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山田 武

偽善者と『封印邪神』 その03



 前回のあらすじ
 運営神は暴走してた……なら、お前も暴走に含まれるのか?」

『お前じゃなく、ドミリオンなのだ。われは渡された権能が暴走する前に、それをまた奪われたのだ。故にわれが司る事象は一つ、だからわれは暴走しないのだ』

「長い……リオンだな。なら、リオン以外は全員暴走しているのか?」

『むぅ……まあ、リオンで良いのだ。正確には分からないが、少なくとも一柱は暴走していないのだ。なんでも、性質が混同しないものだと言っていたのだ』


 いや、そんな理由で暴走しないのかよ。
 神って結構、精密機械みたいな存在かと考えていたんだけどな。案外ポンコツ?
 確かに目の前にいる少女には、暴走している様子は無い(そもそも、何を以って暴走と定義するか分からないのだけどな)。


「あ、そういえばさっき、奪われたって言ってたよな。なら、奪われたその事象は一体どうなったんだ?」

『そちには既に心当たりがあるのだ。過去の王都で最後に出現した邪神の欠片。アレの本体が持つ事象こそが、われが奪われた権能でもある『支配』の権能なのだ』

「支配って……結構凄い権能を与えられていたんだな、リオンって」


 そう褒めると、少しだけ顔を赤くして話を戻してくる。

 ……うん、事象自体は知っていたぞ。
 レイが予習として教えてくれたし。
 俺が知らなかったのは、あくまでどっちを奪われたかだけだ。
 レイがそれを知っていたかどうかは知らないが、自慢げなリオンの表情を見ると……そこを言わなくて良かったな。


「それで、確か今は『反逆』の権能を持ってるんだよな。レイに聞いたぞ。そもそも、事象を司るってどんな効果があるんだ?」

『そ、そうなのだ。われの持つ『反逆』は、弱きものの力を借りることができる能力なのだ。詳しいことは言えないのだが……』

「うん、大体のことは今の説明だけで理解できた」


 というか、<千思万考>で強引に答えを割り出したって言うのかな。
 今までに聞いてきたことや読んできたこと――あらゆる情報と今のリオンの話を合わせると……


「弱きものとは、即ち神髄を引き剥がされた神様たちのことだろ。で、リオンにはそのお偉い様方の言葉が分かる。だから文字通り『反逆』をした結果……ここにいる、だろ?」

『……微妙に違うのだ』

「…………」


 うわ、恥ずかしい。
 今の俺のセリフ、絶対(キリッ)とか入ってたぞ。
 それなのに不正解って……ああ、恥ずかしすぎる!


『確かに、『反逆』でわれは他の神……シーバラスに敗れた神の意思――それも曖昧なものを聞き取れたのだ。だが、われが本当にここに封印された理由は、『支配』の方にあったのだ。『反逆』で意思を掴み、それを『支配』することで、われはその神の力を十全に扱うことができたのだ。……もちろん、そんなつもりはなかったのだ。ただ『できた』、それだけの理由でシーバラスはここにわれを封じたのだ』

「…………」


 『支配』って凄いんだな。
 そりゃあ奪わるわけだ。
 掌握したもの全てを、100%の力で扱うことのできる権能。

 ――それ即ち、万能に届き得る可能性。

 全ての神々を討ち滅ぼし、ソイツらの権能全てを奪う。
 そして、それを『支配』の力でコントロールすれば……チートだな。

 そして今、その権能は暴走した運営神の元にある……おいおい、嫌な予感しかしないのは気のせいか?


『だがその戒めも、そちによって壊されたのだ。今のわれは自由の身、だけどこのままでは自由になる世界がなくなってしまうのだ』

「…………」

『この世界を、アナむぐっ』


 何かを言おうとするリオンの唇を指で塞いで、俺は語る。


「リオンに頼まれなくても、自由になれる場所くらいなら用意するさ。――そう、夢現空間をな」

『違うのだ!』


 無理矢理指を退かし、そうツッコむ。
 ははは、冗談だって冗談……半分くらい。

 世界を救う? そんなの主人公がやることだろ。俺みたいな偽善的なモブには似合わない仕事だよ。
 例え女神様(邪神)に頼まれたとしても、きちんとNOと答える――それが現代の日本人という者だろう。

 それから、一気に言葉を綴っていく。


「大体、それをやって俺にどんな利があるって言うんだよ。あ、世界を救うのに利を求めるな、なんて寒いことは言わないでくれよ。いちおうでも俺は偽善者だ。報酬が無いとやる気にならないクソ野郎だよ。偽善ってのは自分のためにやるものだしな、わざわざ世界のためにご奉仕する? やってられるわけないよな。俺は俺だけの世界が創れるんだ。別に世界が滅ぼうと、俺の家族だけは安全に生きていける。それなら別にそれで良いんだ。ノアの箱舟は既に造られているし、そこには乗せるべきものを既に積んである。神が勝手に洪水を起こそうが天罰を下そうが……俺には関係ないことだしな。おっと、話が逸れてるようだな。つまり俺が言いたいのは――」


 面倒なので一区切りしてから……リオンの目線に高さを合わせてから告げる。


「リオン。要するに俺は、対価が欲しいということだ。……と、いうわけでリオンが俺の眷属になるのなら、前向きに検討するぞ」

『…………』


 今のリオンの表情を説明しようか?
 ――物凄く複雑な顔をしてらっしゃる!
 俺はその顔を見て、心の中で頭を神鉄鉱石じしょうこういぶつけやり続けた。



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