AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者なしのダンジョンイベント その06



「――とは言っても、運営からの連絡も無いのに、勝手に踏破の行くのも問題ですか。では、今の間に配る物を配っておきましょう」

「配る物?」

 レンはそう言うと、"収納空間"から様々な物を取り出していった。

「えっと……これがティンス、これがオブリでこれがユウ……」

 武具や魔道具やポーションなど――数々のアイテムによって積み重なった山が、レンによって振り分けられていく。
 そして、振り分けられたアイテムには同じく山の中にあった収納袋マジックバック(刺繍入り)に纏められた。

「――イアでこれがシャインっと……それでは、一人ずつ配りますので、まずはティンスから来てください」

「え、ええ……」

 ティンスは蝙蝠の刺繍が入った収納袋を受け取り、元いた場所へ戻る。
 その後も、オブリ(蝶)ユウ(キラキラ)アルカ(杖)イア(竜)と配られていき――

「最後に、シャイン……これをどうぞ」

「っつ!? あ、ありがとうございます!」

 ――自身の収納袋をレンから貰い、刺繍を見たことで感極まったシャインがお礼を言ったりということもあったが――全員に無事行き渡った。

「では、開けても良いですよ。中に主様からのメッセージが入っていると思いますので、そちらから読み始めてください」

 そう言われた彼女達は、早速メルスからの手紙を読む。

「――――」

「……♪」

「っつ?!」

「……!!」

「…………」

「□□□□っ!!」

 一人だけ言葉にできないような表現行った者もいたが、それでも全員の反応は異なるものであった。

「レンさん……このメッセージに書いてあることは……」

「えぇ、本当のことですよ」

 彼女達はメルスのメッセージを読むことで知ってしまった――

「……これを本当にやったら……」

「そうですね……しかし、これをやらなければ、主様が認めてくれるような功績を取ることができませんから」

 ここにメルスがいたならば、『いや、お前たちの方が凄いからね。全然、気にしなくて良いからね』――と言いそうな発言だが、今この場にそれを言える者はいない。
 彼女たちはメッセージを読むことで、これから起こる事態を予測してしまった。
 それが例え全プレイヤーが恐怖のどん底に叩き落されるようなものであっても、運営がメルスの扱いに困るようなものであっても、彼女たちにそれを止める術はない。

 ――彼女たちに、メルスの眷属たちを止めるだけの力は備わっていないのだから。



「……さて、メッセージの他にも情報端末もあったでしょう。それで一応主様との連絡や眷属間の掲示板、他にも様々なアプリが使用可能ですので是非お試しを」

 レンが彼女達にそう言って見せたのは、メルスが作った『Wifone』である。

「アプリの中には色々な所から訴えられそうなものもありますが……そこら辺の部分は、製作者に訴えてください」

 ……現在はメルスの趣味からか、鼠の国のキャラたちを消していくゲームや、英霊たちと特異点を調査するゲーム、にゃんこで大戦争をするゲーム等々、関係各所に土下座必須のアプリが盛り沢山である。

「……っと、無駄話が過ぎましたね。私はこのサーバーの解析に入りますので、貴女達は主様が用意したアイテムの確認をしておいてください。恐らくですが貴女達が現在使っている外套以外は、全く使い物にならないぐらいに凶力な物が入っていると思います」

「キョウリョクがおかしくなかった!?」

「……気の所為ですよ。では、私はこれで」

 そう言って、レンはいつの間にか設置された転移陣を使い、別の場所へと移動していった(ちなみに他の眷属たちは、彼女たちがメッセージを読んでいる最中に出ていった)。

 彼女たちは一度収納袋をアイテムボックスに仕舞い、中身がリストとして表示されるようして、メルスからの贈り物を視ていった。

「……近未来にでもしたいのかしら?」
「うわ~、可愛い~」
「……S級の武具なんて、未だに生産ギルドでも奇跡って呼ばれる類なんだけど……ここまでインフレしてると、奇跡って呼べなくなるわよね(ブツブツ)」
「ポーションもなんで秘薬用意なのよ! 運営からの配布以外での入手方法、まだ確立されてないじゃないの!」
「従魔用のスキル結晶もあるわね。……クエスト報酬限定じゃなかったんだ」
「これは……! ロマンだ」

 毎度毎度一人だけ反応がおかしいが、その者に入っていた物については……また別の時にでも語られるであろう。

「前に貰った外套もチートだと思ったけど、これも結構なチートよね」

 イアはそう言って、その装備についての鑑定結果が書かれたメモをUIに表示しながら装備を一度手に出現させる。


///////////////////////////////////////////

帰還の指輪 製作者:メルス

魔道具:指輪

RANK:S  耐久値500/500

メルスの創り出したダンジョン内でのみ発動可能な魔道具
所持者の意思、またはHPが一定以上減少した場合に発動する
所持者をダンジョン毎に設定された場所に転移させる
何度でも使用可能

装備スキル
(強制帰還)(転移:制限)(外部魔素自動吸引)

///////////////////////////////////////////


「これ、劣化してるけどあの保護機能じゃない。さすがに敵対の有無までは確認できないのかしら」

 そう言って指輪を嵌めながら、他の装備の確認を続けていく。


「AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く