AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と報酬カタログ その01



夢現空間 居間


「……暇だな」


 台の上に置いたお菓子を食べながら、ふと呟く。
 ティルとの剣術修行も、リュシルとの研究も、アリとの心理戦も今日は無いため、暇で暇で仕方がない。
 スーは養蜂、グーは情報解析……みんな何かをやっており、暇なのは俺と……今日の監視係だけだ。


『……暇だと思っても、吾にその感情を送ってくるな。折角やっていたゲームに支障が出るだろう』


 そう言ったのは、黒いローブに身を包んだ白髪の女性――ネロである。
 ネロは『Wifone』で、絶賛ゲーム中の身であった。
 グータラと台の上に首を乗せて、手を伸ばして端末を操作している。


「ふ~ん……何やってるんだ?」

『……桃○を少々な』

「へ~。調子に乗って買いまくったりするんじゃないぞ。本当に困った時に買えなくなるしな」

『……う、うむっ。そ、そうだな』


 画面を覗こうと肩がくっつくぐらいに近付くのだが、何やらしどろもどろになる。
 少しネロの様子がおかしい……が、まあいつものことだし、大丈夫か。
 多分、もうボンビーになってるんだな。


「あー、やっぱり暇~」

《そんな主様マイマスターに……朗報です!》

「(いや、なんでそんな通販臭い言い方をしてるんだよ……)」


 クエッとか鳴きそうな鳥のデザインが目印の、チョコの玉を食べ終えたそのとき、レンからの念話が届いた。


「(……で、何があったんだ?)」

《先に行われたダンジョンイベント。その報酬カタログが配布されました》

「(あー……でも、俺には関係無いだろう。今回頑張ったのは、プレイヤー組と現地組、双方の眷属だけなんだし)」

《しっかりとメールは確認していますか?》

「(……そういや前に、通知音消してたな)」


 久しぶりに『挑む者プレイヤーの指輪』から(メール)機能を使って確認してみると――


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イベントへの参加ありがとうございます

ダンジョンイベントの報酬カタログ・参加賞・特別報酬を配布しました。

これからも、AFO世界をお楽しみください

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《運営側も、主様がコンソールを持っていたことは把握しています。私たちがイベントに参加したことで、主様も参加したということになっているのでしょう。ですから、メールも届いたのだと思われます》

「(……この場合、誰がそんな粋な計らいをしてくれたのかが気になるな)」

《レイ様やシンク様では?》

「(そうだと……良いんだがな)」


 あの二人の名前を聞くのは久しぶりだ。
 また会って、話したいな……。


「(ま、とりあえずカタログを確認すれば良いのか?)」

《多分主様が選ぶものは御一つですので、前回同様、迷わず選ばれるのが良いかと》


 では私はこれで、と言われてレンとの念話は切れた。
 前回同様って……。


「……他の報酬から開けてくか」


 前と同じなら、順番も似たような感じにしないとな。
 まずは、参加賞を――


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参加賞:ダンジョンイベントを開封しました

パワーアップポーション
ガードアップポーション
スピードアップポーション
インテリジェンスアップポーション
テクニカルアップポーション

×3を入手しました

ラックアップポーションを入手しました

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 今回は状態異常を回復する物では無く、能力値を補正する物のようだ。
 補正は2分間、その能力値を20%アップさせるとの鑑定結果が出た。

 20%か……破格じゃね?
 うちの武具っ娘たちが使用したら……あ、LUC以外なら12万を超えちゃうわ。
 本当に、成長したな(ホロリ)。

 さて、次は特別報酬とやらを――


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特別報酬:ダンジョンイベントを開封しました

職業結晶:【ダンジョンマスター】
ダンジョンコア(特典付き)を入手しました

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「(レン。【ダンジョンマスター】の職業結晶とダンジョンコアが手に入った。すぐにそっちに送るから解析してくれ。どうせ俺には使えないし、代わりに有意義に使ってくれ)」

《了解しました》


 手に入れた結晶とコアを『Wifone』ですぐさま転送させると、○鉄をやっているネロへ話し掛ける。


「なあ、ネロ。今の俺が職業結晶を使って、職業になんらかの変化があると思うか?」

『……結晶とは、外部からその者の才能を活性化させる古代技術だ。あくまで才能を目覚めさせるだけであって、習得や転職には別の処理が必要となる。メルスの邪縛は水晶が反応を起こさないようにしてあるのだろう? それならば、結果は変わらないと思うぞ』


 ……つまり、やっぱり無理だと。
 やはり、俺は無職のままなのか。


『……メルス、そう悲しまないでくれ。吾にまでその影響が来る、折角決算が1位だったのに、全然喜べないではないか』

「おっと、悪かったな」


 俺の悲しみは、桃◯の優勝と相殺されるぐらいにちっぽけなものだったんだな。


『吾個人としても、メルスが悲しむのは嫌になってしまったからな。本当に困ったなら、しっかり相談してくれ』

「お前も成長したな~。他の奴の気持ちを汲み取れるようになったんだし」

『……他の奴は知らん。吾はただ、メルスのことが心配なだけだ』


 ……何なのだろうか。
 マッドサイエンティスト(骨)のクセに、このツンデレ力53万ぐらいありそうな発言は。
 俺がツンデレのみを愛するツンデレ愛好家だったら、速攻で堕ちてたかもしれないな。


「そっか、ありがとうな。ネロ」

『……吾は特に何もしてないぞ』


 頭を撫でてやってるのだが、ローブの上からのため、どういう反応を取ったかは分からなかった。



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