AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と『禁忌学者』 その05



 ――これは、ある学者が創りだしたゴーレムへと挑んだ青年の、闘いの記録である」

『……って何を言ってるんですか。全然ピンピンしてますよ、マシューは』

「誰かさんが誰彼構わず殲滅するような殺戮兵器にしていなかったら、そもそもこんなことにはならなかったよ」

『うぅ……』


 あれから、色々な手を打ってマシューをどうにかしようとしているのだが、全然通用しない。
 口で説明すると面倒だし、思考の一部を割いて再生しておくから、暇潰しにでも観ていてくれ(尚、この映像は全眷属へも配信されており、掲示板には『殺戮ゴーレムの倒し方 スレ13』がUPされている)。


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CASE1:注入したのはスライムだった件


(――"因子注入・スライム")

『これが(因子注入)ですか――やっぱり映像として観るより、奇妙な感じになります)』


 色々と訊かれたとき、俺の記憶の再生方法も知ったリュシルは、島に来てからの映像にも手を出したようだ。
 因子を注入した当初はプルプルしているだけなので、すぐに(人化)を発動して、先程までの姿に戻る。


『…………』

「まぁ、さっきまで話していた奴がいきなりスライムになったらビックリだよな……ってどうしたんだリュシル? そんな珍獣を見たような顔をして」

『い、いえ正にそのような感じです(こんなにも変わるのはもう、世界の神秘ですよ)……』


 余談ではあるが、現在のメルスは青い髪を靡かせた、中性的な顔立ちの美少年である。
 リュシルが驚いたのは当然、その変化についてであった。


「とりあえず、これで物理攻撃は効かないだろうから、もう一度分体を作って突貫させてみる」


 そうしてできた分体(スライム状態)を前に進ませると――

 プチッ プルンプルン

 ――踏み潰された後も、未だ健在で残っていた。
 ……さすが殴打無効だな。


「……よし、成功だ。やっぱりスライムは最強だぜ」

『いいえ、まだです』


 ――確かに成功した。
 そう、明らかに不吉なフラグをリュシルが建てているが、大丈夫だとまだ思っていたんだよ。

 だがフラグは成立してしまい、スライム最強伝説は、一時幕を閉じるのであった。

 ゴゴゴ ピシュン チュドーン

 ――その後に起こった事態を、三回の擬音で纏めるとこうなるだろう。

 まず、マシューが初期位置まで戻り、何やら動作音を鳴らし始める――これが一度目。
 次に、何かがマシューの目から俺の分体の所までが線状に光る――これが二度目。
 そして最後に、扉の内側が真っ白になり、再び景色が戻った頃には俺の分体が消滅していた――これが三度目だ。


『マシューは広域に攻撃できるよう、周りから魔素を集めて粒子光線として放つ機能があります。ですので物理攻撃を無効化できたとしても、細胞が一欠片あれば再生できるような存在であっても、一撃で倒すことができるのです』

「……やっぱり殺戮兵器だな」

『酷いですよっ!!』


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CASE2:デッド・ア・ライブ


 物理攻撃を無効化して、魔素光線も無効化しなければいけなくなった……。


「――つまり光線は(純魔法)みたいなものってことか?」

『そうなりますね。マシューは魔法は使えませんが、魔術なら幾つかプログラムしてあります。その中の一つ――魔素を選別する魔術によって、あの光線はできています』


 ――しかも話の続きを聴いていると、やれ<集束魔法>で魔素を束ね易くしているだの、やれ<広域魔法>で光線を強化しているだの――出るわ出るわ、リュシルの責任。
 どんだけデスト□イヤーなんだよ。


「……まぁ、考えていても仕方が無いし、次の策に行ってみるか」


 ぼくのかんがえたさくせん――聖霊って、なんか強くね? 作戦だ。

(――"因子注入・樹聖霊")

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樹聖霊因子 10w「(今回は時間が無いから割愛してくれ、詳細は後日報告してくれ)」……仰せのままに、我が王

因子を注入します――

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 現在アンは謹慎中なので、ドゥルが様々な補助を行ってくれている。
 ……最近は、だいぶ格? とやらが高まってきたのか、色々な事ができるようになっている……そろそろ、人形に受肉かな?


『今回はどの種族になったのですか? 半透明な姿を見ると……精霊でしょうか?』

「音だけじゃ、どっちのことを言っているか分からないな。世界樹を守護する聖霊――樹聖霊の因子だぞ、これは」

『……ユラルさんですか。彼女のスキルは、是非調べてみたいものですよ』

「ちゃんと許可を取ったらな」


 今回も分体を作って突入させるワケだが、前回の反省を踏まえ、色々と追加の対応をしておこう。

(――"聖霊化""神出鬼没""魔纏化・光芒")

 完全に聖霊状態になって身を隠し、光線に対応する為に光線を操る魔法を纏う。
 そんな状態の分体を送り出した。

 さあ、今回の擬音集は――

 ドシンッ ゴゴゴ ピュン チュドーン …… ゴゴゴ ピカーン ズドッ


 八回(一回は無音だが)ですね。
 途中までは一緒だから省くとして……五つ目からの説明だな。

 隠れていたのに結局ビームを撃たれた後、光線を流動化させて躱して、静寂の時間が生まれる――これが五回目。
 そして再び動き出した――これが六回目。
 線上の光が突然紅く光りだし、拳が輝いていった――これが七回目。
 その拳が振り下ろされた――八回目。

 もう、結果は分かるだろう?
 聖霊さんは、死んでデッド・ア消え去っ・アライブしたのだ。


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「あれには見覚えが無いのか……となると、あの力がシーバラスとやらの干渉の影響か」

『……ぅ』

「さっきのは神氣だった。赤色だったから、シーバラスとやらは火属性系統を司っている神か……」

『……のぅ!』

「やっぱり神氣は万能だな。物理無効で魔法も躱せる状態だった聖霊を、逃げる暇も無く一瞬で消せるんだから」

『あのっ! 私は、いつまでこの状態なんですか!? 結構キツいんですよ!』

「……ハァ。リュシルは足にだけ魔法を発動させて、重力を緩和できないのか?」

『っつ!?』


 リュシルはまさに、その手があったか! みたいな顔をしている。
 彼女には俺の分体の慰霊をしてもらう為、正座をさせていた。

 とりあえずこれまでの闘いを纏めたいし、モノローグ風に言ってみるか――


「――これは、ある学者が創りだしたゴーレムへと挑んだ青年の、闘いの記録である」



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