AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と大神



 男がこの場を去った後、再びフェニとの会話を行う。


「(……アレはもう、魔剣になるよな)」

《あの者の目は濁っていた、聖人に足り得るとは思えないぞ》

「(魔剣にも怨念型のヤツはあるけど、普通に力を追い求めたヤツもあるしな。確かに聖剣にはなれないと思うが……武具っ娘達の劣化版ぐらいになら昇華できそうじゃないか?)」


 強い意志が力を生む。
 物語でもよくあるパターンだが……俺自身がそれを行うことはほぼ不可能だ。
 武具っ娘を介せば少しだけ可能だが、その力のイメージは武具っ娘メインで生み出されることになる。
 ま、俺の考えの大半が仮初のものだから、なんだけどな。

 別に深刻な話じゃない。
 俺と言う人間の意志が薄っぺらいだけだ。
 日本人は主体性に欠けると言うが、俺のように適当に生きてきた『人生快楽刹那主義』に未来を思うことなんて無い。
 その日その日をのらりくらりで生きているだけで充分だろう。

 偶に思考に【矛盾】が生じる俺だが、核となる部分は変わっていない。
 家族のための行動を行う意思と、偽善者としての矜持……まぁ、これぐらいは変わらないんだろうな。


「(さて、初めて商品が誰かの元に渡ったんだし、今日はもっと客が来るんじゃないか!?)」

《……いや、それは無いと思うぞ》


 ――結局、この日は他に客が来ることは無かった。
 うん、男との邂逅が楽しかったから今日は良しとしますか。


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夢現空間 居間


「結局さ、現実の俺と今の俺に違いはあるんだよな。【固有】スキルによる干渉は無いんだけど、始めから俺の中にある{感情}は正体不明だしさ」

『そちのソレは、こちらが用意した物では無い。それは説明したのだ』

「いや、分かってるんだけどさ。■■■とか言う神なんだろうけど……心当たりは?」

『確か……感情を司る大神様がいたのだ。ソチがそのお方に目を付けられていたならば、もしかしたらということもあるのだ』

「へ~、感情の神様ね」


 それはそれで、凄そうだな。
 人は感情と言う物を必ず持って生まれる。
 人生を歩んでいくと、その形は人それぞれに変貌していく。
 つまり、それら全てを司るということは、ほぼ何でもできる万能な神様だということでもあるのだ。
 どんなことであろうとも、人の行動には感情が伴う。
 【嫉妬】を抱き人を殺し、【慈愛】を願い人々を救う。
 生にも死にも感情は関わっているのだ。

 しかし、大神とな? まだ上の存在が神にはあるんだな。
 見習い、下級、中級、上級、そして大神。
 リオンと関わった影響か、俺は既に『上級神』の称号を得ている。
 ……それでもまだまだ上があるのか。


「名前は分かるのか?」

『少なくとも、われは知らないのだ。大神様はここだけでなく全世界に関わる神なのだ。その情報は創造神にのみ伝えられ、他の者には一切合切秘匿されるのだ』

「全世界? ……地球にもか?」

『当然なのだ。感情はどの世界でも抱くことができるのだ』


 感情の神はいない。
 地球ではそういう考えが持たれている。
 神には善悪や聖邪、正しいか間違いかどうかを判断できない。
 ただただ予め定められた決まりに従って、裁定を下すのが神という考えだ。

 こちらの世界の神には、自我が存在する。
 自身の司る権能をベースとして、人々が思う理想の神として具現化している。
 これは神が身近に感じられるかどうかの問題だから、少し置いておくとしよう。

 だが、実際にはいたらしい。
 大神と言うのだから、恐らく世界でも有名な天空神ゼウスや、太陽神天照大神のよりも上位に位置しているのかもな。

 本当に位の高い存在は秘匿される。
 表の代表を、日本の場合天皇や総理大臣と例えるならば……裏の代表はどこかの富豪だろうか。

 一般ピーポーには分からないので信憑性は皆無だが、要するに凄い奴は都市伝説のような存在になっていると言うことだ。


「ま、なんか話がだいぶ逸れている気がしてきた。とりあえず戻すぞ。俺の自己矛盾は一応自分の中で済んでいるんだけど、それもその{感情}の所為か?」

『大神様の権能ならば、人一人の支配など容易いのだ。だが、それをわざわざそちにする理由が分からないのだ』

「そうなんだよな~。前は神が暇を潰すために、俺を実験材料にでもしたんだと思っていたんだが、さすがにそれは違うように思えてきたよ。こっちの神様、大体休憩中だろ?」

『神髄をやられたからなのだ。いずれ信仰心が高まれば勝手に起きるのだ。……それに、ソチもその手伝いをしているのだ』

「え? 手伝いなんかしてたか?」

『神から祝福を授かった者は、ある意味でその神の使いとなるのだ。要するに加護を受けた者が有名になれば、神もまた信仰力を貰えると言うことなのだ。そちの場合もそれは同様で、少しずつ神は活性化しているのだ』


 ……衝撃の事実! と言うワケでも無いけど、上手く考えたものだな。
 加護を貰えた者はそれを有効に使えるし、与えた神はソイツの功績を利用できるというWinWinな関係だ。


「なら、俺ももう少しビックネームになった方が良いのかな?」

『いや、大本であるシーバラスをどうにかしない限り、復活しようともバレたら再び叩きのめされるだけなのだ』

「ふーん、じゃあバレないように復活させられないかを考えておくか」


 いつか必要な時に力になってくれるかも知れないしな。
 眷属たちに連絡して、そこら辺も思案してもらおうか。



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