AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『異端魔機』 その05
「へい、審判さん! 判定を」
『この試合……メルスンの勝ち!』
「シャアァァオラァッ!!」
意味も無い叫声を上げて喜ぶ。
ヤバかったよ~今回はマジでヤバかった。
コピーなんて俺よりスペック上だった気がするし、拳だけで彼女が闘わなかったら負けていた気がする。
全部の武器の武技が使えるはずなのに、敢えてそれをやらなかった彼女は凄いよな。
『あ~あ、負けた負けた。わざわざ奥の手まで発動させたっていうのに……』
「嘘付け。強化系のスキルを全然発動させて無かった奴に、そんな敗者っぽいセリフを言う権利はねぇよ」
『アンタだって、転移は一回も使わなかったじゃないか。それでお互い様だよ』
「いやいや、それを言ったら……(ry」
『それを言うなら……(ry』
とりあえず今回の決闘の良い点と悪い点を語り合った。
俺としても、今回学んだことはとても重要なことだと思う。
……今までも、そしてこれからも――学んだだけで、経験として生かせない気がするんだけどな。
暫く会話をしていると、ユラルからの念話が入ってくる。
《メルス~ン、みんな心配してるよ? 急にメルスンが、主人公みたいなセリフを言ってるってさ~》
「(……なあ、もう一回言うが俺とお前、ここに来る前にそれがどうこうって話をしていたはずだよな?」」
《う~ん……もう答えは見つかってるみたいだし、良いんじゃないかな?》
「(適当過ぎないか?)」
《メルスンが自分をどう思おうと、結局私達のメルスンへの気持ちは変わらないしね》
「(……はいはい、そういうことか)」
外堀は埋められてるってやつなのかな?
俺の外堀なんて在って無いようなものの気もするが……そこら辺は、まあツッコまないでくれるとありがたい。
「――よし、話は変わるがそろそろ負けた時のアレをやってもらうぞ」
『ん? ああ、良いぞ(バサッ)』
「……すいません、なんで服を脱いでるんですか?」
今更言っておくと、彼女はプラグスーツのような物を着ていた……奥の手の中に、人造人間召喚でもあったのだろうか?
少し脱ぎかけの状態となった彼女からは、機械とは思えない程に綺麗な体が見えたな。
出るとこは出てるし、キュッと締まった部分は締めてある。
まるで人形のようだ、この比喩が合う。
『……? 負けたら服を脱ぐんだろ? アンタの記憶にも、そんな光景があったぞ』
『……メルスン? 何それ』
ユラルが絶対零度の眼差しを向けてくる。
いやいや、誤解なんだって。
ああ、それは一体どれのことだろうか。
野球拳擬きをした時だろうか、モフモフを賭けた修業をした時だろうか、それとも男の沽券に係わった洗いっこだろうか……。
「……服は脱がんでいい。俺が要求したかったのは、眷属化だけだ。それ以外を要求するつもりは無かった」
『そうか、敗者は黙って勝者に従っていればいいんだろう』
「いや、その言い方は止めてくれよ」
『…………冗談さ』
物凄く間が空いたことが不自然に感じられるが、それをとやかく言う気も無い。
彼女に眷属の印を刻んで気絶させた後、再び暇な時間が訪れる。
◆ □ ◆ □ ◆
『メルスン、何やってるの?』
「何って……見りゃ分かるだろう」
『……分からないから訊いてるんだけど』
「そっか、なら言おう。俺がやっているのは全因子の使用だ。使えるに越したことは無いからな。こうして(愚物生成)で経験値を稼いでいるってわけだ」
『……物凄い勢いで経験値が来るんだけど』
「そりゃあ、強力な魔物を倒してるしな。[経験共有]でユラルにも相当行くだろう」
『どれだけ、何人と共有できるんだっけ?』
「えっと~、もう100%達してるし……距離・人数共に無制限のチートさんだ」
『……逆寄生だね』
◆ □ ◆ □ ◆
「あ、そういえば名前どうなったんだ?」
『……本当に、訊きたいの?』
「え、何その不安感をそそる言い方」
『まず『合成魔法』、そっちは『マジック・シンセサイズ』って名前が出たね』
「うんうん……って、誰から?」
『次に『合成武技』、そっちも似た感じで『アーツ・シンセサイズ』ってのが出たよ』
「へ~、なるほど……って、誰から?」
『色々とアイデアが出てたけど、やっぱりSA○のネタを観た私たち的に、それが採用されたのかな? アレは全然プラスなイメージが無いから、メルスンには代わりに前向きなイメージを期待してるよ』
「名作だからな……って誰のアイデアだ!?」
◆ □ ◆ □ ◆
「……暇だ。途轍もなく暇だ。気絶の時間が長いのって、強者特有なのか? 初期のフーラとフーリとかミントはすぐに復活したし、プレイヤーにやってもすぐだったし……」
『強いから、メルスンの[眷軍強化]を拒絶するってこと?』
「意外とそうなのかもな。肉体がある程度鍛えられている分、外部からの干渉を防ぐために、防衛機能が働いているのかもな」
『……そして、それでも最後にはメルスンの魔の手に掛かり、体を隅々まで蹂躙され、弄られるのであった』
「その言い方、俺が凄い悪役のような言い方だな。本人はこんなにもモブなのに、そんな官能的なことできるわけ無いだろう」
『そう否定するメルスン……しかし彼には前科があった』
「…………」
『ゲームの一種だと称して――少女相手に野球拳を挑んだり、修業の時間短縮と少女の耳と尾を撫でる権利を賭けて――反則ギリギリのジャンケンをしたり、そのときに使う必要のない(神手)を発動させ――裸の少女たちに触れ続けたりしていたのだ』
「…………話が逸れ過ぎだぞ。主人公はこうなったらヒロインに謝るけど、俺のそれは全て合法的だと言い切れる。そう、モブにラッキースケベなど存在しない!」
『……なら、もう一度裁判する?』
「すいませんでした、本当に悪かった!」
『アンタら……何やってるの?』
◆ □ ◆ □ ◆
『何で……土下座してるんだ?』
……彼女も目覚めたようなので、一先ずここから出ることになった。
今日も今日とて忙しいもんだ。
『あ、メルスンはね……』
お願い、ちょっと止めてください!!
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