AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『極塔之主』 その05
天極の塔 最上層
「ま、勝負は俺の勝ちなわけだが――」
『……ハ?』
《……え?》
「――本気の偽装を掛けてあるから、そっちの負けになることは無いと思うぞ」
転移して向かった先には、ダークエルフの少女が居た……年齢はアレらしいがな。
褐色の肌に白い髪、鸚緑色の瞳を持つ少女は、俺の現れた先を示して唖然としていた。
それと同時に、ここではないどこかからも声が聞こえてきた。
少女の声よりは大人びた声で、こちらもまた驚きの声を上げている。
『お前は……さっきのノイズ野郎か!』
「ご明察。あのゲートは存在格で制限を掛けてるらしいからな、偽装するのに少々工夫を入れる必要があったってわけだ」
《しかしそれでも、ここに来れた理由にはなりません。このダンジョンでは、ダンジョンモンスターを送り込む以外の魔法陣が使えないはずです!》
「ああ~……それは霧で無効化してた。よく思い出してみろ、魔法陣が霧が出てた時は機能停止してただろ? あの霧の効果で大半のことはできなくなる。それで俺はここに来れたし、アイツらを呼び寄せられたってわけ」
俺が放ったのは、かつて彷徨の森で入手した"抑力の霧"である。
解析班が色々な改造を加えたためか、放出される前の力を発動不可にする……運動エネルギー停止空間を生成する効果を手に入れてしまう。
確かに、大人びた声の言うことが本当ならば、その機能は事前に発動してたのだろう。
……だけど、その機能が一度リセットされればどうなるのだろうか?
例えばそう――強化された霧に、魔力を大量に籠めれば発動済み・中の能力を無効化できる……いてついた波動的な能力を手に入れていたり。
「えっと、そう、自己紹介を忘れてたな! 俺はメルス、お前達がいるこの世界――All Free Online のプレイヤーの一人にして、何かいろいろとやらかして召喚された扱いになった転移者だ」
『……何かいろいろとやらかしたって一体何をしたんだよ。All Free Online? 聞いたことないタイトルだn――』
「その話はアイリスと既に済ませてある。お前のことも多分だが情報は入手済みだ」
『アイリス! お前、アイリスを知ってんのか!?』
アイリスの名前を挙げた途端、少女はこちらに詰め寄り、腰をガクガク揺らしてくる。
……首まで届かないのか。
仕方ないので意味もなくショタ化をして、一応首が届くようにしてあげた。
少女も最初はギョッと驚いたが、俺が自分の服を指差すと、その行動の意味を理解してくれたようで、不満げだが服は揺らしてくれている。
「お前、結構分かってる奴だな……アイリスは一度死んで、転生していた。細かいことは本人が言わないからよく知らん。だが、いちおう安全な所で今は生きてるぞ」
『そ、そっかぁ。良かった。アイツ、生きてたのか~』
「(…………なあ、大人びた声さんよ)」
《貴方、一体どうやって……というよりなんですか大人びた声さんとは。ワタシはコアと申します》
「(シンプルな名前だな。昔の小説に書いてありそうな名前だと思うぞ。……って、違う違う。一応聞いておくんだが、コイツってアイリスのこと……)」
《ええ、好きですよ。壁を超えるぐらいに》
壁とは、ある種の法律のことである。
つまり、それを超えるということは……。
「(キマシの塔の建設が必要か? あ、でも、男なんだよな?)」
《おや? アイリス様から訊きましたか? 彼女も知らないはずなのですが》
『…………』
「(都合よく便利な『眼』を持っていてな、体は女だが魂が男のものだってのが視えてるんだよ。……まあ、色が段々と変わっちゃってるのも理解できちゃうがな)」
《そこまで分かっていらっしゃるとは、その『眼』とやらが気になりますね》
『……い』
「(悪いが特別製でな。少なくとも、今のコアさんには無理だろう。……せめて、人の体があれば、習得も簡単だったんだが)」
《生命以外の存在に、仮初の肉体でも与えられるのですか?》
『……おい』
「(まあ、そんなもんだ。会ったこともない神様がくれた加護にな、ほぼ何でも創れる気がしてくるって効果があったんだよ。それで人形を創ってみたら……できたってわけだ。コアさんも良ければ使ってみるか? ま、先にそこの少女の許可を取るけどな。……アレ、男の方が良いかな?)」
《いえいえ、お気になさらず。マスターも言葉上では嫌がりますが、きっと――》
『おいっ! いい加減に話を聞けよ! コアも何か言ってやってくれ!』
念話で会話を行っていたため、少女にはそれが分からない。
そのため自分が無視され続けていたと感じたのか、こうも怒っているのだろう。
《はて、マスターは一体何を仰られていたのでしょうか? 昔惚れた女性の話ですか?》
『ば、馬鹿! バラすんじゃねぇよ!』
《今のその体で、マスターは一体何をする気なので? 塔ですか、塔でも築きますか?》
『う、うぅ……』
コアさんの辛辣(?)な言葉を受け、少女は涙目へとシフトしていく。
いや、二人共楽しそうな気がするからさ、確実に辛辣とも説明ができないんだよ。
「……とりあえず、話を戻して良いか?」
二人があっ、と言ったのを確認した後、俺は彼女たちとの話を真面目なものへと戻す。
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