AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と人造魔石

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夢現空間 生産室


「――完成だ。これぞ男のロマン!」


 年甲斐も無く小躍りして、その喜びを体現していく。
 ……そう、ついに完成したのだ!
 一度は誰もが見たことがあるであろう、あの戦士が!


『メルス~、ちょっと訊きたいことが――って、ガンダ◯!?』

「おっと、もう見つかってしまったか。折角神様から機械系の加護が貰えたんだ。なら、これを造らないとな」

『いやいやいや、ちょっと待って。うちの国でも巨大ロボを造るのは失敗したんだよ。なのに……なんで独学で製造に成功しちゃってるの!?』


 手をバタバタと振り回しながら、少女アイリスがそう叫ぶ。
 ……ちなみにだが彼女、元はJCだったらしい。
 現年齢が十歳とのことなので、計算すると最低でも『ちょっと、何か変なこと考えて無い?』……なんでもない。


「偉大な眷属様たちからの恩恵の一つ、天才に匹敵する演算能力を酷使すれば……ロボットの一つや二つ、どうにかなるもんだな」

『え~』


 ただ、魔学(仮)技術の研究はまだ途中なので、シルエットがナイトなロボットは製造できないぞ。

 MSをドゥルに連絡して武器庫へと仕舞ってもらい、話題を変えて会話を続ける。


「そういえば、地下で拾ったジェネレーターだけどさ」

『……もうチートは訊いたし、強制的に頭に流し込まれたから理解はしてるけど、あのやり方はどうかと思うんだよね。確かに、チーターしか通れないような仕掛けにはしてたけど……普通工場まで破壊してから来る?』

「アレで作られるエネルギーって、普通に科学で作れるエネルギーだよな?」


 ジト目を掻い潜り、質問を行う。
 工場を破壊しないと無限にロボットが出てくるんだったら、迷うことなく破壊すべきだろう。


『ちゃんと聞いてよ! ……まあ確かに、アレは電気で動いているよ。武具の方は魔具だから、それを使うための魔石が入ってるのを除けば、あとは地球のロボットとほぼ一緒』

「へぇ、うちは魔石を使わないって決めてるからな~。その方法は取れない……あっ! そういえばアイリス、お前は人造魔石って作れるか?」

『もちろんだよ、そもそも使ってた魔石も人造魔石だしね』


 なら良かった。
 国民の大半が魔物なだけあって、魔石の使用に忌避感を覚えているからな。


『そういえば、メルスはAFOで国を造ってたった記憶にあったね。だから魔物の魔石は使わないんだ』

「そうそう、その生き物の前で同種の肉を食べているみたいでさ~。あんまり進んでやりたくは無いかな~と思ってるんだよ」

『だから人造魔石に目を付けたってわけ?』

「まあ、俺も人造魔石自体は自由に作れるんだけどさ。量産体制が整って無いからな。あれだけの数のロボットが稼働してたんだ……そっちの国はもうそれができてたんだろ?」

『うん……うん? 人造魔石自体は自由に作れた? メルス、それどうやって作るの?』

「どうやってと言われてもな――こうだぞ」


 "収納空間"から取り出した普通の石へ、無属性の魔素を圧縮して注入していく。
 すると平凡な石ころは、だんだんと透明な色へ変化し――魔石へと変質していった。

 本当は(純魔法)でもっと透明感が出るような魔石にしたかったんだが……ただの石ころだと、耐えられなくて割れるんだよな~。
 今回はとりあえず成功したみたいだから、まあ大丈夫か。


「品質は……RANK:Bってところだな。称号のお蔭で俺オリジナルの生産は必ずB以上になるから、まあ及第点って感じだな……どうした? そんな鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして」

『……人造魔石って、大量の魔素を集めて選別しないといけないから、かなり高度な技術が必要なんだけど』


 呆然とした表情のまま、アイリスはそう告げてくる。
 ああ、確かにその問題はリーン国の研究者も指摘してきたな。


「持ってて良かったスキルさんだ。魔素の選別は(掌握)や【箱庭作り】を使えば簡単にできるし、【純潔】を使えばエネルギーの選別もチョチョイのチョイだしな」

『本当に、メルスには美徳の才能が無いと思うんだけどな~』

「おいおい、美少女揃いのハーレム相手にいつまでも貞操を貫けている俺だぞ? 他はどうだか分からないが、少なくとも【純潔】だけは間違いなく備わっているだろ」


 ――理由はともかく、桜桃のままなんだ。
 俺にはそれを言う資格がある!
 ……たまに危険領域に達して流されそうになるが、安全装置が機能するので、最終防衛ライン大賢者の資格だけは守り抜いているぞ。


 閑話休題そろそろヤバい


「……ま、まあとにかく、人造魔石ver俺はこうやって作ってたんだ。そっちの方はどうやって作ってたんだ?」

『うーん……ワタシはメルスみたいに記憶系のスキルは持ってないからな~。一度あそこに戻らないと分からないよ』

「ん、あの◯行石の所にある端末か? それなら『Wifone』を使えば簡単にアクセスできるぞ」

『そうなの?』

「受肉するまで暇だったからな。ハッキングして接続できるようにしておいた。その内纏めた資料を本にでもコピーして図書館にも寄贈する予定だ。アプリがある奴には、ほぼ必要ないんだけどな」


 眷属の作った有益な本の写本は、向こうリーンに送ってもらっている。
 それを解析して学習しているので、俺の国はかなりの発達を遂げているぞ。


『……やっぱりチーターだね』

「[スキル共有]があるんだ、アイリスもそのチート擬きを一回に付き五つまでなら使用可能になってるぞ。一部使えないのもあるが、まあ大半は共有できるから試してみろよ」

『え、良いの?』

「オールオッケー、眷属は家族で、俺のものはみんなのもの。共有させたくないスキルはロックが掛けられるようにしてあるから、俺のスキルだけでも使ってみてくれよ」


 いつの間にか導入されていた新システムである。
 まあ、俺のスキルは全部借り物だから開放しておくし、関係ないんだけどな。


『……デレないからね』

「別にそれを求めちゃいないからな。本気でデレられて耐えられる気がしない……けど」

『けど?』

「お前、受肉したら顔が少し変わったしな」


 作られたような顔は、元々の顔のイメージが混ざったのか少しだけ変貌した。
 人間らしさというものだろうか……怖い程に綺麗という例えが、親しみやすい可愛らしさに変わったんだよ。


「可愛い……からな、他の眷属たちと同じくらい。どうせなら、俺の仲の良い友達にでもなってくれよ。気兼ねなく話せる友達ってのがほしかったんだよ。ま、別にアイリスがデレたいなら止めはしないけどな」


 最後ら辺は少し早口になってしまったが、そう言って生産室から出ていく。

 ……最後に見た彼女の顔が赤かったのは、きっと怒っていたからだろう。



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