AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します
偽善者とライフルサーベル
狩りは着々と進み、フィールド内の魔物の気配は半分程に減少していった。
『……メルス、ワタシ、必要?』
「ん~……。リー、俺はな、眷属といることが安らぎに感じられるんだ。リーと手を繋げている。それが俺の精神にどれだけの影響を与えているのかを……お前はまだ知らない」
『精神論はいいです』
「……戦闘自体には、いてもいなくても特に変化は無いな。あくまでリーは支援系の魔法使いなんだから……一応訊くが、自前の攻撃魔法、持っているのか?」
『うぐっ、そ、それはメルスが……』
「【神呪魔法】がギリギリ攻撃だけど、それも対神用の魔法だしな。普通の奴らに使っても効果は殆ど出ないし」
『……グスンッ』
これまでの戦闘、俺が右手に装備した武具で倒しているだけで、リーは攻撃を何もしていない……できないからな。
お蔭でリーは既に涙目だぞ。
『ねえ、アレは使っちゃ駄目なの?』
「オーバーキルになる。下手すりゃ辺り一帯更地になってしまうだろうが」
『なら、もうちょっと弱い武器を貸して! このまま何もしないのは嫌なの!』
「……弱い武器ねー。なら、ハンドガンで良いか?」
『どんな効果を持ってる銃なの?』
「例えばそうだな……ドゥル、"ライフルサーベル"をくれ」
《仰せのままに、我が王。"ライフルサーベル"を転送します》
『ライフル……サーベル?』
ドゥルに取り出して貰ったのは、懐中電灯のようなものだ。
持ち手側にボタンが、後はスイッチがあるだけの単純なものだ。
「ボタンを押せば剣状の光線が出る。属性を籠めた魔力を流せば、その属性に対応した光線がな。ちょうどそこに付いてるスイッチを切り替えれば、ソードモードからガンモードに切り替わり、ボタンを押すごとに魔弾が飛び出るようになる。これなら使えるか?」
『た、多分……』
ポイッと投げ渡したその武器を、リーは剣として振り回したり、銃として試し撃ちをし始めていた。
「――お、そろそろ次の群れの所に着くぞ。そこで扱えるかを試してみるか」
戦闘中の会話集(※面白さを求めていません)
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「……やっぱり、リーには剣術は向いていないのかな? なんかこう、ヘニャッてしているし……」
『ち、ちゃんとスキル補正を受ければ使えるわよ!』
「そんなこと言ってると、ティル先生にどやされちゃうぞ。ティル先生、最近はスキルを封印した状態なのに、完璧な状態で高難易度の武技まで再現できるようになっちゃってるし……。
俺は、お前達のお蔭で先生の扱きにも何とか喰らい付いていけるけど……もし、そんなセリフを生徒が言ったら……」
『い、言ったら……?』
「聖剣担いだティル先生の本気レッスンが、生徒に襲い掛かる……あれは地獄だった」
『……もう体験してるのね』
◆ □ ◆ □ ◆
「(支援魔法)って便利だよなー。銃弾の数を増やしたり、不可視にしたり、加速したり、エトセトラエトセトラ……。支援だと思えることの大半ができるじゃないか」
『ま、まぁね。なんてったって、ワタシの職業固有の魔法なんですからぁ』
「……ちなみにだが、転職条件って把握できてるのか?」
『そ、それは分かってます。確か……方法自体が幾つかあって――
1:(付与魔法)(呪魔法)がLvMAXであること
2:『付与魔法使い』『呪魔法使い』がLvMAXであること
3:(強化魔法)(弱化魔法)のLvの合計が50を超えていること
4:『強化魔法使い』『弱化魔法使い』の合計Lvが50を越えていること
5:(激強魔法)(衰弱魔法)の合計Lvが30を越えていること
6:『激強魔法使い』『衰弱魔法使い』の合計Lvが30を超えていること
7:【元素魔法】を習得していること
8:称号『魔を極めし者』を持っていること
――これの内4つをクリアしていると、転職クエストが発生するみたいです』
「め、面倒臭そうだ」
『……って、メルスはとっくに発生しているじゃないの』
◆ □ ◆ □ ◆
「リーってさー、よく口調が変わるよな。俺にそういった可愛いところを見せてくれる眷属が少ないからさ、リーはそのままでいてほしいよ」
『な、なんのことでしょうか?』
「フッフッフ、【完全記憶】を持つ俺に忘れてしまう事象など無い! リーのあんなセリフやそんなセリフ、完全に覚えてるからな」
『そ、そういったことは忘れなさいよ!!』
「……よしっ。大丈夫大丈夫、俺だって失敗を何度も繰り返しているんだから、ドジっ娘属性……とは少し違うか。とにかくさ、そういった一面もリーの可愛い部分なんだから、You大切にしなYo!」
『失敗って、どんなことなの……ですか?』
「例えばそうだな……リー怒りそうなことを敢えて言ってみたり、とか?」
『……確かに、その発言を聞いたら怒りたくもなりますね』
◆ □ ◆ □ ◆
「……剣術はともかく、銃術の方は自力で制御できそうだな」
『か、かなりキツいんですけど……』
「俺だってお前達お手製のスキルをフルで使えば、体が崩壊しかけるぐらいにはキツイんだからな」
『そ、そんなにキツいの?』
「そりゃ、体が(バキボキ)で(グチャベチョ)になって(バジュン)だからな。……今、伏字になった気がするな。ドゥル、お前か?」
《……少々グロすぎるかと。リー嬢もそう思いますよ……おや?》
「――気絶してるな。あ、そういやドゥル、そろそろお前も受肉できるんじゃないか? いつの間にかスキルの方も……うん、(擬似人格)が(自我の花)に変わってるな」
《つ、遂にこの瞬間が来ましたか! 我が王に尽くすため、この時をどれだけ待ち望んでいたことか!》
「……幾百年の時かな? はい、"機巧乙女"だ。準備ができたら入ってく……早いな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――何故だろう、寂しいや。
解体アプリで魔物たちをバラバラにしているのだが……リーは気絶、ドゥルは受肉へと移行してしまったため、どちらも無言を貫く状態へ陥ってしまう。
リーが起きるのはだいぶ後だと判断したから、今はこちら側で(武具化)を発動させて、武具の中に入ってもらっている。
先程までは誰かと話せたのに、突然静かになる――急に授業中に隣の人と意見を交換しろと言われた時ぐらいの静寂になった。
ドシンッ ドシンッ
その静寂を壊す音が、俺の鼓膜に入る。
大地が動き、俺の体を激しく揺らす。
「……さて、前回と違って補助は無し。今回はどこまでやれるかな?」
GUOOOOOOOOO!!
目の前に聳え立つ、山のような大きさの魔物を見ながら……そう考える。
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