AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者なしの偽善者戦 その04



 人間とは、失敗を糧に成長してきた。
 どれだけ傷を負おうと、そこから何が駄目だったのかを調べ改善する。
 どれだけ材料を無駄にしようと、その材料の何がいけなかったのかを実験し続け答えを見つけ出す。

 偽者の戦闘の最中にも、プレイヤーは成長し続けた。

「武器へのエンチャントを回せ!」「十秒後に壁をくれ」「はいよっ、ちょっと待て」「そろそろ魔方陣からまた来るぞ!」「魔法の反射もそろそろ使えるようになる」「掲示板の情報が更新されたぞ! パターンに関する情報みたいだ」「結局、鑑定の方はどうなったの?」「一応HPゲージとかは見れるようになったが、あとは隠蔽されてやがる! 情報の方は回すから、参考にしてくれ! 他の情報は別の奴が解析中だと思う」

 できないことをできないこととして諦めるのではなく、新たな打開策を何度も何度も何度も何度も考え――道を見つけ出す。
 全ては、運営の思うがままに。

「……相手の情報が分かった。みんな、今から上空に映像として見せるから、余裕ができたら確認しておいてくれ。――絶望だけはしないでくれよ」

 (光線魔法)の使い手がそう伝えて、掲示板に纏められたステータスを映像として投影していく。

 プレイヤーたちはその情報を眺め、対策を練ろうとする……がそこには、見た者全てに衝撃を抱かせるようなものが、大量に表示されていた――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ステータス
名前:■りの厄災ディザスター
種族: <■魔神> Lv-
職業:【■■者】Lv-  ・高位■喚師LvMAX 
・【ダ■ジョ■■■タ■】LvMAX
・【■王】LvMAX ・【■界■■士】Lv- 
・【■武■使い】LvMAX・【■人】LvMAX
・【■武具■い】LvMAX・【■者】LvMAX 
・【死■】LvMAX  ・■級鑑定士LvMAX
・【■殺し】Lv-・偶■歌■LvMAX 
・【■産■】Lv-・【■器使い】Lv-
・【■■王】Lv-・【救■の英■】LvMAX
・【■キ■■造士】Lv-・:神子:LvMAX

 HP:800000/1000000
 MP:2500000/3000000
 AP:1700000/2000000

 STR:1000
 VIT:200000
 AGI:1000
 DEX:1000
 INT:150000
 LUC:1000

スキルリスト(一部省略)

:武芸之才LvEX: :魔導之才LvEX:
:環境影響無効LvEX: :状態異常無効LvEX:
:完全掌握LvEX: :擬似永久回路LvEX:
:肉体操作LvEX: :即撃対応LvEX:
:無限精製LvEX: :言霊之法LvEX:
:能工巧匠LvEX: :博学多才LvEX:
:完全解体LvEX: :神託之天啓LvEX:
:万物之宿敵LvEX: :虚舌之鋒LvEX:
:限界超越LvEX: :咎人之枷LvEX:
:万夫不当LvEX: :戦闘再現LvEX:





祝福
(運営神の■■)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

『………………』

 そこに映っていたのは、自分たちを遥かに超越したステータスであった。
 まず、職業やスキルの枠が違っていた。
 次に、Lv表示が異常であった。
 そして最後に、初めて見るスキルの種類であった。

「神……だと……」「厄災って何だよ厄災って、アイツはプレイヤーじゃないのかよ!」「職業もわけが分からねぇ……読める範囲だけでも意味不明だって分かっちまう!」「能力値が異常過ぎる! 検証班で極振りをしている奴でも、追いつけない数値じゃねぇか」「LvEXなんて存在していたのか!? もうスキルって何なんだよ!」「(運営神)って……GM以上に祝福を与える存在がいたのか!」

 阿鼻叫喚である。
 何も知らないプレイヤーたちは、解析班が導き出した真実を前に戸惑い始める。

『(……これ、本当に勝てるのか?)』と。

 全てが謎に包まれた偽者を改めて見てみれば、今までは感じていなかったはずの覇気を感じ取ってしまい、膝を折り怯えだす者もいた始末。
 覇気と言っても、スキルを使ったわけではない。
 単純にその者の生存本能が偽者に警鐘を鳴らし、その結果そうなっただけである。

 ――それ程までに異常な力。

 それは、運営神が想定しうる未来――あのままこの世界を、AFOとして歩み続けたメルス――の姿の一つに手を加えたものだ。
 メルスの想定通り現在レイドボスとして扱われている偽者は、終焉の島に飛ばされる前に展開された魔方陣によって、コピーされたメルスである。

 {感情}などの■■■■■はさすがにコピーされなかったが、職業やスキルの大半、戦闘記録や経験などはしっかりと偽者の中へとコピーされたのだ。

「(さて、ここまではメルスの予定通りみたいだな)……狼狽えるな! ステータスはただの免許証だ! 能力値の数値を十全に扱える者などそうはいない! ――諦めるなっ、目を開けっ! 敗北を受け入れようとする者に、どうして勝利が訪れるだろうか!」

 公開されたステータスにも怯えず、ナックルたちは偽者との戦闘を続けていた。

 ……それもそのはず、ナックルたちはメルスからある程度の情報を受け取っていた。
 その中に、偽者のステータスを予想したものも入っていたのだ。
「あくまで勘だけどな……」とか言っていたが、(未来視)と(鑑定眼)を同時に発動させることで、限り無く近い真実を観ることのできるメルスの予想は、今回大填まりである。

「(そろそろ時間だな)……みんな、そろそろ援軍が到着する! 後少しだ、後少しだけ耐えてくれ!!」

 約束された時刻――それを守り抜くため、彼は偽者へと立ち向かい続けた。

「(俺の報酬のために)頑張ってくれ!!」


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