AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と地中戦闘 前篇



≪最終警告:侵入者へ告げます
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 これ以上進む場合、警護のものが動きます
 直ちに後退してください
 さもなくば実力によって後退していただきます
 命は保障されません≫


 無機質な声は、そうやって最終警告を流してくる。
 ……武器を構えているのに、それはまだ警告に定義されるのか。


「さて、リア。大前提として、お前たちは決して俺の重荷なんかじゃない」


 握り締めた『偽・御雷御魂』に魔力を籠めて、先程より激しいスパークを発生させる。
 機械が相手となるなら……やっぱり電撃これが一番じゃないか?


《メルス……ぼくたちも、守られるだけの存在じゃないんだ。君の後ろでは無く隣に寄り添いたい――共にいたいんだよ》


 一歩足を踏み出すと、再び声が聞こえる。


≪敵対行動を確認
 警備隊による強制排除を実行します≫


 ω型のロボットのランプが点滅し、何らかの行動をしているのが分かる。


「共にいたいって言われてもな~。基本俺より強いんだから、むしろ俺を保護したいとか言うと思ってたよ。後ろでも無く隣でも無くて……前に進み出てさ」

『――――』


 ωに灯っていた光が、他の型のロボットたちにも点き始める。
 盾を持つβが少しずつ俺の方へと進んで来ており、その後ろから棒を持ったαが同時に歩いてくる。
 γは持っていた銃のトリガーに手を掛け、いつでも弾丸を射出可能な状態にしていた。


《本当にそうできたなら、そうした未来も存在したかも知れないね。だけど、君は自由を誰よりも尊ぶ。自分がやりたいように行動する、それを阻むものは必ず乗り越える。例えぼくたちが全力で君を抑えようとしても、君は必ずそれを拒否するだろう?》

「そうだな……狂気に満ちた愛に関しては否定しないが、束縛されるのはあんまり好きにはなれないと思う。今やってる偽善も、自由な環境だからこそできてるしな。それを止めろと言われても、多分俺は止まらないし、止められない(――"閃空斬")」


 始まりの合図は稲妻が仕切る。
 雷鳴のような音と共に、青白い光が横一線にロボットへと向かう。
 βの装備していた盾により斬撃そのものは防がれてしまった……が、付与された雷の力がロボットへと巡っていき、斬撃を防いだβの大半がショートして動かなくなる。


≪……危険度:Sと断定
 対人戦闘モードから対龍戦闘モードへと移行します≫


 何だか不穏なセリフをその声は告げる。
 すると、ロボットたちに変化が起きた。

 持っている武具からは何らかのエネルギーが、ロボット自体のジェネレーターからも今まで以上の稼働音が、激しくヘッドランプを点滅し、連携を行いながら俺へ一気に向かってくる。


《……こんな時だって、君は何も求めて来ない。危険な状況であったとしても、ぼくたちが力を貸したいと思っていても》

「いや、だって今いないしな。監視役は監視役であって、俺の戦闘代理人じゃない。前にユラルにやってもらったこともあるから分かると思うが、一緒に居るなら別にやっても良いからな。
 それに……1vs1で全力の俺に勝ってくれるなら、俺も安心してお前たちに背中を預けられると思う。
 重荷の話からだいぶ逸れた気もするな。お前らの言うことは常に遠慮してるからか、いつも俺が片手間でできることばっかりだったぞ。だから本当に重りとかそういう支障が出るようなものじゃない(――"狂詩曲ラプソディー")」


 軽快な音楽が頭の中に流れてくる。
 俺はその音楽のリズムに合わせて刀剣をロボットたちに当て続ける。
 今の俺には(戦舞術)と(剣舞者)の補正が働き、ダンスの才能が無い俺でもアイドルのように舞えている。

 足踏みで音楽のテンポを合わせ、丁寧に斬り裂いていった。

 ロボットたちは、斬っても斬っても増え続けている。
【七感知覚】によると、どうやら後ろからロボットたちが現れて増えているそうだ。

 ショートしたβたちも、いつの間にか回収されており、何らかの修理を受けてから戦線へと戻ってきている……どうにかしないと。


「リア、例えばだな。こういった時に俺以外の眷属が行動をしていたとして、もし俺にまだ勝利していない奴がダメージを受けていたなら……俺は暫らく部屋に引き籠る。俺の不注意がそういったことを招いたのかもと思うと、罪悪感に押し潰されるからな(――"エナジークロウ")」

《ぼくたちは君が傷付いていても……何もできないというのにかい?》

「それは俺が【傲慢】で【強欲】だからだ。自分は構わないが、お前達には許容ができない……一言で言えば肝が小さいんだよ。それにお前ら、俺に色々とやってくれてるみたいだし、何もできないわけじゃないだろう(――"ソニックスラッシュ")」

《君は……ぼく以上に分からず屋だね》

「最初からそう言ってるだろう、俺は中々変わらないってな! (――"雷竜剣")」


 強力な武技では無いものの、広範囲へと届く武技を使い続ける。
 それでもロボットの数は中々減らず、むしろ増殖していた。

 αはβの後ろから、棒の先から延びる光状の槍のような物を押し付けようと突き出してくる。
 βはそんなαが俺に壊されないように、光状の何かで大きさの拡張された盾で攻撃を防いでいく。
 γはそんな二種類の機体だけに注意がいかないように、光の弾丸を俺に撃って牽制をしていた。


「う~ん……魔法・新技無しで縛ると、少々手間が掛かるもんだな。一体一体の力はそれ程ではないが、無限増殖が厄介だ」

《呼んでくれないのかい? ぼくなら、茨で一気にロボットを破壊できるよ》


 ……確かに、本当はそれがかなりベストな解であろう。
 リアの茨は強力だからな、ここのロボットぐらいなら簡単に壊せる。


「けど、俺はここで音を上げるような奴だと思うか? そんな奴を、お前は希望だと信じてくれるのか? ってわけで、独りでやってみるわ。丁度使いたい武技もあるしな」

《……君って奴は》


 呆れたような声が伝わってくる。いや、ここは男の魅せ時だろうが(誤字にあらず)。
 ドゥルに『偽・御雷御魂』を収納してもらい、俺は次の行動を選択する。


「それじゃあ、始めるか(――"百花繚乱")


 予め登録した神話で語られる武具の模造品が、俺の周囲に大量に浮かんでいる。

 今の俺ならば、丸一日は出しっぱなしでも問題ない。
 短ければ短い程ATKが上がる効果も実はあったから、そんなに長時間は展開しないけれども。

 俺は再び迫って来るロボットへの情報を纏めていく。……うん、一応可能だな。


「リア、見ててくれ。俺もやれば(少しだけ)できる子――YDKだって証明してやる」

《君のことだ。カッコ書きで少しだけと思っているんじゃないのかい?》


 ……よくお分かりで。
 でも攻略への道はもう見えた。
 後は進路にいるコイツらを、どうにかするだけだな!

 手始めに、近くにあった『黄金の宝剣』と『白銀の皇剣』を手に取り、斬撃を飛ばしてロボットを減らす。

 よっしゃー! (一騎当千)発動ー!!



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