AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と自己紹介 その03



「このまま続けようか――不定期開催、自己紹介サーイト!!」

『……ご主人、先程までのシリアスな感じがいきなり霧散したのだが。それと、耳コピのドイツ語もどうかと思うぞ』


 折角『――心の片隅に刻まれてしまったのだから』とか恥ずかしいことを思った後ではあるが、切り替えの早さって大切だと思う。


「えぇい! 日本人は日本語だけ使えればいいんだよ。むしろ、なんで子供達は逆に俺が頭に入れておいた外国語を、ほぼ理解しているんだよ」

『若人たちは、スポンジのようにご主人の知識を吸えるからな、ご主人の寂しい外国語の成績だろうと、本場でやっていけるぐらいの言葉を話せるようになるのだ』

「……俺、自信無くなってきたよ」


 小説でよくある異世界帰還者が、特典で入手した翻訳スキルを有意義に使うなんて話を読んだことがある。

 俺にもそんなサービスがないかな~?
 もしそれがあれば、外国語の勉強なんてやらなくて済むのに。

 例えこっちでどれだけペラペラ異種族の言語を話せても、ログアウトすれば日本語しか話せない状態だけどな……。


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「……ま、そんな風に言っていても仕方が無いし、早速インタビューを始めるぞ。
 問01:あなたの名前は?」

『フェニだ』


「問02:性別、出身地、生年月日は?」

『女性で天魔迷宮で不明だ』


「問03:自分の身体特徴を描写してください」

『ご主人……この場合、どちらの特徴を言えば良いのだ?』

「……体重は言わなくて良いから、人型の時の特徴だけ言ってくれ」

『うむ。身長163、瞳と髪は燃えるような赤、背中から炎の翼を生やせるぞ』


「問04:あなたの職業は?」

『天魔迷宮の二層フロアマスターだ』

「あ、住民でそこまで行った奴いるか?」

『いや、まだミントに防がれている。幾らご主人の(天魔魔法)の一部が使えても、十全に使えるミントには勝てないのだ』


「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」

『死にたがりだ』


「問06:あなたの趣味、特技は?」

『死ぬことだ』


「問08:座右の銘は?」

『一日一没』

「……ちなみに、没ってのは?」

『当然、死ぬことだ』


「問09:自分の長所・短所は?」

『長所は決断が早いこと、短所は諦めが早いことだ』


「問10:好き・嫌いなもの/ことは?」

『意味のある死が好きで、無いのが嫌いだ』

「俺に殺されるのは?」

『当然、意味のある死だ』


「問11:ストレスの解消法は?」

『死ぬことだ』


「問12:尊敬している人は?」

『ご主人だ』


「問13:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」

『死ぬことだ』

「……さっきから同じ答えばかりだな。具体的にどんなこだわりなんだ?」

『死因をしっかりと認識することだぞ。一度理解すれば対策の取りようはあるからな』

「……エンヴィーサーペントみたいだな」


「問14:この世で一番大切なものは?」

『ご主人だ』


「問15:あなたの信念は?」

『意味のある死を……だな』


「問16:癖があったら教えてください」

『死に癖だ』


「問17:ボケですか? ツッコミですか?」

『ツッコみだと思っている』


「問18:一番嬉しかったことは?」

『ご主人が告白してきた時だ』


「問19:一番困ったことは?」

『ご主人が告白してきた時だ……っと、どうしたのだご主人?』

「す、すいません」


「問20:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」

『フェニックスワインが好きだな。ご主人、あれはどうやって造っているのだ?』

「自家製の葡萄擬きに、亜硫酸という成分を【理学魔法】で入れないようにして、"時空加速"を使って一気に熟成させた造ったんだ」


「問21:自分を動物に例えると?」

『鳥だ』


「問22:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」

『ニクスと呼ばれたことがあったな』

「あぁ、アレ定着したんだな」


「問23:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」

『先程ご主人に当てた魔法……実は我の持つ魔法でもかなり強力な物だった』

「……どうしてやろうか」


「問24:あなたの野望、もしくは夢について一言」

『ご主人に、我らがいること――我等と共にあることを認めさせることだ』

「……ちゃんと刻まれたよ(ボソッ)」


「問25:自分の人生、どう思いますか?」

『ご主人に捧げるものだと思うぞ』


「問26:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」

『無いな』


「問27:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」

『ま、ご主人なら何とかするだろう』


「問28:何か悩み事がありますか?」

『ご主人が「分かったから」……むう』


「問29:死にたいと思ったことはありますか?」

『いつも思っているぞ』


「問30:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」

『いつも死んで生まれ変わっているぞ』


「問31:理想の死に方があればどうぞ」

『まだ……決まっていない』


「問32:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」

『もう諦めてくれ、ご主人』


「問33:最後に何か一言」

『こちらも諦めないからな』


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「――はいオッケーでーす!」

『こちらも諦めないからな』

「……二度言わなくても分かってるから」


 シリアス篇から頑張って話を逸らそうとしたのだが……全然逸らさせてくれない。
 俺にシリアスは似合わないだろうに……。


『とりあえず、ご主人は階段を昇ってみるのが良いのかもしれないぞ。我らとの関係性もより親密になるしな』

「だーかーらー……」


 意味も無く、息をスーッと吸い込む。


「――そっち系はヤらないからな!!」


 大声で叫ぶようなことでもないけどな。



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