AllFreeOnline〜才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します

山田 武

偽善者と裁判



夢現空間


 ティルの剣撃をなんとか処理して、俺達は夢現空間に入ったのだが――玄関で俺を待っていたアンに見つかって、状況を説明することになった。
 するとアンは機嫌を悪そうにして、こう言い始めた――


『……それで結局連れ帰って来た、と』

「なぁ、頼むよドラエもぉアン。何とかしてよぅ」

『……3点ですね、どうせならジャ○アンの方が言葉的にピッタリでしょう』

「でも○ャイアンが頼れるのってさ、道具を使った時か劇場版だけじゃん。その点、ドラエもぉアンならいつでもどこでも助けてくれる……本家より優秀だ」


 空を自由に飛びたいなと言えばスキルを生み出してくれて、世界旅行に行きたいなと言えば(空間魔法)用に座標を割り出してくれる(今は無理だけど)。
 駄目な少年の味方……それが僕らのドラエもぉアンだ!


「なぁ頼むよ。二人共俺の眷属になったんだぞ? ここは家族の為だと思ってさ」

『別に駄目とは言って無いですよ。わたしはただ、メルス様が一人でここを出たことについて、言いたいことがあるのです』


 アンはそう言ってくる……明らかに長くなりそうな話を用意しているな。


「……長くなりそうなら、先に二人を入れてやってくれないか?」

『……それもそうですね。では御二方は、この先にある居間へどうぞ。その場で様々なことを先輩の眷属から学べますので』

『う、うむ』『あ、ありがとう』


 どうしたんだ? 二人共、やけに緊張しているんだが。
 そんなことを考えていると、ティルが念話で俺にその理由を告げてくる(やり方は、眷属化が終わった後に説明した)。


《ちょっとメルス、ここ何処なの?!》

「(あれ、言って無かったか? ここは俺のスキル"夢現空間"の中だ。そして、そこにいるのは俺の種族スキルが人化したアンだ)」

《己も色々と訊きたいことがあるが……先輩とやらに訊くとしよう》

「(おう、俺は少し怒られそうだから気にしないで行ってくれ)」

《貴方、気を付けて逝きなさいね》

「(……少し、いくの意味が違くないか)」


 二人はそんな会話をした後、玄関から居間へと向かっていった。


『……そろそろ良いですかね? それと、強ち意味が間違っているとも言えませんよ』

「えっと~、さらっと俺達の念話を盗聴していたのは俺の種族スキルだからってことにしておくとして、どうして間違って無いのですか?」

『えぇ、簡単なことです――』パチンッ 

「……あ、あのぅ。どうして俺がグレイプニルに縛られているんでしょうか?」

『――メルス様が今から眷属達の手で、公開裁判されるからです』


 ……いや、なんでそう~なるのっ!!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 あれから俺は、アンに拘束されたまま礼拝堂に連れていかれた。
 そこでは眷属達が勢揃いしており、全員が俺を待っていた。
 礼拝堂には何故か裁判場を模した席が用意されていて、俺は被告の席の前に立たされた(ちなみに眷属達は、裁判員の席にいる)。


『ではこれより、メルス様の判決を決める裁判を始めます。検察官はメルス様の種族スキルことわたし、アンが行わさせて頂きます』


 アンはそう言って、裁判長の席に着いた。
 ……うん、次は裁判官コスでも作るか。


「あの~、一つ良いでしょうか」

『……どうぞ』

「弁護士、呼んで貰えますか?」

『却下します』

「お、横暴だ! 37条は守られないのか!」

『ここは別世界ですよ、日本の憲法は無効化されます』

「Oh……」

 分からない人に簡単に説明すると――

第三十七条
・被告人は公開裁判を開ける
・刑事の被告人は国お金で承認を用意できる
・刑事の被告人はどんな場合でも弁護士を用意できる

 ――これが、俺の求めた憲法の筈だ。


 ……だが、ここは日本とは別の世界。
 無慈悲にも、俺の願い弁護士コールが届くことは無かった。


『では、さっそく罪状を――
 被告メルス様は、眷属であるわたし達の誰にも頼るでも無く、一人でここにいる二人、ティル様とクエラム様の元に向かいました。
 二人の証言によれば、メルス様にわたし達の力を借りる機会は何回かあった様子。ですのに全く相談もせずに、それを解決。
 ――以上がメルス様の罪状です』


 何か悪い所があっただろうか。
 尽くす系を目指す俺にとって、自分でできることは自分で行うのがベストだ。
 眷属達に頼るのは、あくまでモブとしての限界を感じた時だけだ。
 そうでないといつまでも甘えてしまいそうだからな。


『――と考えているのだけれど』

「ティル、言わないd 『被告人は静粛にしていてください』……すみません」


 ティルの力は少し厄介だな。
 俺の本音がバレてしまう……なぁティル、俺にだって眷属達の主としてのプライドがあるんだ。
 そりゃあもう、自意識がライジングするぐらいにはあるんだよ……だからさ、俺を男にさせてくれよ。


《あのね、仮に貴方が主としてのプライドを持っているなら、私達が眷属としてのプライドを持っているとは思わないの?
 ……私とクエラムはさっきなったばかりだから置いといても、他の人達は違うでしょ?
 だから駄目よ。貴方は少し反省した方が良いって、さっき教わったことから学んだわ》


 そう言ってティルは、先程俺が考え伝えたことを眷属達と共有していった……は、恥ずかしい。
 それこそもう、刑として認められるぐらいの羞恥心が起こってるわ。



 結局、俺は有罪となった。
 ティルによって俺の考えてることが丸バレだった為、全然頼る気が無かったことに気付かれてしまったのが主な理由である。


 そして、具体的な刑の内容とは――



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