AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とランダム召喚
草原フィールド
「いやー疲れたー。影操るのって、制限付きだとマジでキツイわー」
翌日、屍鬼での疲労感を覚えた俺の感想がこれだ……本当に大変だったのよ。
精霊でもないし天使も顕現できないけど、過去の履歴(影のみ)は切り取れた。
それを自分自身の脳のキャパだけで操作するのは……無理に決まってんだろ。
最初に作った影人形は単純な行動しか取れない始末であったが、影を少しずつ減らし、脳に栄養を回していたら一号君を自分自身の脳のみで完璧にコントロールできていた。
やっぱり、日々の努力(と<澄心体認>)は大切なことだよな。
しかし、鬼ごっこかー。
俺も超若い頃は、体育の授業とかでやったなー。
え? 友達とする? そんな風習が、地球にはあるのか?
鬼ごっこってのは、授業でしかできないものだろ? ……ボッチだったからな。
「へーい、ランダム召喚!」
ま、それはともかくだんだんと暇になってきたので、適当な座標を登録して(召喚魔法・偽)を発動する……頑張って創ってもらった。
足元に魔方陣が展開し、黒い靄が魔方陣の内側から込み上げてくる。
「魔物……なんだよな」
靄は少しずつ形を成して、魔物へと変貌する……はずなんだけれど、何らやサイズがおかしい。
最初は俺の脚ぐらいだったんだが……すぐに頭を越し、今では上を見上げる程に大きくなってしまっている。
「(国民に告げる、なんか魔方陣で召喚したら失敗しちゃった。デッカイ魔物が視えるけどあんまり気にしないでね)」
報連相ということで、第一世界に住まう者たちへの通達を行っていく。
フィールドごとに強力な結界が張られているので、魔物がそれを突破するということはないだろう(元世界最強の龍にも、条件付きでテストしてもらった)。
――さて、魔方陣の方に注目だな。
「お、質量保存の法則をガン無視。さっすがファンタジー? だな」
そう、大きくなった魔物は、一時は王城に匹敵する程のサイズであった。
だが、それもシュルシュルと縮みに縮んでいき――俺より少し小さめぐらいの大きさで落ち着く。
そして、黒い靄が明けて中が見えるようになる。その中身は――。
「……スライム?」
プルンとしたそのフォルム。
どちらかと言えば、転生したことで有名になっている愛らしい葛餅のような流形体をしており、色はサンゴのように赤く明るい色をしている。
ちょっと鑑定を――
コーラルスライム? Lv1
魔物 パッシブ
地上・海中 格下
〔属性 海 耐性 火
捕足 群体化 宝石生成 光合成 擬態〕
特に変わったことはないと思いたいんだけど……名前の辺りがおかしいな。
スライムはそのまんまだから省くが、コーラルは珊瑚という意味がある。
だが、どうしてそれらの後に『?』が付いているんだよ。
一度召喚時に巨大化していたことと、何か関係があるのだろうか。
「(あ、あ……召喚された魔物はコーラルスライムだと思われる。海関係の魔物なので、これから翠玉海に解き放つ。以降何かあれば、すぐに連絡するように)」
そう言い残して、俺はスライムと共に転移で海フィールドへと向かった。
◆ □ ◆ □ ◆
青い空、白い雲、照り付ける太陽、そして──エメラルドグリーンの大海原。
……うん、特に響くものはないな。
いくつかある海フィールドの一つであるここが、もっともこのスライムに適正がある場所だっと推測し、やってきたのだ。
とりあえず海水を少々掬い、スライムに掛けてみると――
プルプルプルーン!
喜びの舞を魅せてくれた。
HPに変動は無いため、悲鳴の舞ではないだろう。
ああ、見せるじゃなくて魅せるだからな。
……うん、スライムの舞とはここまで暇人の心を温めてくれるのか。
俺、少し、嬉しい。
あ、言葉は通じてないぞ。
知性がまだないのか知らないが、話しかけても返事が聞こえないからな。
「よーし、それじゃあここがお前の新しい住処になるぞー。頭が良くなったら、これで俺に連絡してくれ」
無理矢理スキル結晶(念話)を体に捻じ込んで、消化させる……うん、ちゃんと習得しているな。
「それじゃあ、元気にいってらっしゃい!!」
プルルーン
{夢現流武具術}に投擲のイメージを持たせて発動し、海の真ん中あたりに水切りのようにぶん投げる。
ポシャッポシャッと水を弾く音を何度も鳴らし、スライムは海の住民となった。
……ちなみに、24回だったぞ。
□ ◆ □ ◆ □
偽善者に投げられたスライムは、海の中で自己分裂を行っていく。
(群体化)と(光合成)のスキルにより、それらの作業は高速で進んでいく。
そしてしばらくして……それらは一つの巨大なスライムへと変貌する。
(うーん、ここはどこなんだろう? たしか……下が光ったところまでは、なんとか覚えてるんだけどなー)
プルプルと揺れながら、スライムは過去の自分の行いを思い出そうとする。
スライムには記憶が欠如していた。
先ほどまでのスライムは知性が足らず、記憶力が低下していたからである。
しかし、大きくなることで賢くなっているのか、記憶を取り戻していった。
(あ、たしかそのあと……凄い魔力を見つけたんだよなー。あれって、もう海王とか魔鯨王を圧倒してたんだよねー。あ、そうだ! だから身を減らして弱体化してたんだ!)
プルンッと揺れ、自分自身の過去を思いだしていく。
実はこのスライム、とある海域でさまざまな王の名を冠する者たちと死闘を繰り広げてきた、かなり強いスライムであった。
だが、スライム自身にあまり戦闘する意思はなかったので、そこから脱出するため、偶然自分の下に展開された魔方陣に乗ってこの世界にやって来たのだ。
しかし、魔方陣が完全に解除される前にスライムは気付いた。
――召喚者の異常なまでの力に。
そのままの力では殺される、そう考えたスライムは、わざと体を消滅させて弱体化を図り、召喚者の保護下に入ろうとした。
実際それは成功し、スライムはこうして生き残ることに成功したのだ。
(……あれ? (念話)なんて習得していたっけ? ま、便利だから使わせてもらうけど。あ、でも今は先に体を元通りにしないとね)
このスライム――『偽海粘王』であるコーラルスライム・アトランティックが再び召喚者と出会う日は……そう遠くはない。
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