AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と報酬カタログ その04



 前回のあらすじ
 魔方陣で呼び出された先に居たのは、レイとシンク、そしてGM03であった。
 彼女が俺に会ってやりたかったことは――名前を付けてもらうことであったのだ……」

『それ、偶にやってるけど……どういう基準でやってるの?』

「……暇な時だな。シンクと初めて会った時も一度はやったし」


 ツッコまれるよな。
 夢現空間に居る時は、リーがツッコみギーに連れ去られるってのが、だんだんと王道パターンになってきてるし……。
 俺のボケってのは、封殺される運命にあるのだろうか。


「03さんはとりあえず待っていてくれ。いきなり言われても直ぐに決められないのが、名前ってもんだ」

『……お姉様。私の記憶が確かなら、私の名前、会ってすぐに決められたんだけど』

『奇遇ですね、シンク。私もGMコールされてすぐに決められた気がします』

「ちょ、そこの二人、そういうことをバラしちゃいけません!」


 確かにそうだけれども。
 いや、もうアイデアは浮かんでるんだよ……でも、もう少し考えたいと言うかなんと言うか……。


『ワタクシの名前を真剣に考えていてくれるのですね。やはり、ワタクシの目に狂いはありませんでした』

『……お姉様、絶対に狂ってるわ。なんでメルスなのかしら』

『シンク、それを訊いたら負けですよ。あれですよあれ、惚れた弱み。私たちにそれを言う権利はありませんから』

『……それもそうね』


 そこの姉妹よ。
 その発言は嬉しいには嬉しいが、反応に困るのでご勘弁を。
 あと、聞こえるところで本人のことを狂ってるとか言うんじゃありません……もう慣れてるから意味を成さないけど。

 どうでも良いと思うが、念のため。
 前にも言った通り、武具っ娘たちの俺に対する好感度は、最初から100%を超えた状態なのである。
 自我を持った瞬間から、俺を愛してくれる存在……それを求めた結果だ。

 いや、不細工なモブには絶対無い仮定の話だが、もし地球でそんな状態になってもそっちは絶対認めないぞ……顔、嫌だし。
 せめて地球の女性もこっち風だったら、まともな恋的なものをできたんだろうな~。

 ……あ、無理だな。
 顔以前に俺に問題があったか。


 閑話休題ヒ・ミ・ツ


「……じゃあ、03さんを見た瞬間に浮かんだ名前、一応それを聞くか?」

『えぇ、是非に』

「そうか。なら、言おう。貴女の名は――」

『『『………………』』』

「名は――」ダン ダン ダン

『『『………………』』』

「名は『早く言いなさいよ!』……ハァ」


 はいはい、言いますよ言いますよ。


「――"アオイ"。それが俺の考えた名前だ。
 漢字で書くとこんな感じだな」


 空中に『碧海』と書いて、漢字を示す。


「……その綺麗な髪色を見てそう思った。海のように綺麗な碧色……それを持つ貴女に似合う、と俺は感じた」

『アオイ……ですか……良いですわね』

「本当に良いのか俺が? なんとなくで決めた名前を、自分の名前にするなんて……」

『それでもメルスさんは、初めて見たワタクシを、アオイと感じてくれたのですよね?』

「ああ、そう感じたんだ」

『なら、ワタクシはそれを選びます。メルスさんが決めてくれた、その名前を。
 ……メルスさん、呼んではいただけませんか?』

「――アオイ」

『はいっ!』


 嬉しそうに笑う03――改めアオイ。


『『…………』』


 砂糖を吐きそうな顔の、レイとシンク。


「……どうしたんだ? その表情。レイはともかく、シンクとはこのやり取りを一度やったじゃないか」

『自分は別に良いのよ! 主観的にそれを味わえるんだから。だ、だけど……会ったばかりで、どうしてそんなにイチャイチャできるのよ!』

「イチャイチャ? してたっけ、アオイ?」

『さぁ? シンクの気の所為でしょう』

『そんなワケあるかー!』

『メルスさん、私にもやってくださいよ』

「レイまで?!」

『私だって、寂しくなるんですよ。だからメルスさん、責任を取ってください』

「(まぁ、名前を呼ぶだけなら……)レイ」

『もっと、感情を籠めて!』

「えぇ?! ……レイッ!」

『はいっ! ありがとうございます』

「お、おう……」


 なんだろうか、このテンションは。
 始めてあった頃の――GM01だった頃のレイは、一体何処へ逝ってしまったのだろうか(白目)。


 閑話休題"ステイクール"


 全員を落ち着かせてから、話を戻す。


「アオイに名前を付けたわけだが……この後は、どうすれば良いんだ?」

『とりあえず、眷属結晶を七人分ください』

「……なんで、七なんだ?」

『そりゃあもちろん、私たちの分よ』

『GMは七人います。なら、メルスさんがワタクシたちに渡す結晶の数は……決まっていますわ』

「いや、全員が眷属になりたいってわけじゃないんだろう?」

『いいえ』『他の子も』『言ってましたわ』


 少し眩暈がしてくる。
 まだ会ったこともない娘に、そう言われても……。


「……眷属結晶と『Wifone』だ。これで、連絡は付くと思う」

『ありがとうございます、妹達の分まで』

「そういうことは、もっと早くに言って欲しかったよ……やれやれ、レイにも御茶目な部分があったんだな」

『フフッ、私も女の子ですから』

「あ、でも。一度俺に会った奴以外は使わせないでくれよ。俺を自分の目で見て、どうするかを直接聞きたい」

『はい、メルスさんがそう言うのなら』


 ウインクをしてくるレイ。
 優れた容姿も相まってか、可愛いと純粋に思えた。


「……で、次は何をすればいい? この際だし、俺にできることならある程度やるぞ」

『ここに呼んだ建て前は、999999Pを消費して頂いたプレイヤーの要求を聴き入れるというものですが……今のメルスさんにはできませんしね。UIは表示できていますが、上の方が本気を出しまして……プレイヤー権限の一部が剥奪されました』

「……それ、俺大丈夫なのか?」

『えぇ、無くなったのは、メルスさんの運営への干渉力だけです。それ以外は正常に機能していますので問題はありませんよ』


 よかった~。
 ログアウト不可とか、死に戻り不可に陥ってたら、デスゲームものになってたよ~。
 ……ん、干渉力って何だ?


「そうか、俺が運営に要求したことっていえば……コンソールぐらいじゃないか?」

『……だいぶ懐かしいですね。メルスさんと会ったばかりに要求されました。……本当はこうなることが、あのときから予想できていたのでは?』

「んなわけ無いだろうよ。俺はただ、欲しい物を願っただけさ」


 それから本題に移るまで、懐かしい話をレイとしていた。

 そして、その頃――。

『アオイお姉様……私たち、なんだか忘れられてない?』

『そう、ですわね。ワタクシなんて、先程まで話していたのに、完全に存在を抹消されていますわ』

『……メルスの眷属たちって、本当に苦労しているわね』


 そんな会話があったかもしれない……。



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