AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者と『異端魔機』 その02
前回までのあらすじ
自分は誰と訊いてくる機械の少女に、むしろ自分の質問に答えろと言ってしまう。すると、案外訊いてくれると言ってくれた」
『……現実逃避だね』
「しゃーないだろう。あまりにビックリだったんだから」
そこは我を貫こうぜ。
天上天下唯我独尊、それが強者ってもんだろう。
≪Q.問おう、■への質問を≫
『メルスン、早く質問した方が良いんじゃないの?』
「それもそうだな……なあ、俺って健全なのかな?!」
『…………』
ユラルは顔に手をやっている。
なんだ? 俺の質問って、確かあのときこれだったろう。
少女擬きの機械っ娘は、瞳の中に数字の羅列を高速で展開した後、俺に返答する――。
≪……Q.汝、『健全』の定義を求める≫
「……どうしよう、健全ってどういった意味だったっけ?」
『メルスンの考えた通りに、ホラッ!』
「えっと~……なら、行動や状態が堅実で、安心できるかどうかだ!」
確か、こんな意味だったはず。
すると、再び再稼働を行う。
≪…………『健全』の意味、理解完了。
Q.何を持って堅実且つ安心とするか……これを定義付けろ≫
「……面倒だな。なあユラル、もう帰って良いか?」
『駄目だよ。ちゃんと質問を終わらせて』
面倒だな~。
辞書を使ってるんじゃないんだからさ。
もっとこう、簡単に答えてくれる方法が無いのかよ……あっ。
「……この情報媒介の記されている情報で、お前が定義付けてくれ」
≪……情報媒介からの引き出しが可能。
これより、ダウンロードに入る≫
『メルスン……それって……』
「うん――記憶を可視化して……ちょいと細工を加えたものだ。図書館の技術を科学的に模倣できないか試していたら……できた」
俺が彼女に渡したのは、地球ではよく見かける普通のUSBメモリだ。
自分の伝えたい記憶を籠めることで、受け取った相手がそれを知ることができる……便利な代物だと思っていたんだよ。
リスクの一つとして、そのときに考えていることが、受け取った相手になんとなくだが伝わってしまう……ということがある。
だが、相手は機械だ。
そんなリスクはヘッチャラである。
俺が今回籠めたのは、俺がAFOを始めてからの全てだ。
ゲームを始め、眷属を得て、この地に至るまで……そんな冒険譚だが完全にノンフィクションの記憶を、彼女へと送った。
≪情報量が膨大であるため、存在する情報全てをダウンロードするのは不可能
■の自己判断で情報を選別する≫
……何故だろうか、自分で処理を行うと決めた彼女の顔はとても嬉しそうに見える。
理由は全く分からないが、マニュアル通りに動いているってわけじゃあ無さそうだな。
「よし、ユラル。今の内に帰ろうぜ」
『本当は帰る気なんて無いんだから、ちゃんとゆっくり待とうよ』
「……暇には変わりないだろう。なんだ、もう答え合わせでもするか?」
『……本当に分かってるの?』
「俺は主人公みたいに鈍感じゃ無い。それなりに理解はできる。……というか、さっき答えたので正解じゃないのか?」
『あれだと……大体30点ぐらいかな? どういった行動なのか、どんな責任なのかが伝わってこなかったからね』
30点――つまり、3割は合ってるってことか。
「……随分とシビアなこって……人をヘタレ呼ばわりしておいて、それを訊くか?」
『メルスン、気持ちは言葉にしないと普通は伝わらないんだよ』
「言葉にするからこそ、曖昧になるものだってあるだろう。だから最初は、ジェスチャーによる対話だったし『はいはい、話を逸らさない逸らさない』……もう少し考える」
それから少しの間考えていたのだが、そういう時は、別の事柄が気になるものだ。
(……ん? 歯車は正確に回ってるけど……回路の方が少し変だな。稼働に最低限必要な部分しか動いて無い。『ちょっ、ちょっとメルスン、何をする気?』この辺とここら辺をちょいちょいっと弄れば……)
「――よし、これで完璧だ」
『本当に、何をしたの?』
何って、とユラルに答えようとしたその瞬間――黙々と解析を行っていた彼女に、突然変化が現れ始めた。
≪緊急事態発生! 『……ん?』緊急事態発生! 『……むにゃ』ID-S100-charfaojru の回路が正常化s『うるさい!』…………≫
瞳の中で可視化されていた作業に、ノイズが走りエラーが起きる。
数字の羅列が高速で目まぐるしく動き、怪しい雲行きを表す。
『メルスン……ほ、本当に何をしたの?』
「な、何って……コイツの中の回路がおかしくって、本来の性能の1%も使えないようになってたからさ……弄って直してみた」
現在俺の手は、彼女の頭の上にある。
さすがに強者を相手に遠隔からのスキル干渉は不可能だったため、直に(回路改変)を発動させたのだ。
……不味いな。
俺の(読書による)経験からして、寝起きでイライラしている(擬きとはいえ)少女に手を置いている奴が、無事である可能性など皆無に近い。
しかも知らない奴だぞ!
眷属なら許してくれそうだが、他の奴が不細工に触れられて許してくれる筈が無いじゃないか!
……こ、殺される。
慌てて手を放し、ユラルの居る後方まで下がる。
『ん~? 新しいデータ? …………なるほどね、大体の事情は分かった。えっと、そこの……メルスって奴? 私と闘え』
「ヒィッ! や、やっぱり殺される!」
『……心にも無いことは、言わない方が良いと思うよ。本当に殺したくなるから』
「……あ、やっぱり? いいぜ、やろうか」
『うんうん、分からないことは戦って訊くのが一番! アンタもそう思うんだな』
……いいえ、全然思いませんよ。
確かにこの島に来てからは、戦闘ばっかりのイメージですけど……本人は平和主義ですから。
「……ま、それでも拳を交わすってのが色んな意味で熱いってのは、良く分かってるよ」
『そうかそうか、なら始めようか!
私――S100-charfaojruは! 汝――メルスに対して、決闘を申し込む!!』
「我――メルスは、汝の決闘を受託する!」
特に言う必要は無いのだが、様式美ってヤツだよな。
そんなこんなで、決闘が始まります。
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