無かった……が、もしその偽者も同様に、能力のコピーができてしまったら。


「止めるしかないな……偽善者として、な」


 そんなワケで、俺もソイツの正体を暴いてスキルを封印するために参加しようと思う。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『――はい、登録完了しましたよ。これが貴方の参加者としての証ですから、忘れないで手首に付けてくださいね。魔道具だから、サイズは自動調整よ』

「うん、ありがとうございます」

『平気よ。――次の方、どうぞ』


 あれから少しの時が経ち、気が付けば闘技大会の予選開始日となっていた。
 身分を証明すればいきなり本選に出ることも可能だが、あくまで隠密が第一なので控えておいた。
 今は変身した姿で活動中だ。


「(これが参加証ね~、(鑑定眼)……へ~、そういう機能があるってことは、まぁ予選はそうなるのか。当然と言えば当然か)」

《おっ、どういう風にやるんだい?》


 今日の監視役はチャル、なので会話は基本的に彼女と行う。
 今回はイベントなので、誰が必要になるか分からない。
 そのため、監視自体は全員でしているぞ。


「(そうだな……後から使ったスキルや魔法の効果は一切受けず、装備者の魔力をほんの少しだけ使って登録。装備者が無意識でスキルや魔法を当てても問題無いが、同じ参加証を付けている者から攻撃を受けると即座に破壊されて大会本部に伝わる。こんな物がいっぱいあったらどうなると思う?)」

《……ふーん、そういうこと》


◆   □   ◆   □   ◆


『さぁ、始まりました第二回闘技大会予選の部。いよいよ開幕となります!』


 その宣言に、今まで面倒な式典を耐え続けたプレイヤーたちは叫びを上げる。
 炎天下で立ったまま聞く、校長の話ぐらい面倒だったぞ。
 エントリー順で並んでいるんだが、どうにも周りが男ばかりでさ……ヤバかった。

 参加者は約200名、この街に来れる実力のあるプレイヤーが揃っている。
 参加条件は無いが、暗黙の了解ってヤツだよな。
 そうして集まった強者たちが、待ち侘びたこの瞬間を歓迎している。
 こっそり感知を行ってみると、色々と面倒そうな奴らも発見できてしまった。
 ……ハァ、一度も会わない方が楽だな。
 もしバレたら、面倒事を押し付けようか。

 そんなことを思っている間に、宣言を発した実況は説明を続けていた。


『――と、言うことですので、今から参加証が四色の内のどれかに変化します。その色に対応する闘技場に、移動してくださいね。そこで五十人ずつに分かれて予選を行います』


 プグナの闘技場はメインとなる百人いても大丈夫な大闘技場が一つと、五十人ぐらいイケる中闘技場が四つで構成されている。
 大闘技場は今俺達が集まっている場所なので、今からそれぞれの場所中闘技場で選別が行われるのだ。


「俺の色は……赤か。なら、闘技場はこっちの方か」


 俺の参加証は赤色に発光していた。
 周囲を見渡してみると、他には青や黄色や白で参加証は光っていた……4Kかよ。

 指定された色の中闘技場に向かい、そこで身を隠しながらスタートの時間を待つ。
 隠蔽は強過ぎず弱過ぎず、程々の力で掛けていたのだが……やっぱり全力でやった方がよかったのだろう。

 ――お蔭で面倒そうな奴に出会った。


『やぁ、君も面倒な闘いは嫌なのかい?』


 俺の目を見てそう話す男は、やけに鼻に付く声色で話しかけてきた。
 物凄く、イケメンなフェイスの持ち主。しかも違和感が無いので恐らく自前の物……クソッ、これだけで俺はこいつを死に戻りさせる理由ができた!


「え? ど、どうして気付いたんですか!?」

『おっと、それはまだ秘密だよ。まだ敵になるかも分からない人に、おいそれと情報を教えるワケにはいかないからね。――それよりも、もしよければ同盟を組まないかい?』

「ど、同盟……?」


 急展開だなー。
 この予選では、各会場ごとに四人の突破者が出る。
 本選から出場する十六人と合わせ、計三十二人による闘技大会となるのだ。
 だから、別にコイツが言っている同盟におかしな点は無い。無いんだが……。


『そうさ、この会場には二つ名持ちのプレイヤーもいる。普通にやっていれば、彼らが予選を突破することになるだろう。でも、君が隠れて彼らの参加証をこっそり破壊してくれれば……君は予選を突破できる』

「で、でもそれなら同盟を組む理由は――」

『あるさ。僕には君を探し出せるスキルが有る。だからこそ、君と力を合わせれば、隙を作り出すことも可能なんだ』


 俺の予想通り、破壊されたら退場がルールだったな。
 だからコイツは、俺を暗躍させようとしている。
 うーん……別にそれだけなら構わないんだけどさ。どうにも嫌な予感がするんだよな。


《アンタは一体、どうするんだ?》

「(そうだなー、なら俺は……)――――!」


 そして、暫くしてアナウンスが再び周囲に響き渡る。



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