AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と赤色の世界 その04



 辿り着いた空白地帯の中心とも呼べる地。
 最も魔力がわだかまるその場所には、炎の海とは異なる物が一つだけ存在していた。


「……おぉ、The・封印って感じだな」


 何重にも張られた結界の先、海と水平に置かれた扉が設置されている。
 そこにもまた、高度且つ複雑な術式が施されており、それをどれだけ厳重に封じ込めたかが分かってくるな。

 こうした封印を見た時、人は幾つかの選択肢から行動を取る――

・見て見ぬふりをして忘れる
・開けてみようと四苦八苦する
・その他(中身だけ取り出す、破壊する等)

 まぁ、他にもあるだろうけど……別に説明する必要は無いか。
 扉という壁が在るのでいつも通りの罠抜け的な封印解除もできない。
 魔力を使った封印破壊も、漂う封印された存在の魔力によるなんらかの効果で直接術式に触れないと破壊できないから面倒だしな。


「ま、無難に開けていきますか」


 行く途中でフィッシュしたアイテム――聖剣を取り出して魔力と聖氣を注いでいく……地球でさ、宝剣が海にごろごろ落ちていたら大問題だろ?

 だからあの時、俺はこれにツッコミを入れたんだよ。
 国の宝がとある箇所に集中しているんだ、回収しろよって言いたくなるぜ、全く。

 長い期間放置されていたからか、聖剣の輝きはかなり燻ったものとなっている。
 それもまた、俺の力によって少しずつ元の輝きへと戻っていると思う。

 さて、本来主としては認められないような無職の俺でも、(聖氣)という免許スキルを使うことでそれを振るうことを許される。
 聖剣は燐光を放ち、俺の注いだ魔力の分だけ輝きを増していく。


「それじゃあ、一発目――"炎溶エンド"」


 そう言って斬撃を放つと、それは不思議な色をして炎へと変化する。
 魔法を溶かすことのできる特殊な炎を生成する聖剣は、その聖なる力を魔力によって高め、複数の結界をドロドロに溶かしていく。

 斬撃を放つと輝きは消え失せ、再び燻った輝きを放つだけになってしまう。
 ……少しだけ前よりも光っている気がするので、使えばいづれ元に戻るかな?
 何度も酷使するのは悪いので、一旦聖剣は収納し、新たな武器を取り出す。


「んじゃあ、二発目――"焦土と化せ"」


 今度は魔槍に魔力を注ぎ、紅く輝いた時点で結界に向けて投げ付ける。
 槍は結界に触れた途端、超高温の炎を穂先から放って結界を壊していく。
 ……さっきから発動する能力が炎系ばかりなのだが、これはこの世界が赤色の世界だからか?
 ぶっつけ本番で使用しているから、俺にも分からないんだよ。

 残ってる結界は……おいおい、再生機能付きかよ――本当に解放する気が無いのか?

 残る結界はあと30枚。
 初期が50で聖剣が-15、魔槍が-10で再生機能が+5で現在に至るってワケだ。
 深層に行くにつれて結界が強固な物になっているし、落ちてたアイテムもあんまり多くはないしな~。


「……ハァ、三発目――"剥ぎ切れ"」


 短剣型の魔剣を使い、結界に当てる。
 すると、結界がスライスハムのように綺麗に剥ぎ取れていく。
 おぉ、これなら少しずつだが必ず終わる。
 いやー、便利な物が落ちていたもんだ。

 ――しかし、順調な時程余計な邪魔が入るものである。

 扉の方に近い結界の一枚が突然光り、召喚陣のような物が展開された。
 そこから眩い炎が吹き荒れ、一体の龍が出現する。


??? Lv???
??? ???
??? ???


 ――ヲイ、全く情報が出ないじゃん。


『何をしているか、小さき者よ』

「……ん、どなたでしょうか?」

『私は聖炎龍、人との盟約により結界を守護するものだ』


 ……あ、名前の部分が表示された。
 やっぱり予想は正しかったのだろうか。

 鑑定もできないし、神に近しい存在か?
 そんな凄い存在が、この先にいるであろう者の封印の警備……それなんて無理ゲ-?

 しかし、救われない者に手を差し伸べる偽善者さん。
 ちょっとやそっとじゃへこたれないぞ。


「ハァ、そうなのですか。……それで、今こうして結界を破壊する私に何の用で?」

『お前が放つその魔力、隠してはいるようだが彼の者よりも強大なものと見る。お前ならばいずれこの封印を壊し、彼の者を解放してしまうと見たぞ』

「いやー、照れますね。貴方様のような強者に、そう褒めれらますと……不躾ながら、貴方のその体、あくまで作り物ですね? 召喚陣があろうとも、貴方様のような存在自体は召喚できなかった……成程、つまり炎が模っているだけの模造品ですか。さすが炎の龍だけあって、そういったお遊びことがお得意なのでしょうか?」

『……何が言いたい』


 ギロリと縦長の瞳孔で俺を睨み付けてくる聖炎龍さん。
 ……おいおい、俺は本当に聖炎龍さんのことを褒めてるし、凄いと思っているんだぞ。


「例え私が貴方を倒そうとも、本体である貴方が死ぬことは無い。それはあまり殺戮を好まない私にとって、最上の事実であるのですよ。――どのような意思を籠めようと、どのような方法で殺そうとも殺害は殺害です。私みたいな小心者には、あまり受け入れられないことなのですよ、何かが死ぬのは。まぁ、そういった考えも、知性を有するものに限りますがね」

『お前に……私が殺せると言うのか』

「えぇ、当然です。本気で私を倒したいのならば、ご自身で来ないと無理ですよ。あぁ、私と貴方はもう言葉を合わせた関係です。殺したくは無いので貴方自身で来るのは勘弁してくださいね」

『舐めるなぁ!!』


 おぉ、怖い怖い。
 さて、聖炎龍さんも怒っちゃったし、俺もそろそろ臨戦態勢に入るかな?



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