AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と天上の転生者 後篇
画面に映った少女は、西欧系の顔立ちをしていた。
アッシュブロンドの髪と金色の瞳を持っており、作られたように整えられた顔との相性も抜群だ。
……うん、まるでキャラメイクをしたかのように美人なんだよな~。
『――あ、ああー。テステス。ちゃんと聞こえてるよね、モニター出てるよね?』
「バッチグーだぞ」
『……うん、意味が通じてるってことは、貴方も日本人ってこと……なんだよね? 顔とかじゃ分からないってのは、自分自身で確認済みだから』
「ああ、俺も一応だが転移者だな」
『へぇ~、こんな場所だから他の同郷の士を見ることなんて無かったからね』
モニターの中でカラカラと笑う少女。
「あ、自己紹介を忘れてたな。俺はメルス、別名■■■■だ。メルスって呼んでくれよ」
『ワタシはアイリス、死ぬ前は愛梨って名前だったよ。ワタシもアイリスで良いからね』
「ああ。済まないが、そっちの名前は事前に確認済みしてある――フィレルからな」
『えっ、フィレルに会ったの?!』
「まあな。アイリスが無事に逃げられたかどうかを心配していたが……その状態って、無事な状態に含まれるのか?」
フィレルの名を挙げると、アイリスのテンションは急に上がった。
俺がどうやってフィレルに会ったかについてを、とりあえず説明してみると……。
『……メルスって、どんなチートをお願いしたの? フィレルって、こっちの世界の神々相手に時間稼ぎができるぐらいに強いよ』
「う~ん……ハーレムの数に応じて、能力値が超上昇する?」
『おおっ! ハーレム! 素晴らしいよ!』
「女の子がそんな露骨にハーレムという単語に反応するんじゃありません!」
『ええー、ロマンだよロマン! 小説でも王道のハーレム! 良いねー、憧れるね~』
画面の中で頬を膨らませている……いや、普通否定的な反応をするもんじゃないのか?
『――あ、言っておくけど、別に逆ハーとか百合ハーを作ってたわけでも作りたかったわけでもないからね。こっちの世界で十年も生きていれば、そういうことにも慣れてくるんだよ。……まあ、元々ハーレム物の小説が好きだったのも理由の一つかもね』
「……それで良いのかよ」
『ワタシ、ずっと病院に居たからね。何かしたいことがあっても、体が動かないからできないし……VRゲームをやってる間は体を動かせたから良いんだけど。だけど使用制限の時間以降は何もできないから、ずっとネット小説を見てたの。色んな小説を見ていたら、ハーレムにも寛大になるわよね』
「……ん、VRゲーム? それ、どんなタイトルのゲームなんだ?」
本来なら、答えはAFOしか無いが……。
『え、VRと言ったらDMO。なのにそれを知らないの!? ――ダンジョン・マスター・オンライン。ダンジョンマスターになって、自分だけのダンジョンを造るゲームなんだけど……』
――彼女の口から、その言葉は出ない。
「DMO……やっぱり知らないな。俺がやっていた……というか、やっているのはAFO――オール・フリー・オンラインだ。俺はそれをやっている最中に、この世界に召喚されたんだよ」
少なくとも俺は、AFO以外のVRゲームのタイトルは聞いたことがなかった。
……というか、【ダンジョンマスター】さえあれば、そのゲームを再現するのは余裕みたいだな。
最近はイベントでみんな擬似体験してたみたいだし……あっ!
「ちょっと訊きたいんだけど、DMOに踏破とか防衛ってシステムは有ったか?」
『う、うん。基本のシステムだったよ』
「……そうか」
そうなると、やっぱりアレの信憑性というか、可能性というか……色々と確信が持てるようになるな。
「それより、今はアイリスの状況を確認しておきたい。ストレートに本人に訊くが、どういう状態なんだ?」
『う~ん……魂の記憶をフルバックアップしたコピーかな? 最後にこっちに逃げ込んだのは覚えているけど、それが成功したって証拠が無いからどうとも言えないんだよね……SA〇分かる?』
「剣のヤツでいいなら」
『うん、多分同じだね。イメージ的に言うなら、今のワタシは体ごとあのキューブの中に飛び込んだような状態なんだよ。実際、この会話が終わったら、ワタシの全情報が入ったキューブが排出されるようにプログラムしてあるし……』
つまり彼女は確証は無いとはいえ、後のために死んだのかよ。
まあ、俺も眷属のためならそうする気がするし、別にとやかく言う気はないがな。
「ふ~ん……じゃあ、体はこっちの方で用意しておくから、一回キューブを出してくれ」
『え、できるの? これを起動できたから、生産か解析系のスキルを持ってるのは分かるけど……普通、人の体を作るのってLvが相当必要だと思う』
「まぁまぁ、直ぐに済ませるから。ほれっ、さっさとプリーズ」
『……失敗したら、元の場所に戻しておいてね。そうしたら、またこっちの空間に戻ってこれるから』
そう言った彼女が映っていた画面は、再びノイズに包まれていって画面が消える。
そして、キーボードが有った所が二つにパカッと割れて――そこから、小さな正方形のキューブが出現する。
飛◯石と同じ青くて透明の形状をし、その内側で揺ら揺らと小さな光が揺れ動くのが見て取れる。
(――"不可視の手")
丁寧に扱いたいため、俺の代わりに働いてくれる勤勉な手にキューブを掴ませた。
その間に"収納空間"から人形を取り出しておき、キューブをそっと胸の辺りに当てる。
ギュインッ! という音と共に、キューブは人形の中へと吸い込まれていった。
「……これで良し」
やはり、格とやらは既に満たしていたな。
これも、転生者の特典なのか?
うーん……調べる必要もあるかのかも。
あ、受肉作業をどんどん進めるお手伝いを始めるか。
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