AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と光球作り
プグナ
結局、彼女たちはクラーレと『O・HA・NA・SHI』を行ってせめて生産活動だけでも……ということになった。
クラーレはやや不満そうであったが、なら生産を代わりにやる? 的な質問にあえなく失墜していた……無理なんだな。
俺としては大半が片手間でできることなので問題ないのだが、俺に依存しないという意味ではクラーレが正しいのだろうな。
まあ、後任の育成は行うつもりだし彼女たちが望むなら奉公先の斡旋ぐらいならするのだが。
さて、そんな彼女たちであるが――次の街に到達していた。
「ここが……決闘の街プグナですか」
「むさ苦しいわね」
街の感想は、その二つで充分だろう。
この街の特徴は、街の中心に置かれた巨大な円形闘技場だ。
そんな建物が設置されているからか、この街では決闘が頻繁に行われている。
……そして此度、そんな決闘の街に熱い漢たちが集う!
偶に視界の端に野蛮人のような恰好の奴が見えるんだよな……それがビキニ戦士のお姉さんなら、まだ許せるんだが。
お蔭で視界は潰されたも同然、目のやり場もないとはこのことだな。
「ますたーたち、これからどうするの?」
「わたしたちは、転移門の登録をしたら一旦ログアウトします。ですので、メルちゃんとはここでお別れです」
「うん、また今度ね」
彼女たちとはここで別れ、俺は街をフラフラと歩いていく。……面倒事は御免なので、身を隠してだけどな。
しっかし、どこに行こうかー。
この街は決闘を重んじる傾向があるのか、大体のものは決闘を行えば手に入る。
金、土地、力、そして人すらも……相手が了承さえすれば、いちおう何でも手に入るみたいだ。
そのため、俺が全能力を解放して決闘を行えば本当にこの街のものならば何でも手中に収められると思う。……ま、こちらも面倒だからやらないけどな。
「うーん、とりあえず帰ろうか」
そうして色々な施設を歩いて散策した後、俺は“時空転移”で世界へ帰還する。
◆ □ ◆ □ ◆
第一世界 上空
特にやることもないのだが、最近は世界の上の方に昇ることが多い。夜空に広がる星の輝き的な物を創ったり、それらの定期的な確認を行っているからだ。
「きーらーきーらひーかーる、ふんふんふんふんふーふーふーん」
【光芒魔法】で球を生みだし、<常駐魔法>でそれを固定化する。光の明るさや大きさ、色などの変化を付けて、国民たちが喜ぶようなデザインを少し混ぜていた。
いやー、その内プラネタリウムとか展望台みたいな施設も必要になるかな?
少し低い山の創造を始めるか、それとも一定期間『天空の城』を開放するか……悩む。
「ふんふんふんふーふーふ、よーぞーらのーほーしーよ」
でも、未だに星の創造は行えていないんだよなー。一から星の創生に必要な手順を正確になぞってみれば、スキルリストに載るかもしれないけどな……その内やってみよ。
星を創ることができたなら、それは一種の神だろ?
これぞまさに創造神! って感じを満たしたその力を、男ならば手に入れてみたいものである。
「さて、次は――」
「「見ーつーけーた!」」
「……あっ(――"転移眼")」
「「逃げるなー!!」」
気のせいだろうか……目の前に吸血鬼と妖精が居た気がする。とっさに転移して逃げたのだが、それでも怨嗟の声がどこからともなく聞こえてくるんだよ……。
「全速全開! フルブースト!!」
特に意味はないが、やる気を出すために声に出して空を飛ぶ。『創糸の衣』に魔力を籠めて翼を広げ、高速ではためかせて勢いよく進んでいく。
「なん、で、あんなに速いのよ!」
「お兄ちゃん、全然変わらないねー」
「変わってるじゃない! 異常って意味じゃたしかに変わってないけど」
遠くの方でそんな声が聞こえたような気もするが、脇目も振らずに逃げる俺には聞こえていないよなー……グスンッ。
「ふひぃいいい~、いい湯だな~」
薄らと湯気が辺りに立ち込めており、周囲は霞むようにしか見ることができない。
だが、上を仰ぐ形で見てみると、日本では見ることのできないような、満天の星々が広がっている。
体を芯から温める湯水を全身で感じ、俺は緩んだ口からその言葉を発してしまう。
あの後俺は音速でこの地──山脈フィールドにある温泉までやって来て、ゆっくりと息抜きを行うことにしてみた。
うん、まさか<箱庭造り>に源泉発掘機能まで付いているとは……驚きだよ。
周囲にはバッチリ結界を張ってあるので先ほどの追跡者がここに来るなんてラッキースケベイベントも起きない。
まあ、バレた理由も分からなくはないがむしろ今までバレなかったのが奇跡ってレベルだしな。
「「――――」」
「うーん、何も聞こえなーい」
結界の外側で、結界を破壊するために奮闘する少女たちの姿なんて……俺にはまったく見えてないからな。
MPお化けになりかけている俺の結界だ。例え眷属であろうと、そう容易く壊すことはできない(俺の能力値が全然増加していないのも、理由の一つだな)。
しかし、どうしてそんなに追いかけていたのだろうか? よし――。
「(はいはーい、二人とも。久しぶりに念話を接続したけど……どうしたんだ?)」
《さっさと繋ぎなさいよ!》
《久しぶりだね、お兄ちゃん》
両者からそう、念話が返ってくる。
片や怒り狂っており、片やハイテンションなご様子。
やれやれ、変わらないんだなー。
「(悪い悪い。最近は異世界の扉が現れたり、武器を作ったりで忙しかったんだよ)」
《……異世界って、普通のプレイヤーのセリフじゃないわね》
《武器って、誰に作ってるの?》
久しぶりに二人と話す気がするよ。
俺はティンスとオブリに、最近のことを可能な限り話してみることにした。
――湯の中とはいえ、裸でだけどな。
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