AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『吸血龍姫』 その01



 辿り着いた先には、太陽のような髪を持った少女が封印されていた。
 目は鮮紅色、吸血鬼のような犬歯、首筋に髪と同じ色の鱗もちらりと確認できる。
 ……うん、吸血鬼とドラゴンの両方の種族性質を持ってるな。

 そんな彼女は四肢を十字架に括り付けられており、首と指先以外動かせないでいる。
 それでも首は俺の方を向いており、その綺麗な瞳で睨み付けなながら声を掛けてくる。


『……ここに人が来るなんて、アタイは聞いてなかったよ。アンタ、どこの神の使徒なんだい?』

「これはこれは、彼の有名な『吸血龍姫』様と関われるなど光栄でございます。私の名前はメルス、偽善事業を営んでおりますただの一般人です。特段神を信仰している訳でも無い、ただの無信仰者でございますよ」


 勘違いをしているようなので、毎度お馴染みの挨拶を行う。
 時々素の口調から対話を行う時もあるが、やっぱり取り繕った挨拶ができるならそうした方が良いしな。


『そうは言っても、アンタからは神の気配が漂ってくるんだよ。何も信じない奴が、そんなに神氣を放つわけ無いだろう』

「いえいえ、これは自前の物でございます。私、これでも下級神として認定されているんですよ。とは言っても、神界とやらには一度も行ったことの無い現人神ですが」

『……うちの両親みたいなもんか(ボソッ)。
 なら、こんな所にアンタは何をしに来たんだい? 観光なんてする所じゃないだろう』


 おっと、どうやら両親ともに神氣が使えるみたいだな。
 普通神氣って、神の血族にしか使えないはずなんだが。
 ……まあ、神の血を吸ったりしても習得のチャンスはあるみたいだから別に気にしないけどな。

 ……にしても、姫なのにヤンキー風だな。
 確かに一愛っぽいと言えばヒメっぽいんだけどな~。


「先程も申しましたように、私は偽善事業を営んでおります。困っている人に手を差し伸べ、悩みの種を取り除く……やり方が少々アレですので、偽善と称しておりますが。今回は封印されたと言われている貴女様に偽善が必要かと思いまして、ここに参上した次第ですね」

『……アンタ、ここの外から入って来たんだよな。この外はどうなっていた』

「百聞は一見に如かず、私のような舌の回らない者がどれだけ語ろうとも、貴女様の満足のいくような説明ができるとは思えませんので――こちらをご覧ください」


 そう言って【光芒魔法】で作られた映像を使い、ここに来るまでに通って来た箇所を一つ一つ説明していく。


◆   □   ◆   □   ◆


「――――そして現在、貴女様のいらっしゃるこちらの空間にやってきたのです。ご理解いただけましたでしょうか?」

『……そう。みんな滅んでしまったのでしょうか? わたしが守ると約束したのに……(ボソボソ)』


 俯きがちに呟いていく彼女。
 俺と話している気がしないからか、口調が先程までと別のものへと変わっている。

 暫らくそうやってかつての天空都市の情景に思いを馳せたのだろうか……再び俺の方を向く。


『それでわざわざ滅んだ都市まで来て、アンタはアタイの封印を解きに来たのかい?』

「ええ、一応はそのつもりですけど」

『なら止めておきな。この封印は強力で、解除された瞬間にそれがこれを仕掛けた奴に分かるようになってる……そう言ってたよ』


 へぇ、便利な物もあるんだな。確かに少々神聖な感じがするが、そんな機能まで付いてるとは……防犯には良いかもな。

 さて、(鑑定眼)発動――


///////////////////////////////////////////

破邪の十字架 製作者:■■■

神器・呪具:十字架

RANK:X  耐久値∞

神々によって創り上げられた神聖な十字架
使用者から力を吸い取り、半永久的に継続可能な結界を生成する

〔装備が外された時、十字架から神氣が発せられ、■■■へと警告が伝わる
 更に■■■■………………………………〕

装備スキル
(■■■……)……………………………………

〔隠しスキル〕
〔(■■)(■■……)…………………………〕

///////////////////////////////////////////


 隠された部分は読めない部分が多いな。
 それでも、確かに外れた瞬間にそうなるのは本当みたいだ。
 何か対策は~っと……リア、何かないか?


《そうだね……十字架から発せられるみたいだし、そうなる前に壊すか防ぐかすればいいと思うよ》

「(確かに俺もそういうアイデアを考えてはいたんだが……読めないスキルがどんな効果を秘めているかが分からないから、正直実行に不安を覚える)」

《それを考えたらキリが無いじゃないか。君は君の望むままに動く、それが一番さ》


 う~ん……でもまぁ、これ以外方法が思い浮かばないし、仕方が無いか。
 それでも、一応のリスクがあることを告げてから、十字架を外していいかを尋ねる。


「――と、このような感じで十字架を外せるかを試したいのですが……どうですか?」

『……アタイは止めろって言ったんだがね』

「偽善と言うのものは、受ける者の都合を考えずに行うものです。例え相手がそうなることを望んでいなかったとしても、自分がそうしたいからと理由だけで勝手に行う。私としてはするということだけは予め伝えておきたかったので、こうして注意だけは述べているのですよ」

『つまり、選択肢は無いと』

「その通りです。私は偽善ができますし、貴女様はその目で真実を見ることができます。私としては、互いに利益のある話だと思うのですが……」

『アンタはまだ何かを隠している。その薄っぺらい話し方も含めて、全てを説明するまでは了承しかねるね』


 ……やっぱり、(演戯)の効果が働いてないのかな?
 すぐにバレるや。
 アリのレッスンはしっかり受けてるんだけどな~。


「――ま、それならそれで説明がすぐにできるから良いんだがな。素はこっちで一人称は俺。さっきまでのは……まあ、気にするな。
 さて、じゃあどこから説明しようか……」


 それからは、この島に来てからの説明を再び【光芒魔法】も交えて行っていく。



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