AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『覇導劉帝』 その08
もう覚めるはずの無い深い眠り――死とはそういったものだろう。
少なくとも朕も、一度目の死を迎えた時はそう信じていた。
しかし、強制的にその眠りから叩き起こされ、二度目の生を歩んだ。
天命に従い、覇を成した一度目
行いが転じ生まれた、神体としての二度目
そして……望むが為に叶わない、柵の無い三度目
辰と龍の技術を用いれば、蘇生は容易に行えた……肉体さえあれば。
辰人族や龍人族に、肉体を持たない存在などいない。
故に、英霊として魂だけで生きていた朕に蘇生は効くことは無い。
その魂が傷付いた時点で、本当の死を迎えるのだから。
メルスの矛を受け入れた時点で、この運命は決まっているはずだった。
メルスが朕を殺すために使った技は、一度見ている。
だからこそ、その一撃で死ぬことは理解していた。
それでも、天命を捻じ曲げたメルスならばどうにか……そう思ったのかもしれない。
結果は……どうなったのだろうか。
今いるのは真っ暗な闇の中。
かつて、一度目の死を迎えた際に居たと思われる空間。
あのときの朕は眠っていたため、本当にここに居たのかは判別が付かない。
だが、魂がそれを覚えていると訴える。
暗くて寒い、冷たい世界。
どこを見ても何も存在しない冥闇の地。
朕はそこに漂う……魂だけで存在しているからか、目に見える朕の体は、霞がかかったように希薄だ。
ここで朕は眠っていたのだろう……だが、朕の体は不思議と冷たくはならなかった。
(やはり温かい……な)
時が経つに連れて、何も無かった世界に光が降り注いでくる。
その光が朕に触れると、朕の体ははっきりと存在していく。
『――ュ。――――よ~』
遠く彼方――光の発生源より声が聞こえてくる。
初めて聞いた際、ただ煩い騒音としか思えなかったその声は、今ではとても愛おしく思えている。
……では、行くとしようか。
SIDE OUT
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「シュリュ。起きてくれよ~」
時が経ち、スキルの効果が終わったであろうシュリュを起こすため、俺は声を掛ける。
《我が王、私の選んだ武器……その選択は正しかったでしょうか?》
「(ああ、これでシュリュが目覚めてくれたなら、ちゃんと褒めるぞ。良いチョイスをしてくれたな……ってな)」
丁度解析を終えたドゥルと会話を行い、待ち時間を埋める。
使用した矛の名は――『霧遵』、【矛盾】の力を限界まで高めるための武器だ(安直とか言うなよ)。
装備スキルである(矛盾理論)を発動することで、一定時間内に起こした行動から生じた結果を無かったことにできる……それ即ち、リセットができるということだ。
今回の場合は、シュリュを刺すという行動から生まれた結果――シュリュの“死”を消したというわけだ。
条件として、発動中にリセットできるのは一つだけで、設定した時間終了後にそれを念じることでしか発動できない。
それはきっと、その能力を使うことを、世界が拒んでいるからだろうな。
発動するための初期MPも、それを維持するためのMPも、リセットする物事を選び、発動させるためのMPも……どれもこれも甚大じゃない程に消費する。
魔素を扱うことで、この世界では地球でできないような無茶を行うことができる……死の運命を覆したりな。
だが、幾らそれが可能だからと言って、簡単にそれができるというわけでは無い。
改変する事象に見合うだけの対価を支払うことで、それらは実行可能なのだから。
かつて発動させた"完全蘇生"なんてのが、最も分かり易い例だろうか。
アレは魂と動かせる体さえあれば、どんな状態でも対象を蘇生させることができる……まさに禁忌の呪文だな。
……と、ここまで面倒且つ回りくどい話をしていたが、眷属のお蔭でMPがチート級に成長している俺には関係のない話だ。
「おーい、起きてるか~?」
『…………ここは?』
「ずっと同じ場所だ。おはよう、シュリュ」
『うむ、おはようだ……姿が変わっているようだが』
「う~ん……説明が面倒だな。それも一緒にするから、先に約束を履行してもいいか?」
『メルスがそう言うなら……構わんぞ』
了承も取れたため、眷属についての説明をした後、シュリュを眷属に組み入れた(証は逆鱗の辺りに刻んだ)。
《――また、待ち時間ですね》
「(こればかりはどうしようも無いしな。むしろ、他にどうしろと言うんだ。折角シュリュの方から了承してくれたんだ……ここでやらなきゃ男が廃るってもんだ)」
元帝王だけあり、俺の意味不明な説明をすぐに理解してくれた。
……本当、頭の良い奴が羨ましいです。
《いつまでも手を出さない甲斐性無しが、それを言っても意味が無いかと……》
「(いーやーなーのー! 俺の体がどうなってるか知るまでは、絶対にヤらんからな!)」
《……ハーレムの主ともあろう者が、いつまでもそんなピュアな関係で良いのですか?》
「(そういうタイプのハーレムだって、あるにはあるじゃないか! 【色欲】だけがハーレムの全てじゃ無い……俺は、DTハーレムを信じている!)」
《我が王、男としてそれでいいのですか?》
それは……たまに思う。
この後、目が覚めたシュリュに補足説明をしてから、{夢現空間}へと帰還した。
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