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山田 武

偽善者と『勇魔王者』 その07



 気絶中に、今後の予定を確認する。


《ごしゅじんさまー、この後はどうするつもりなのー?》

「どうせ彼女がここまでの仕打ちを受けたのも、テンプレの一つ――知らぬ間に掛けられた封印の所為だろう。何かこの世界って、そういう要素がめっちゃ多いからな。彼女に生えている角は絶対に普通の物じゃないし、これが普通だったらこの世の全ては魔族のものになってるだろうしな。
 そもそも、さっき光を放った時に思ったんだが、あれは聖氣だった。だけど、あれは聖氣にしては神聖さが足りなかったんだ。魔族だからというのも理由に入るだろうけど、それだけじゃないだろう。自分の本当の力を引き出せていない、引き出すことができないからそんな微妙な状態なんだろう。
 聖氣が万全な状態で、魔族としてのスキルが使えていたなら、勇者程度……スパッと倒せていたと思うしな」


 魔族が勇者、なんて設定の小説もあるんだからな。
 現地産勇者として、本来はかなりチートな能力でも持ってたんじゃないか?


《なら、彼女を救いますか?》

「家族になったしな。
 そういえば(契約魔法)って、練習の時にしか使ったことが無いな……関係無いけど。ネロの時も使おうとして忘れてたし、今使おうとしても避けられるし、今回もやる前に納得されてしまったしな。条件として言ったことはいつもやっているし、当然用意はするから良いんだが、一度でいいから言ったみたいんだよなー。『僕と契約して、最強眷属になってよ』って」

《元ネタからだいぶズレてるね》

《この世界だと生活魔法があるから、一々契約しなくても魔法少女になっている人が多いからだと思うよ》

「魔法少女の大半よりは、眷属の方が強いと自負してるからな。究極とか悪魔と比べるとどうなるか分からないが、それ以外なら勝てると思うよ」


 魂の宝石は無いけど、この世界は魔法という技術が体系化されている……エイリアンは関係無しにな。
 あれ、異世界からの侵入者である俺達こそがエイリアンか?
 現代知識を持ち込む輩もいるだろうし……それはそれで侵略者としての活動をしちゃってるな。


閑話休題


「……とにかく、それもこれも彼女が起きてからだな。何もしないと言ったからには、温かい毛布を掛けてやるぐらいしかできない。 鑑定するにも……って名前を聞いて無かったな、彼女の」

《今更だね》

《てっきり、何か意図があるのかと思っていました》


 いやはやお恥ずかしい。
 彼女の話を聴く為に思考の大半を使っていたから、他のことは忘れていたよ。

 俺は彼女に『雷鳥の羽毛布団』をそっと掛けてから、グラとセイに色々と確認をしていくのであった。


ちょっとして
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『これ、ちょっとピリピリするけど、気持ちが良い』

「大気中の魔素を吸って、微弱な電気を発生しているらしいぞ。素材となった魔物も、確か雷を羽から出してたしな」


 魔物素材の羽毛布団に包まりながら、彼女はそんな感想を伝えてくる。
 暇を潰すついでではだが、作った甲斐があるってもんだ。


「あ、そうそう忘れてた忘れてた。俺の名前はメルスだ。呼びたいように自由に呼んでくれるとありがたい」

『分かった、メルス……だけど、本当の私の名前は言えない、分からないから』

「……鑑定で分からないのか?」

『私には鑑定のスキルは無いし、鑑定で分かる名前も孤児院で貰ったもの。それが本当の名前じゃ無いことは、角が生えていない時に教えて貰っていた。今は『マリー』と呼んでおいて、それが呼ばれていた名前だから』

「そうか……。なら、ちょっとの間だが、そう呼ばせてもらうぞ――マリー」


 俺は彼女に返して貰った毛布を受け取り、再び"収納空間"に戻してから会話を本題へと進める。


「さて、ここからが本題なのかな? 一応の仮定の断定の話だが、マリーには呪い的なものがあると思う」

『……呪い?』

「そう、呪いだ。ある聖霊は世界樹に嫌われて、ある人は針に嫌われ、ある人は……ってあれ? 何だろうな。とにかく呪いは色々とある。俺も呪いを一つ持ってるしな」

『顔のこと? 私はメルスの顔が微妙でも別に気にしないよ。顔だけ良くても酷いことをしてくる人を、私は何回も見てきたし』

「……どう反応して良いか分かり辛いから、そういう言い方は止めてくれ。人の心が分かる奴も似たようなことを言っていたから、耐性は付いているけど……傷付くんだからな」


 遠回しに不細工と言われて、平常を保っていられる方が凄いと思うぞ。
 【忍耐】があっても耐えられないんだから間違えないぞ……グスン。


「呪いに話を戻すぞ。呪いか確証を取れてはいないが、神の嫌がらせの一つに【封印】というスキルが存在していた。
 持たされた者はスキル習得率が低くなったり、状態異常に罹り易くなったりするんだけど……最もな効果として、その者の職業を封印する力を持っていた」

『職業か。私は転職水晶に触る機会が無かったから、職業は持ってないな』

「そんなマリーに……ハイ、転職水晶~(ダミ声)」

『……その手、どうやってるの?』


 訊いてはいけないことには、手を出してはいけないと思うぞ。

 俺が取り出して水晶については何も触れないのに、何故かそちらにだけツッコもうとするマリーにそう思いつつ、話を戻す(水晶は直ぐに仕舞った)。


「いいかいマリー君『うざい』……、反応が早過ぎるぞ。そもそもここに封印される奴の大半は、神やそれに匹敵する者達に邪魔だと思われた存在だ。そんな奴らが普通、簡単にこんな所に来ると思うか? 後で会う機会があるけど、答えはNOだからな。呪いの影響で弱体化したり、弱っている隙を狙われたりしてたからこそだと思うぞ」

『それで、私もそうだと?』

「そうだと俺は思っている。だから、一度見させて欲しいんだ――鑑定を使って」

『……っつ!!』


 彼女の意思とは関係無いのだろう。
 反射的に威圧が放たれ、周囲を覆う。
 さて、ここからどう説得するかだな。



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